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2008年1月号掲載記事

痔の診断と治療

痔は消化器の病気の中で、最も頻度の高い病気ですが、命に関わる病気ではないことや、ちょっと恥ずかしい、ということで、診察を受けずに悪化させてしまうことが多いので、注意が必要です。

痔の主な自覚症状は肛門からの出血と痛みです。

痔には3種類あります

  1. 痔核(内痔核、外痔核):いぼ痔

    肛門周囲の血行が悪くなり、静脈に血液が溜まって血管がこぶ状に拡張したものです。肛門の外側にできるものを外痔核、内側(直腸側)にできるものを内痔核と呼びます。

    内痔核は早期では自覚症状はほとんどありません。大きくなってくると出血し、肛門の外に飛び出して来るようになり、激しい痛みを伴うようになります。

    座り作業の多い方、便秘がちの方に多く、また妊娠出産によっても悪化します。

  2. 裂肛:切れ痔

    肛門の周囲が切れることで起こります。排便時に強い痛みと出血を伴います。悪化すると肛門潰瘍になったり、裂肛を繰り返していると肛門が狭くなり、ますます切れやすくなるという悪循環を繰り返します。

  3. 痔ろう:あな痔

    肛門と直腸の境目の歯状線にある小さなくぼみに雑菌が入り炎症を起こし、炎症が肛門の外側にまで広がってろう孔ができてしまった状態です。

    肛門から膿が出て、激しい痛みと発熱を伴います。

痔の治療

保存的治療

痔核、裂肛の早期のものは、軟膏や座薬で症状を軽減することができます。また便秘の方には便を柔らかくする薬を併用します。どちらも当院で処方しています。

外科的治療

保存的治療を行っても出血を繰り返す痔核や、肛門の外に飛び出す内痔核、そして痔ろうには外科的治療が必要です。

痔核の根元を輪ゴムで縛って、血流を遮断して痔核を縮小させる結さつ法や、レーザーを用いる方法、最新の治療法として特殊な硬化剤を注射して出血を止め、痔核を縮小させる「ジオン治療」があります。「ジオン治療」は従来の輪ゴム結さつ法より再発が少なく、注目されています。

手術療法は、痔核を切除し、痔核に血液を供給している血管を縛ってしまう結さつ切除法が一般的ですが、直腸の粘膜を輪状に切除して、痔核を切除するとともに粘膜を吊り上げるPPH法が開発され、これまで切除が難しかった全周性の痔核の治療が可能になっています。

痔ろうは抗生物質を使って炎症を抑え、手術療法を行う必要があります。

ろう孔を開く開放手術が簡便なため一般的ですが、肛門括約筋を切除するため肛門がゆるくなるという欠点があります。括約筋を温存する手術も行われていますが、技術的に難しく、病巣を残してしまう可能性があり再発する率も高いというデメリットがあります。

痔の治療は高度な専門性と経験を必要とする分野です

当院は消化器科を標榜していますが、痔の治療に関しては軟膏や座薬の処方にとどめ、それで改善しない患者さんは信頼できる専門施設に紹介しています。消化器の入り口である口腔や歯の治療は行わないのと同じ姿勢です。歯の治療のやりなおしができないように、肛門の手術も最初が肝心です。

当院が信頼してご紹介している施設は

◆松島病院(横浜市西区戸部本町19-11 tel. 045-321-7311)
東日本随一の手術実績のある大腸肛門の専門病院です。女性医師によるレディース外来もあります。
http://www.matsushima-hp.or.jp/main.html
◆岩垂純一診療所(中央区銀座6-6-1 tel. 03-5568-7721)
わが国の痔の治療の第一人者、岩垂純一先生(元社会保険中央病院副院長)が、理想の痔の治療を行えるように設立した診療所です。完全予約制で、日帰り手術も可能です。
保険診療は扱わず、すべて自費診療です。
http://www.iwadare.jp/index.html

痔の予防

痔の予防には、まずは便通をよくして、便秘をしないことが一番です。

長時間の座り仕事、立ち仕事も肛門がうっ血するので、避けるべきです。ちなみに四足動物は痔になりません。

また下半身の冷えは血流を悪くするので、冬場は痔が悪化しやすくなりますので、気をつけましょう。

肛門からの出血や便に血が混じるといった症状は、痔だけでなく大腸癌でもみられます。

大腸癌の早期発見のためにも、自己診断しないで必ず受診してください!