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2013年12月号掲載記事

ピロリ菌除菌後の胃がんにご注意!

fig.1

ピロリ菌感染は胃がんの最大のリスクであり、ピロリ菌を除菌することで、胃がんになる危険度を下げる可能性がありますが、ピロリ菌除菌が成功しても、100%胃がんにならなくなるわけではありません。(Fig.1)

グラフは胃がんの内視鏡治療を受けた患者さんを、ピロリ菌除菌を受けたグループと、受けないグループに分けて、胃の別の場所に胃がんが発生する(異所性胃がん)率を7年間観察したもので、ピロリ菌を除菌することで胃がんの発生が抑えられていることは明らかですが、率は低いものの、除菌したグループからも胃がんが発生しています。

ピロリ菌除菌は胃がん発生のリスクを低下させますが、100パーセント胃がんを予防できるわけではないのです。

除菌後の胃がんの発見率は、複数の施設の報告から年0.23〜0.3%程度あり、決して少なくありません。

その原因として、除菌療法を実施した時点で、すでに内視鏡では発見できない大きさの胃がんや、ミクロの細胞レベルで胃がんが発生してしまっていることが考えられます。

fig.2

ピロリ菌除菌が成功しても、すでにできてしまっている胃がんがなくなるわけではありませんので、このタイプの胃がんは除菌療法から数年以内に見えるサイズに大きくなって発見される可能性が高いとおもわれます。(Fig.2)

またすでにピロリ菌感染で萎縮が進んだ胃粘膜は、除菌がうまくいってもすぐには元にはもどらず、胃がんが発生しやすい萎縮性胃炎の状態は続いています。したがって除菌後に新たな胃がんが発生してくる可能性が残っています。

ピロリ菌除菌が成功しても、完全に胃がんにならなくなるわけではありません。除菌後も定期的な胃の内視鏡検査を必ず受けてください。