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ご近所あら!さがし

ひもんやだより2007年4月号掲載

第10回 萩の里 碑文谷

(2011年5月閉店しました)

扉を開くと、広々としたカウンターと、明るく静かな空間が広がっています。

「奥へどうぞ」と案内され、大きな窓の脇のテーブルにつくと、クッションのついた椅子は実に座り心地がよく、自然とゆったりくつろいだ気分になります。

「萩の里」は、松本恵美さんが5年前にはじめられた日本茶専門の喫茶店です。お店の名前は、ご主人のご実家の旅館の屋号を継がれたとのこと。

ペットボトルのお茶を飲む人は増えているのに、ちゃんとお茶をいれて飲む人は少なくなっている。自宅に急須すらない人もいる。「本当のお茶のおいしさを知ってもらいたい」と、物心付いたときにはお茶を飲んでいたという松本さんは語ります。

お茶のリストには静岡(掛川)、埼玉(狭山)、京都(宇治)、福岡(八女)など、各地のものがあり、季節にあわせた和菓子も吟味して取り寄せています。

お茶やお菓子の好みを伝えれば、松本さんが相談にのってくれます。

カウンターで半日近く、松本さんとおしゃべりを楽しんでいく常連さんもいるそうです。

店内には近所の方のビーズアクセサリーの委託販売や、イベントの案内のちらしなども置かれ、地域のコミュニティスペースにもなっています。お店の奥の空間は、10人ほどの集まりにちょうどよい大きさで、ときどき幼稚園や小学校のお母さま方の会合にも使われます。店内で個展・作品展をひらくこともできます。

今回は遅いランチに、鯖のぬかみそ炊きをたのみました。

鯖、ごはん、漬け物、湯呑み、急須が乗ったお盆、さらに2煎、3煎と楽しめるようにポットが運ばれてきました。早速、急須からお茶を注ぐと、いい香りが鼻に届きます。食事と一緒にいただくお茶は、甘めの緑茶・渋めの緑茶・ほうじ茶から一つ選ぶことができます。私は甘めの緑茶を、相棒はほうじ茶を選びました。ほうじ茶用には陶器の湯呑み、煎茶用には磁器の湯呑みが用意されています。高い温度でいれるほうじ茶には、厚手で口当たりのよい陶器を、それに対し煎茶は、色も楽しめるように磁器を使っているのだそうです。

鯖は甘すぎず、真っ白いふっくらごはんが、とてもよく合います。小皿にのった小梅も、化学調味料や甘味料の味はしない、昔ながらの酸っぱい梅干しの味がします。「変なものは入れない。安心して食べていただけるように」だそうで、お茶と同様に食事への気づかいも感じられました。

松本さんに、「煎茶をおいしく入れるコツは?」と伺うと、「とにかく待つこと」だそうです。

1、まず、お湯が冷める(60℃くらい)まで待ってから、急須に入れること

2、じっくり味が出るまで(お店では砂時計で計って3分)待ってから、茶碗に注ぐこと

特に、「急須に入れるお湯が熱すぎると、お茶の葉がすぐに開いてしまい、甘みやうまみでなく、渋みばかりが出てきてしまうので、注意して!」だそうです。お茶の渋い甘いは、お湯の温度で調節するのではないのですね(笑)。茶葉の量は、お店では、約200mlの急須に4〜5g使うそうです。小さじ2杯強が目安です。

取材の帰りにお茶殻でつくったかわいいポプリのおみやげをいただきました。顔を近づけると、ほのかに芳ばしいお茶の香りがします。お茶の葉には消臭効果があるとのこと。2ついただいて、一つをひもんや内科の診察室に届けました。

お茶殻まで無駄にしない、松本さんのお茶への深い愛情が感じられました。

このお茶殻ポプリが欲しい方は、萩の里で「ひもんやだよりを見ました!」と伝えてください。

日本茶の喫茶店 萩の里 碑文谷