医療情報
感染性腸炎と食中毒
感染性胃腸炎とは
感染性胃腸炎とは、ウイルスや細菌、寄生虫が原因となって胃や腸が炎症をおこす病気です。 病原体によって症状は違いますが、発熱、下痢、腹痛、嘔吐などが組み合わさって現れます。幼児や高齢者などの抵抗力の弱い方が感染すると、重症になることがあり、場合によっては命を奪ってしまうこともあります。
感染性胃腸炎は例年秋から冬にかけて流行しますが、そのほとんどがウィルス感染(ノロウィルス・ロタウィルスなど)によるものです。
しかし、夏期には腸炎ビブリオなど細菌性のものや、病原体で汚染された食品によっておきる胃腸炎、いわゆる「食中毒」が増加します。食中毒統計によれば、食中毒の70〜80%は7〜10月に発生しています。(Fig.1)
食中毒について
食中毒は毎年2〜3万人は患者が発生し、一向に減少する様子がありません。
食中毒が夏場に多いのは、気温と湿度が上がり、食品中の細菌が急速に増殖する環境が整いやすくなるためです。
現在日本で食中毒原因菌に指定されているのは16種類ですが、その中でも特に注意が必要な原因菌は、サルモネラ属菌・腸炎ビブリオ菌・黄色ブドウ球菌・ボツリヌス菌・病原性大腸菌の5つです。
食中毒原因菌が食中毒症状を引き起こす仕組みには以下の三つの型があります。
- 感染型 : サルモネラ、カンピロバクターなど
- 細菌に汚染された食品を口にすることで、生きた菌自らが食中毒を引き起こすもの。腸管にたどり着いた菌が腸管内でさらに増殖し、腸管組織に侵入して組織を壊し、炎症を起こします。この結果、腹痛や下痢などの症状が現れ、ひどくなると血便が出ることもあります。
- 生体内毒素型 : 腸炎ビブリオ、病原性大腸菌など
- 菌が腸管内で作り出した毒素により発症します。菌によって作り出す毒素が異なり、症状も様々ですが、主に腹痛、下痢、発熱などが見られます。
- 毒素型 : ボツリヌス菌、黄色ブドウ球菌など
- 食品内であらかじめ細菌が増殖し、産生した毒素を経口摂取することで発症する中毒であり、感染ではありません。中には神経毒作用を持つ毒素を作り出すものもあります。
日本人は以前は魚介類と密接に関わる密接に関わる腸炎ビブリオによる食中毒が圧倒的でした。しかし近年、食生活の欧米化で魚離れが進み、乳・肉・卵類を食材とする料理や洋菓子が好まれるようになったのに伴い、サルモネラやウェルシュ、カンピロバクターなど、家畜の腸管に由来する菌が増えています。(Fig.2)
食中毒の予防
食中毒の感染経路は、汚染された水・食品などによる経口感染のほか、患者との接触(便・嘔吐物など)による接触感染があります。
食中毒予防の三原則
- 菌をつけない
新鮮で清潔な材料を使う、手指を洗う、調理器具も清潔に!
- 菌を増やさない
冷蔵・冷凍保存、調理・加工は迅速に!
- 菌を殺す
アルコールによる除菌、十分な加熱による殺菌!
食中毒の治療
食中毒を起こし、下痢やおう吐を繰り返した身体は、水分が不足し脱水症状を起こしやすい状態にあります。水分を十分に補給することが大切です。
通常は短期間で自然に回復しますが、症状に応じて、吐き気止めの坐薬や内服薬、下痢止めや整腸剤などを処方することもあります。下痢はあまりひどくなければ強い下痢止めを使って止めようとするより、食事療法をきちんとすることの方が重要です。
また、特定の細菌が原因の胃腸炎では、抗生剤・抗菌剤の投与が必要です。
食中毒は、時に死に至ることもあるので、軽視は禁物!重症化する前に早めに医療機関へ行くようにしましょう。
特に以下のような方は、早めに診察を受けてください。
- 38℃以上の発熱
- 1日に10回以上の下痢
- 便に血が混じっている
- 強い腹痛や嘔吐
- 小児や高齢者
- 外国旅行から帰ってきたばかりの人
また、夏休みなどで海外へ行かれる方は、生水や生ものに注意してください。