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2008年08月号掲載記事

胃がんハイリスク検診について

胃がんハイリスク検診とは?

今年度より、目黒区の住民検診に「胃がんハイリスク検診」が導入されました。

胃がんにはピロリ菌感染が深くかかわっています。ピロリ菌感染のない方から胃がんが発生することはまれです。またピロリ菌感染によって胃粘膜萎縮が進むほど、胃がんが発生しやすくなります。

胃粘膜の萎縮の程度はペプシノゲンという消化酵素を測定することでわかり、血液中のペプシノゲンの濃度が基準値以下の人は、6〜9倍胃がんになりやすいことがわかっています。

胃がんハイリスク検診は、ピロリ菌感染の有無と、胃粘膜萎縮度(ペプシノゲン)を採血検査で判断することで、胃がんになりやすい人か、なりにくい人かを判定する、新しい検診法です。

胃がんハイリスク検診の判定について

Fig.1

胃がんハイリスク検診はピロリ菌感染の有無と、ペプシノゲン値による胃粘膜萎縮度によって、胃がんになりやすいかどうかをABCDの4段階で判定します。

A群:ピロリ菌感染がなく、胃粘膜萎縮のない群で、胃がんの発生するリスクはほとんどありません。

B群:ピロリ菌感染があるも、ペプシノゲン値が基準値以上(陰性)で、胃粘膜萎縮の進んでいない群で、胃がん発生率は年率0.1%程度です。

C群:ピロリ菌感染があり、ペプシノゲン値が基準値以下(陽性)で萎縮の進んだ群で、年率0.2パーセントの胃がん発生率です。

D群:胃粘膜萎縮が進んで、ピロリ菌が住めなくなった状態です。ピロリ菌抗体陰性、ペプシノゲンは陽性となし、胃がん発生は年率1.25%です。

A群→B群→C群→D群の順に胃がんになるリスクが高まっていきます。(Fig.1)

胃がんリスクに応じて内視鏡検査を受けましょう!

ピロリ菌感染は4〜5歳以下の免疫力の弱い時期に起こります。

A群の成人は現在、将来において胃がんになる危険はほとんどなく、無症状であれば、胃の内視鏡検査を受ける必要がないと考えられます。

BCD群については、内視鏡精査の実施を行うことで、早期に胃がんを発見することを目指します。胃がんになる危険度に応じて、B群は3年に1度、C群は2年に1度、D群は毎年の内視鏡実施を推奨しています。

胃がんハイリスク検診で重要なことは、胃がんのリスクに応じた内視鏡受診を将来も継続していくことです。

胃がんが発見されるのは、ハイリスク検診を実施した年だけではなく、5年後、10年後、20年後かも知れないからです。

またピロリ菌感染による胃粘膜萎縮はゆっくりとすすむので、ペプシノゲン値は10年程度ほとんど変化しません。このことから胃がんハイリスク検診の実施間隔は5〜10年程度で十分です。目黒区での実施も、40歳以上の5歳刻みになっているのはそのためです。

胃がんハイリスク検診を受診する際に気をつけなくてはいけないこと

胃の手術を受けたことのある方、過去にピロリ菌の除菌療法を受けた方、現在胃の薬を飲んでいる方、腎機能の悪い方は、胃がんハイリスク検診の結果が正しく出ない場合がありますので、受診の際に必ずお申し出ください。

また、ピロリ菌感染がなく、ペプシノゲンが陰性のA群からの胃がん発生は極めて低い率ですが、ゼロではありません。

おなかの自覚症状のある方は、受診の際に必ずお伝えください。