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2010年9月号掲載記事

水泳の効果とリスク

水泳の効果

1) たくさんの筋肉を使う有酸素運動である。

2) 水中では浮力によって、筋肉や関節の負担をかけずに運動できる。

3) 水圧に抗して呼吸を行うので、呼吸機能を高める。

有酸素運動とは?

脈拍が毎分110〜120回を超える運動をすると、呼吸による酸素の供給が追いつかなくなる無酸素運動状態になり、心臓に負担がかかります。(短距離全力疾走など)

これに対して、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、そして水泳は酸素の供給を受けながら行う運動で、有酸素運動と呼ばれます。

有酸素運動は酸素摂取量を増大させ、長く続けられるので、カロリーを多量に消費し、肥満や脂質代謝を改善します。

また筋肉や肝臓のグリコーゲンが消費されると、血中の糖分がそれを補うため、インスリンを消費せずに血糖値を下げることができ、糖尿病の改善効果が得られます。

有酸素運動を効果的に行うための目標

1) 1回20分以上運動する。それ以下だと脂肪は燃焼を開始しない。

2) 1日300キロカロリーの運動を目標にする。現代人の摂取エネルギーは、消費するエネルギーに対して、300キロカロリー過剰です。水泳で300キロカロリーを消費するには30分の運動が必要です。(表1)

3) 脈拍毎分110〜120回を限度とした運動強度を保つ。

安全に水泳を行うために

  • 1) 血圧のコントロール:日ごろの血圧のコントロールが大切です。また水に触れる刺激で、急に血圧が上昇したり、不整脈が出る方がいます。ご心配な場合は、主治医に相談して、洗面器の水に顔をつけながら、心電図と血圧を測ってみると良いでしょう。
  • 2) 潜水をしない:水に潜ると、血圧が上昇し、心拍数が低下します。長時間深く潜っている泳法は、有酸素運動ではなく、心臓に負担が掛かるので、避けましょう。
  • 3) 脱水を避ける:脱水により、血液が濃くなり、流動性が悪くなるため、心筋梗塞、脳梗塞を起こしやすくなります。水泳を行う日には、起床時から十分に水分を補給しておきましょう。また運動の後には、水、スポーツドリンクなどで十分に水分を摂りましょう。コーヒー、ビールは利尿作用があるので、運動後の水分補給には不向きです。
年齢事故模様診断転帰(備考)
48水泳中気分不良,更衣中嘔吐,血圧上昇くも膜下出血手術
36水泳中,強い頭痛,血圧上昇,嘔気,けいれん,意識混濁くも膜下出血術後5日目に死亡
60200m泳ぎ頭痛,一過性右上肢しびれ,一過性言語障害一過性脳虚血軽快
60水泳後サウナにて気分不快,一過性意識喪失(2回)一過性脳虚血軽快(平生高血圧)
45水泳中硬直,一過性の意識障害,一過性の呼吸停止一過性脳虚血?軽快
52水泳中気分不快,左上下肢しびれ,血圧上昇脳出血手術のうえリハビリ
48約300m泳ぎ,左半身しびれ感,血圧上昇,左片麻痺脳出血手術のうえリハビリ
71水中歩行運動中上下肢しびれ,言語障害,嘔吐,意識喪失脳出血入院加療のうえ家庭生活中
43もぐり後右前頭をおさえ言語障害,意識喪失脳出血手術、意識障害存続
62プール内で足がもつれ飲水,頭痛,血圧上昇(145/123)高血圧性脳症入院加療のうえ家庭生活中
68初級クラス練習約40分にて気分不快,嘔吐,胸痛心筋梗塞カテーテル治療
42水泳中苦しさ,意識喪失,心停止不明(心筋梗塞?)死亡(既往に心筋梗塞)
65水泳中気分不快,胸部苦しい大動脈瘤手術,軽快
59練習終了後,しだいに言語障害,右片麻痺出現脳出血手術,言語障害、麻痺存続
41水泳中頭痛,血圧上昇(143/103),1時間後嘔吐一過性血圧上昇脳CT異常なし
56水泳後サウナ,身支度後動悸,胸圧迫感心筋梗塞カテーテル治療後リハビリ
64水泳後激しい頭痛一過性血圧上昇?脳検査に異常なし
49水泳中頭痛,中断,うずくまる不明救急施設にて点滴後帰宅
64800m泳ぎ気分不快,血圧205/106(平生145/93)一過性血圧上昇降圧剤連用開始
56泳ぎ出して45分後,力泳中頭痛,ロッカー室にて嘔吐くも膜下出血手術,軽快
79背泳中止し歩行後倒れる,呼吸・心停止,意識喪失脳卒中?意識回復せず
73泳ぎプール内で休息中言語障害,痙攣,左上肢不全麻痺脳出血軽快
51水泳中コースロープにもたれる,嘔吐,左片麻痺,言語障害脳出血第4病日死亡