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2010年4月号掲載記事

小児の漢方治療

小児にも漢方治療を行なっています

子どもの病気には、発熱性疾患や下痢などをはじめとして、漢方治療が効果を発揮するものが少なくありません。

漢方治療は、精神面も含めた全身の生命活動を、健康な状態に整えることを目的に行います。

心身ともに成長段階にある子どもは、周囲の様々な刺激を敏感に受け止めています。そのような刺激によって本人も気がつかないうちに心が疲れ、その結果、体に異常が表れていることも少なくありません。

子どもは、大人のようにからだの不調を言葉で訴えることは苦手です。しかしその分、からだが十分に語ってくれます。顔色や機嫌の良し悪し、動作の元気さ、落ち着きのなさなどで、病気の重症度がわかります。これは医師よりも、毎日近くで見ているご家族のほうが、よくわかるサインです。

今回は症状別によく使われる漢方処方を、またお子さんへの服薬の工夫も併せてご紹介します。対象は0歳から小学生までとご理解下さい。

処方の参考例

症状漢方薬
虚弱体質による諸症状(食が細い、熱が出やすい、風邪をすぐにひく、日頃から元気がない、体重が増えない等) 小建中湯
扁桃炎、中耳炎など耳鼻咽喉科領域で炎症を繰り返す柴胡清肝湯
夜泣き、不眠、神経過敏抑肝散、甘麦大棗湯
過敏性腸症候群(便秘、下痢)桂枝加薬湯
気管支喘息(非発作時)柴朴湯
感冒性嘔吐症、下痢症五苓散
インフルエンザ・乳児の鼻閉塞感麻黄湯

服薬の工夫

甘いものに慣れた子どもに、苦い漢方薬を飲ませるのは一苦労です。特に自我が出始める1〜4歳頃の子どもは、手こずります。

飲ませる工夫を例挙しますが、それよりも、親や医師に「なんとか飲んでほしい」という熱意があれば、子どもにもその思いが伝わり、飲むようになるものです。

服薬の工夫例

  • エキス剤を熱いお湯に溶かしてからさまして飲む
  • 熱いお湯に溶かして、砂糖やハチミツを入れて飲む(ただしハチミツは1歳以上)
  • 夏はシャーベットに、冬はゼリー状にする
  • ココア、ヨーグルト、バニラアイスクリーム、りんごジュースに混ぜる(ミルク嫌いになる可能性があるためミルクには入れない)
  • 乳児の場合は、直接口の中につけてからお乳を含ませる

投与量の目安

急性疾患

  • 必要に応じて常用量の2〜3倍を使うこともある
  • 一度に大量服用できない場合は1日4〜5回(頻回でも可)

慢性疾患

年齢を指標にした場合

体重に換算した場合

  • 体重1kgに対してエキス剤0.1〜0.2g

最後に

子どもがどんな状態にいるか、それを最も敏感に感じ取れるのは、一番身近にいるご家族です。気がついたことはなんでもお話しください。診察室ではわからないご家族の一言が、診断に結びつくことも少なくありません。

漢方治療のメリットを最大限に引き出しながら、診療所とご家族の二人三脚で、お子さんの健康を守っていきましょう。