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2012年7月号掲載記事

ひもんや流 アンチエイジング

しわや皮膚のたるみについて相談を受けることが増えています。

私自身の皮膚の老化がすすんでいる、ということなのだとおもいますが、気をとりなおして、当院のアンチエイジング対策についてお話しします。

「人は血管とともに老いる」

これは、近代医学教育の基礎を作ったカナダの内科医、ウィリアム・オスラーの有名な言葉です。オスラーは100歳の現役医師、日野原重明先生も心の師と敬愛されている医学者ですが、この言葉はアンチエイジングの基本を言い尽くしています。

血管が老いる=動脈硬化

血管には栄養と酸素を運ぶ動脈と、老廃物を回収する静脈があり、動脈には常に心臓からの圧力がかかるために、血管の壁が傷つきやすく、傷ついたところにコレステロールが沈着することで、動脈硬化が起こります。

動脈硬化が進むと内腔も狭くなり、身体の細胞に十分に栄養と酸素を運ぶことができなくなります。

また動脈効果により血圧が上がり、更に動脈硬化が進むという悪循環に陥ります。

血管を老化させないために

1. 高血圧を治療しよう!

高血圧は、血管内皮を傷つけ、動脈硬化の原因をつくります。

2. 高脂血症を治療しよう!

傷ついた血管内皮にコレステロールが沈着し、動脈硬化が進み、更に高血圧を悪化させます。

3. 糖尿病を治療しよう!

糖尿病になると、糖の複合物質が細い血管の壁に蓄積されて、血管が厚くなります。 末梢の細い動脈では血液が漏れ出し、特に皮膚と神経に供給できる血液量が減少します。糖尿病が悪化すると下肢の潰瘍や感染症を起こしやすくなるのは、そのためです。 また血糖値のコントロールが不十分だと、血液中の脂質レベルも高くなって動脈硬化を起こし、大血管の血流も低下します。

4. 禁煙しよう!タバコの煙に含まれる一酸化炭素が血管拡張物質の産生を低下させ、血管内皮を傷害します。

喫煙すると酸化ストレスにより、LDLコレステロールなどの血清脂質の変性が起こり、動脈硬化が進みます。

喫煙はアドレナリンなどのストレスホルモンの分泌を高め、血糖値の上昇を引き起こします。また、善玉のサイトカインであるアディポネクチンの減少や悪玉のサイトカインであるTNFαを上昇させ、インスリン抵抗性を高め、糖尿病を悪化させます。

喫煙は中性脂肪やLDLコレステロールを増加させるほか、善玉コレステロールであるHDLコレステロールを減少させます。

喫煙はニコチンによる血小板凝集の促進、凝固系因子であるフィブリノーゲンの増加などを通して血栓の形成を促進します。

喫煙は動脈硬化を強力に押し進め、老化を加速する、アンチアンチエイジングの元凶です。

写真1は英BBCが制作したもので、22歳の双子が40歳まで喫煙した場合(左)と喫煙しなかった場合(右)にどんな顔貌になるかを、特殊メイクでシミュレーションしたものです。

古くなっても価値の下がらないマンションは、配管がしっかりしています。水周りの悪いマンションは、いくら外観を塗りなおしてもリセールバリューを上げることはできません。

エステや美容整形を考える前に、まず、皮膚を含む全身すべての細胞に栄養と酸素を運び、そして老廃物を回収する血液の配管、血管を老化させないことからはじめましょう。