ひもんや俳壇

ひもんや俳壇 2011

1月号

一般投句

  • 今朝の冬陽差し透く隅緋耗氈
    川喜田秀雄
  • 夜半の冬尖塔の明り見るばかり
    川喜田秀雄
  • 石蕗の黄花鮮やか芦毛塚
    富所 敬子
  • 冬の陽や街路の銀杏金色に
    富所 敬子
  • 紅葉葉やくれない映えて今朝の庭
    栗原 敏雄

向原喜楽会・不動会

  • 新婚の二人の熊手小さくとも
    安藤 虎雄
  • 神の留守賽銭の音響きたる
    小澤たん子
  • 嗄れし声の客呼ぶ酉の市
    半澤ハツ子
  • 番傘の油の匂ひ京時雨
    森譜 稀子
  • 江戸っ子の熱し易とや酉の市
    柴崎 英子
  • 手仕事のほっと一息時雨をり
    武井 康子
  • 枯れしもの枯れきれぬもの園広し
    笹島美和子
  • 山茶花のふれ合ひながら散りにけり
    廣門登喜子
  • 健康に一人ぐらしの冬に入る
    森崎 富貴
  • 受験子に熱き雑炊運びけり
    吉田 新子
  • 紅葉散る池にひらりと錦鯉
    川部 義明
  • 叩かれてふり向く肩に木の葉散る
    佐々木 弘
  • 煌々と裸電球酉の市
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 注連飾りあたりの凛となりにけり
    苅野 玲子
  • 誰もいぬ栗駒山の初時雨
    渡辺 幸江
  • 樹も草もおやすみなさいと初時雨
    千葉百合子
  • 初時雨信号の赤うらめしく
    安達久美子
  • 急ぎ足ビルの谷間の虎落笛
    苅野 節子

わかみどり会

  • 冬日和今日一日も恙無く
    浅田 智子
  • ベランダの日差しも深く冬隣
    清水 悠子
  • 村の名と同じ川の名末枯るゝ
    畑山 則子

ミモザ会

  • 初東風や和服の裾の大乱れ
    佐々木巴里
  • 華やぎは冬の紅葉となりてより
    三国 紀子
  • 神棚の灯明直ぐなる淑気かな
    石橋万喜子

2月号

一般投句

  • 忘れ去ることもなけれど年忘れ
    川喜田秀雄
  • かにかくに齢を重ねて年忘れ
    川喜田秀雄
  • 種壺に満る木の実や何時と無しに
    富所 敬子
  • 叢雲も時に綻び冬の月
    富所 敬子
  • 音たてて屋根に跳ねゐるしいの実よ
    栗原 敏雄

向原喜楽会・不動会

  • ハイカーの影もまばらや暮の秋
    安藤 虎雄
  • 街道に不揃ひの柿ならべ売る
    小澤たん子
  • 秋寒し夫の下着に名をしるす
    半澤ハツ子
  • 下り簗逃れ投網にかかりけり
    森 譜稀子
  • 晩秋の憂さポロロンとマンドリン
    柴崎 英子
  • 柿落葉百の色美し踏みこめず
    武井 康子
  • 隠れ里めくこの辺り葱畑
    笹島美和子
  • 短日や昨日につづく探し物
    廣門登喜子
  • 小屋掛の熊手に見入る老夫婦
    森崎 富貴
  • 落葉踏むおろしたてなるスニーカー
    吉田 新子
  • 朝焼の紅葉に負けぬ色となる
    川部 義明
  • 落葉踏む心しみじみ落葉踏む
    佐々木 弘
  • 講中の一団来る寺小春
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 熱燗は昔話がよく似合ふ
    苅野 玲子
  • 峡の端に触れむばかりの冬の雁
    渡辺 幸江
  • 赤く燃え黒き練炭尉となる
    千葉百合子
  • 拍子木と子供等の声冬の夜
    安達久美子
  • 丁寧に組まれし炭火明かりかな
    苅野 節子

わかみどり会

  • 快癒謝すお参り今日は七五三
    浅田 智子
  • 古希祝ふ松茸飯のクラス会
    清水 悠子
  • 冬凪やどの路地もみな海へ出る
    畑山 則子

ミモザ会

  • 初冬や木もれ日差して白障子
    佐々木巴里
  • 冬菊の黄を恋ふ蝶も黄なりけり
    三国 紀子
  • 抱き寄せて毛皮のなかの細身かな
    石橋万喜子

3月号

一般投句

  • 病室の牛乳壜に椿挿す
    川喜田秀雄
  • 道塞ぐ烏を避けて初雀
    富所 敬子
  • 薄紅の梅の香ぞする今朝の窓
    富所 敬子
  • 朝寒や今朝の珈琲ゆるく挽く
    半澤 篤
  • 草径の蛇来年もまた会へるかな
    原  良

向原喜楽会・不動会

  • 数へ日をあたふた過ごしたる今年
    安藤 虎雄
  • 街師走こんなことしちゃ居られない
    小澤孝ん子
  • 一人居に昨夜のおでん温めて
    半澤ハツ子
  • 主婦といふ肩書を措き旅師走
    森 譜稀子
  • 隣家はや天使を飾りクリスマス
    柴崎 英子
  • 樅の木に星のこぼるゝ聖夜かな
    武井 康子
  • 師走風追はるゝごとき街あかり
    飯田久美子
  • 数へ日へ割り込む用のまたひとつ
    笹島美和子
  • ぬくもりは母の形見のちゃんちゃんこ
    廣門登喜子
  • 全身を力としたる大くしゃみ
    森崎 富貴
  • 冬空にクレーン高く高く起つ
    吉田 新子
  • 喜々として園児ら落葉投げ合ひぬ
    川部 義明
  • 小春日やつい長くなる立話
    佐々木 弘
  • また会ひし出前のバイク街師走
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 病棟の静まりかえる三ヶ日
    苅野 玲子
  • 馥郁と蝋梅の香や歩を止める
    渡辺 幸江
  • 楪やゆづるものなく年老いて
    千葉百合子
  • 楪のそばに自転車大家族
    安達久美子
  • 乗初や向ひの席に晴着の子
    苅野 節子

わかみどり会

  • 風に舞ふ落葉くるくる散歩道
    浅田 智子
  • 晩秋や降り立つ駅は雨に濡れ
    清水 悠子
  • 満天の星のきらめき秋深む
    畑山 則子

ミモザ会

  • 歌舞伎座の建替へ前の初芝居
    佐々木巴里
  • 末社にも小さき列あり初詣
    三国 紀子
  • 星降りてきてかまくらの灯をともす
    石橋万喜子

4月号

一般投句

  • 悴みて小銭なかなか取り出せず
    浅田 貞行
  • 初景色街のしじまに富士白く
    川喜田秀雄
  • ふるさとに心をつなぐ冬銀河
    富所 敬子
  • 初空や病室の父にこやかに
    半澤 篤

向原喜楽会・不動会

  • 七種の名を知らぬ子も粥を食ぶ
    安藤 虎雄
  • 元旦の誓ひそろそろほころびて
    小澤孝ん子
  • 三ヶ日折目正しく老いにけり
    半澤ハツ子
  • 獅子頭脱げば小学五年生
    森 譜稀子
  • 繭玉や呼び名間違ふ子沢山
    柴崎 英子
  • 買初の切山椒を千代結び
    武井 康子
  • 初明り一人生きてく力とす
    飯田久美子
  • 参道の長し大注連飾まで
    笹島美和子
  • 幸せな人の集まり新年会
    廣門登喜子
  • 覚えきし孫の挨拶お正月
    森崎 富貴
  • 英字紙にくるめる紅の冬薔薇
    吉田 新子
  • 冬晴やうっすら浮かぶ晝の月
    川部 義明
  • 日向ぼこいつしか愚痴の聞き役に
    佐々木 弘
  • 冬さうび主なき庭の守り人か
    山形 定房
  • 初日待つ一番星をいただきて
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 灯をともし並ぶかまくら町おこし
    苅野 玲子
  • かまくらは白雪姫の隠れ家か
    渡辺 幸江
  • 住み慣れし街を遠くに枯木立
    千葉ゆり子
  • かまくらやお国訛りに誘われて
    安達久美子
  • 早朝の薄氷を踏み出勤す
    苅野 節子

わかみどり会

  • 笙の音にひかれて見入る初神楽
    浅田 智子
  • 多摩川の流れの速さ春立ちぬ
    清水 悠子
  • 学校の紅白の幕水温む
    畑山 則子

ミモザ会

  • おしまひは星空にむけ豆を撒く
    佐々木巴里
  • 寒鯉の動きて水を動かさず
    三国 紀子
  • 花種蒔くこころに文を待つごとく
    石橋万喜子

5月号

一般投句

  • 節分や天地の節目湯浴みせむ
    川喜田秀雄
  • 春入日富士の山影幽かにて
    川喜田秀雄
  • 尖塔に灯のともりをり夕時雨
    富所 敬子
  • 街灯の明りに雪の円舞かな
    半澤 篤

向原喜楽会・不動会

  • 金縷梅の一枝床に大書院
    安藤 虎雄
  • まんさくや馬の眸もうるみをり
    小澤孝ん子
  • ゆく雲も春めくものゝ一つかな
    半澤ハツ子
  • まんさくや猫の集へる唐箕小屋
    森 譜稀子
  • 春浅し寺に一会の靴を脱ぐ
    柴崎 英子
  • 潮騒の岬一望水仙花
    武井 康子
  • 春一番押され入りたる喫茶店
    飯田久美子
  • 紅梅や風の研ぎたる空の青
    笹島美和子
  • 温めるも冷ますも息や余寒なほ
    廣門登喜子
  • 濃き色のほうれん草の元気買ふ
    森崎 富貴
  • 佳きことのありて仰ぎぬ梅の花
    吉田 新子
  • 豆撒きや幼き頃の我がをり
    川部 義明
  • 知らぬ間に治ってをりし春の風邪
    佐々木 弘
  • まんさくや奏ではじめし渓の水
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 春泥を避けて通れぬ我家かな
    苅野 玲子
  • 畦伝ひ歩きし春の千枚田
    渡辺 幸江
  • 日の射して人待ち顔の春田かな
    千葉ゆり子
  • 春泥の靴跡おどる通学路
    安達久美子
  • 春の泥冷やし汁粉の如くなり
    苅野 節子

わかみどり会

  • 手作りの壷に千両飾り棚
    浅田 智子
  • 蕗の薹和へる酢味噌は母の味
    清水 悠子
  • 登校の子らに海より雪解風
    畑山 則子

ミモザ会

  • ひばり見上げて庭仕事ひと休み
    佐々木巴里
  • 重さうに垂れしがミモザ手に軽し
    三国 紀子
  • 直角にすすみ卒業証書受く
    石橋万喜子

6月号

一般投句

  • 春愁や眠れぬ夜の雨の音
    浅田 貞行
  • 魁けて連翹咲けりなゐ震ふ
    川喜田秀雄
  • 落ちてなほ心を誘ふ椿かな
    富所 敬子
  • 三月の霜降る音の闇夜かな
    原  良

向原喜楽会・不動会

  • 鶯の姿は見えず声ばかり
    安藤 虎雄
  • 先陣を切ってまんさく咲きにけり
    小澤孝ん子
  • 春立ちぬ雲は高さを整へり
    半澤ハツ子
  • 相合傘バレンタインの日でありし
    森 譜稀子
  • まんさくや水車の音の高まり来
    柴崎 英子
  • 散歩道春一番に押され歩す
    武井 康子
  • 日の斜面梅福郁と暮れ残る
    飯田久美子
  • 金縷梅に一番乗りの出店組む
    笹島美和子
  • 椿落つことりと音のしたやうな
    廣門登喜子
  • 椿落つ蕾のまゝでありしかな
    森崎 富貴
  • 余震また外は静かな春の雨
    吉田 新子
  • 水温む親亀子亀甲羅干し
    川部 義明
  • 語気荒く短き言葉冴返る
    佐々木 弘
  • 泥流を浮きつ沈みつ白椿
    宇都宮義長
  • 書の道に卒業はなし筆をとる
    仲島  信
  • 卒業子どっと吐き出す田安門
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 日本家屋には不似合なリラの花
    苅野 玲子
  • 襟足に風を遊ばせリラの花
    渡辺 幸江
  • 群なせる一人静や避難先
    千葉ゆり子
  • 群生す一人静と名はあれど
    安達久美子
  • 枝撓ひ色あふれたるリラの花
    苅野 節子

わかみどり会

  • 復興をひたすら祈る春なりし
    浅田 智子
  • ふらここを漕ぎ大空へ近づきぬ
    清水 悠子
  • 廃線となりし鉄路や下萌ゆる
    畑山 則子

ミモザ会

  • 夕風の袖を通りて単衣かな
    佐々木巴里
  • 囀の控え目なりし異人墓地
    三国 紀子
  • 天国の門もかくやと薔薇アーチ
    石橋万喜子

7月号

一般投句

  • 屋根越しに桜並木の見え隠れ
    川喜田秀雄
  • 春茜目を伏せし間に消えゆける
  • 桜咲き百と五歳の長寿かな
    富所 敬子
  • 葉桜の木漏れ日揺らし風そよぐ

向原喜楽会・不動会

  • 老妻を相手に酌める春炬燵
    安藤 虎雄
  • 制服の名札新し風光る
    小澤孝ん子
  • 八人の句会いつしか日脚伸ぶ
    半澤ハツ子
  • あたたかや欠伸の象のおちょぼ口
    森 譜稀子
  • 春の雨とびとびにある石の椅子
    柴崎 英子
  • 草匂ふ厨の窓におぼろ月
    武井 康子
  • 森林に迷ひ入りたる風青き
    飯田久美子
  • 聞き役の齢となりぬ春炬燵
    笹島美和子
  • 朧夜の一句鉛筆削りつゝ
    廣門登喜子
  • のどけしやせかるることもなく散歩
    森崎 富貴
  • 朧夜や節電の街沈黙す
    吉田 新子
  • 石仏のましますところ沈丁花
    川部 義明
  • 囀や仰げど見えぬ鳥の影
    佐々木 弘
  • 沈丁花山門の香となりにけり
    宇都宮義長
  • 廃屋を洩れくる香り沈丁花
    仲島  信
  • 咲き満ちてながれも見えず花の川
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 夕食は豆ご飯よと母の声
    苅野 玲子
  • 母恋へば母の味して豆の飯
    渡辺 幸江
  • 旅籠屋の塀に隠れて花ゆすら
    千葉ゆり子
  • 裏庭のこんな背丈に姫女苑
    安達久美子
  • 地震の地に上向いて咲く鉄線花
    苅野 節子

わかみどり会

  • ゆるやかに流れて川の温みけり
    浅田 智子
  • ビル建ちて変はる界隈日の永し
    清水 悠子
  • 地獄絵のごとき地震跡春寒し
    畑山 則子

ミモザ会

  • 洋服と色を揃へて夏帽子
    佐々木巴里
  • 花御堂杓より小さき仏かな
    三国 紀子
  • 梅雨寒や夫の記憶と食ひ違ひ
    石橋万喜子

8月号

一般投句

  • 引き抜きし十薬小さき壷に挿す
    川喜田秀雄
  • 建替へのお知らせのあり柿若葉
    富所 敬子
  • 一輪の卓の紫陽花描きたし
    原  良

向原喜楽会・不動会

  • 老鶯と子供の声のにぎやかに
    安藤 虎雄
  • 筍のてざはり馬の肌に似て
    小澤孝ん子
  • 能舞台覆ひ尽して花は葉に
    森 譜稀子
  • せせらぎの橋を吹く風梅雨兆す
    柴崎 英子
  • この街のオアシスなりし森茂る
    武井 康子
  • 黄菖蒲や亀整列の甲羅干し
    飯田久美子
  • 公園を庭とせる家青簾
    笹島美和子
  • 目薬をさして緑蔭新たなる
    廣門登喜子
  • 目に青葉森林浴の佳き一と日
    森崎 富貴
  • 春惜む余生いよいよ忙しき
    吉田 新子
  • 薫風やラジオ体操のびのびと
    川部 義明
  • 更衣ついでに靴も新調す
    佐々木 弘
  • 筍のこんなところに隠れをり
    宇都宮義長
  • 葉桜や光と影のトレモロに
    仲島  信
  • 風に乗るたんぽゝの絮森広し
    黒澤三主寿

竹の子会

  • カッコウや吟遊詩人登場す
    苅野 玲子
  • 少女らのまろき二の腕夏めきぬ
    渡辺 幸江
  • 宿坊の薄暗がりや閑古鳥
    千葉ゆり子
  • 郭公の声を遠くに八ヶ岳
    安達久美子
  • 蔓薔薇を見上げれば空晴れてきし
    苅野 節子

わかみどり会

  • 雨だれを聞きつ思案や明け易し
    浅田 智子
  • 片陰を選び選びて散歩道
    清水 悠子
  • 土地訛り飛び交ふ港夏つばめ
    畑山 則子

ミモザ会

  • 山荘に覚め郭公の声数ふ
    佐々木巴里
  • 椎の花こぼれ香りて見上げらる
    三国 紀子
  • 宿題を終へし子も来て涼み台
    石橋万喜子

9月号

一般投句

  • 寄り道や見る人も無き紗羅の花
    川喜田秀雄
  • 何故に大きな泰山木の花
    富所 敬子
  • エレベーター香水匂ふ女性一人
    半澤 篤
  • 花氷届かぬ愛に触るるごと
    戸田 徳子
  • もやしのねおひげをとったらきもちいい
    もりおかゆうこ

向原喜楽会・不動会

  • 螢火や節電の夜を楽しめる
    安藤 虎雄
  • まっすぐに筋を通して花菖蒲
    小澤孝ん子
  • 診察券二、三に非ず梅雨寒し
    半澤ハツ子
  • 雨粒に螢火宿す利根運河
    森 譜稀子
  • 夏近し森いっぱいに子らの声
    柴崎 英子
  • 夏草や表情ゆたか道祖神
    武井 康子
  • 螢火や思はず声をひそめたる
    飯田久美子
  • 八橋をゆづりゆづられ花菖蒲
    笹島美和子
  • 泰山木見上ぐるほどに一花二花
    廣門登喜子
  • 朝掘りの筍よとてお裾分け
    森崎 富貴
  • 余震なほ木椅子にしばし百千鳥
    吉田 新子
  • 葉桜や人まばらなる目黒川
    川部 義明
  • ニューヨークからも母の日忘れずに
    佐々木 弘
  • 葉桜の樹間をうめる白き雲
    宇都宮義長
  • 葉桜や子規のグランド影落とす
    仲島  信
  • 源氏やら平家やら草螢かな
    黒澤三主寿

竹の子会

  • うなだれて雨を待ちゐる四葩かな
    苅野 玲子
  • 冷しコーヒー箱根の雨をやり過ごし
    渡辺 幸江
  • 放課後のアイスコーヒー蜜の味
    千葉ゆり子
  • 坪庭に風通り抜け夏座敷
    安達久美子
  • 銀ぶらで冷しコーヒーモボとモガ
    苅野 節子

わかみどり会

  • 蚕豆を色良く茹でて旬の卓
    浅田 智子
  • 十薬や病明るく告げし友
    清水 悠子
  • 雨の日は雨に匂ひて花うつぎ
    畑山 則子

ミモザ会

  • 夢二の絵などを飾りて星祭
    佐々木巴里
  • 干草の天地返しや日の匂ひ
    三国 紀子
  • 秋水に波紋ひろがる投網かな
    石橋万喜子

10月号

一般投句

  • 壷有りて狗尾草など挿してみる
    川喜田秀雄
  • 雨上り軒に吊るして江戸風鈴
    富所 敬子
  • 目高池一匹どうもいぢめっ子
    原  良
  • 夏枯木生きざま誰が裁くらん
    戸田 徳子

向原喜楽会・不動会

  • 入念に朝の勤めや盆三日
    安藤 虎雄
  • ふるさとに帰れぬ事情盆の月
    小澤孝ん子
  • 福島の球児頑張れ雲の峯
    半澤ハツ子
  • 新盆の墓に来てまた涙して
    柴崎 英子
  • 緑蔭にコーラスの声透き通り
    武井 康子
  • 螢飛ぶ光の線を幾重にも
    飯田久美子
  • 風鈴や窓いっぱいに隅田川
    笹島美和子
  • 扇子の手とまり心の動きをり
    廣門登喜子
  • 祝膳小振りなれども鮎一尾
    森崎 富貴
  • 咲きすゝむ径曲りをり著莪の花
    吉田 新子
  • 妻愛でし月下美人を見てひとり
    川部 義明
  • 朝涼し予定を少し繰上げて
    佐々木 弘
  • 峠茶屋食後は何とゆすらうめ
    宇都宮義長
  • 初螢愛のウインク交しけり
    仲島  信
  • とりあへず麦茶を出してからのこと
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 一瞬に夜空切り裂く稲光
    苅野 玲子
  • まどろんで母似の姉妹蚊帳の中
    渡辺 幸江
  • 合唱に蝉の声のみ鎮魂碑
    千葉ゆり子
  • 鬼太郎もねずみ男も蚊帳の外
    安達久美子
  • 思い出は蚊帳の中での鬼ごっこ
    苅野 節子

わかみどり会

  • 片陰をひろふ買物帰りかな
    浅田 智子
  • 雷鳴に右へ左へ人走り
    清水 悠子
  • 法要を終え百合の香の残りけり
    畑山 則子

ミモザ会

  • 十五夜や下戸もいただく供へ酒
    佐々木巴里
  • 百日紅揺れて日差しをやはらげる
    三国 紀子
  • 木洩れ日を翅にかさねて秋の蝶
    石橋万喜子

11月号

一般投句

  • 台風過雲の竜骨置土産
    川喜田秀雄
  • 母の背を越えし中一夏休み
    富所 敬子
  • 鮮やかに日焼せる顔オクラ摘む
    原  良
  • 芋虫の美醜いづれにころぶかや
    戸田 徳子
  • ゆうらりと地蔵に揺れておみなへし
    山本 三郎
  • あそぼうよまつぼっくりをキックして
    もりおかゆうこ

向原喜楽会・不動会

  • 虫の音に迎へられ入る美術館
    安藤 虎雄
  • 颱風の雨に洗はれたる芝生
    小澤孝ん子
  • 夜を徹し運ばれ来る初秋刀魚
    半澤ハツ子
  • 爽やかや竜鱗の松天をつく
    柴崎 英子
  • 水底の草にも秋の日ざしあり
    武井 康子
  • 草庵の雨止みたれば虫の声
    飯田久美子
  • 露芝の園にひと待つ椅子二つ
    久保田光江
  • あきらめは安堵にも似て秋扇
    笹島美和子
  • 萩咲きてゆたかに蝶を集めをり
    廣門登喜子
  • 野牡丹にしたゝる程の露しぐれ
    森崎 富貴
  • 蜩が目覚まし代はり山の宿
    川部 義明
  • 池渡る橋の上にも秋の風
    宇都宮義長
  • 良き客を迎へし対の花芒
    仲島  信
  • 待ち合はす間も椎の実を拾ひけり
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 秋茄子となりて主役に躍り出る
    苅野 玲子
  • 水分りの先は豊かな秋の川
    渡辺 幸江
  • 松虫草群青色の風の道
    千葉ゆり子
  • かまきりに売られた喧嘩箒取る
    安達久美子
  • スカートのフリルにしたき松虫草
    苅野 節子

わかみどり会

  • 風の音かすかにありて秋に入る
    浅田 智子
  • 刻惜しみ夜中まで蝉鳴き続け
    清水 悠子
  • 祭果て綿菓子一夜にてしぼみ
    畑山 則子

ミモザ会

  • 名月に寄り添ふやうに星一つ
    佐々木巴里
  • 金芒銀の雨粒宿しをり
    三国 紀子
  • 聞くとなく夫の弱音を聞く夜寒
    石橋万喜子

12月号

一般投句

  • 初夢や盆景の富士岩一つ
    川喜田秀雄
  • 初春や風にゆらぎし縄のれん
    富所 敬子
  • 初東風や己に出会ふ旅に出む
    戸田 徳子
  • マフラーがかわいく風におどってる
    森おかゆう子
  • いにしえのかぜをはこんでうめのはな
    きりいのぞみ

向原喜楽会・不動会

  • 元朝に先づ奉る御神酒かな
    安藤 虎雄
  • それぞれのお国訛におめでたう
    小澤孝ん子
  • ゆるやかに余生を生きる薺粥
    半澤ハツ子
  • 初詣人に疲れて戻りけり
    柴崎 英子
  • 富士仰ぐ湯けむりのなか年あらた
    武井 康子
  • 剪り供ふ千両の実の重さかな
    飯田久美子
  • 静けさよ年頭ミサを待つ間
    久保田光江
  • 境内の箒目にある淑気かな
    笹島美和子
  • 初詣り託す思ひは平和なる
    廣門登喜子
  • 初日の出希望を託す昇り竜
    森崎 富貴
  • 業平の駅の名消ゆる去年今年
    吉田 新子
  • 梅の香に心軽やか散歩道
    川部 義明
  • 喜びも悲しみも果て冬の海
    佐々木 弘
  • 一人居の居間に陣取る鏡餅
    宇都宮義長
  • 寒木瓜や薄ら日の中咲き始む
    仲島  信
  • 庭隅の紅白梅の咲き競ふ
    西嶋 邦夫
  • 蝋梅に春待つ心託しけり
    山形 定房
  • 転居先不明と戻る賀状かな
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 厳しさを楽しさに替へ雪祭り
    苅野 玲子
  • 亡き母の声音まねして歌留多読む
    渡辺 幸江
  • 松過ぎて早や喧噪の中に入る
    千葉ゆり子
  • 筆よりも言葉を選び初硯
    安達久美子
  • 枝々に尾長群来る寒の朝
    苅野 節子

わかみどり会

  • 雪の中工事の音の遠くより
    清水 悠子
  • 思はざるときに佳きこと福寿草
    畑山 則子

ミモザ会

  • 雛人形共に傘寿を祝ひけり
    佐々木巴里
  • 梅にこそ綻ぶと言ふ佳き言葉
    三国 紀子
  • 紅梅や巫女の立ち居に鈴の鳴り
    石橋万喜子