ひもんや俳壇
ひもんや俳壇 2009
1月号
一般投句
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お手玉の手鞠模様や小正月
山路みゆき
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冠雪や富士はやっぱり日本一
浅田 貞行
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初富士や直ちにテレビも映しつつ
川喜田秀雄
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湯の宿に集ふ姉妹や照る紅葉
富所 敬子
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初詣神よ仏とはしごして
木村 遊山
向原喜楽会・不動会
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雨戸あけ首すくめけり今朝の秋
安藤 虎雄
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落葉舞ふ押し開きたる大手門
東 孝
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冬めくや犬も主も小走りに
南川 文子
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病窓に秀麗の空高くあり
半澤ハツ子
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初時雨四条大橋蛇の目傘
森 譜稀子
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テレビから津軽三味線初時雨
柴崎 英子
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叱りつつ子の手引きゆく日短
笹島美和子
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渡月橋渡り返して紅葉濃し
廣門登喜子
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散りてなほ桜紅葉の華やかに
森崎 富貴
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予約せし旅に行けざる風邪の熱
加々路伸子
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凩や放置自転車総倒れ
吉田 新子
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凩や無停車駅の町眠る
丹野 久子
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紅葉狩谷深く聞く水の音
川部 義明
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凩や身を低くして生きんとす
佐々木 弘
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路線バス落葉舞ひ立て来たりけり
黒澤三主寿
竹の子会
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日差しにも風にも秋を惜しみけり
苅野 玲子
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亜麻色に染めてはみても木の葉髪
渡辺 幸江
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吊り橋の真中に佇ちて秋惜しむ
千葉百合子
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校庭の隅の稲刈り大はしゃぎ
安達久美子
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稲刈りて幾何学模様田の面かな
苅野 節子
わかみどり会
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毛糸編む玉少しづつ転がして
浅田 智子
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日向ぼこいつもの場所に車椅子
清水 悠子
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一人居の門を彩るななかまど
畑山 則子
ミモザ会
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先達の顔のきびしき犬の橇
佐々木巴里
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茶の花の蘂まろまろと笑まひゐる
三国 紀子
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たをやかに勝ち抜いてゆく歌留多とり
石橋万喜子
2月号
一般投句
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風花の町に入りけり蔵灯
山路みゆき
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初夢や月の砂漠を丑の背で
浅田 貞行
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雪深々歳一番の東都富士
川喜田秀雄
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ペダル踏み缶コーヒーを頬にあて( 無季 )
富所 敬子
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冠雪や誇らし顔に津軽富士
木村 遊山
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街騒にかかわりもなく浮寝鳥
半澤 篤
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年賀状思ひ出たぐる人となり
池田 重子
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枯芒ほほなでゆきしうぐひ釣り
栗原 敏雄
向原喜楽会・不動会
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クリスマスケーキ抱へてパパ急ぐ
安藤 虎雄
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浮寝鳥金波銀波に夢のせて
東 孝
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着ぶくれて気合入らず竹箒
南川 文子
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水の面の輝くところ浮寝鳥
半澤ハツ子
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水鳥の水尾にビル影崩れゆく
森 譜稀子
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ビロードの姉妹のドレスクリスマス
柴崎 英子
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街は灯の塊となりクリスマス
笹島美和子
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キャンドルの灯る師走の予約席
廣門登喜子
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目の動く顔一杯のマスクかな
森崎 富貴
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冬空を引締めて行くヘリの音
川部 義明
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門灯の早くも灯る冬の雨
佐々木 弘
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天に星地に電燭のクリスマス
黒澤三主寿
竹の子会
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毛糸編む手のつい止まるドラマかな
苅野 玲子
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毛糸編む恋のはじまりかも知れぬ
渡辺 幸江
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初氷昨夜の月のしずくかも
千葉百合子
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霜枯れし小さき盆栽いとほしや
安達久美子
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霜枯れの畑に何やら転がれる
苅野 節子
わかみどり会
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あれこれとままならぬまま年の暮
浅田 智子
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小流れに身をまかせたる散り紅葉
清水 悠子
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冬日さす窓辺は猫の通り道
畑山 則子
ミモザ会
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目玉焼黄身もり上がり寒の入り
佐々木巴里
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雪吊の水に映りてゆるびあり
三国 紀子
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立春や口笛吹いてペダル漕ぎ
石橋万喜子
3月号
一般投句
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丑年だゆっくり行かうと賀状来る
浅田 貞行
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病室の七草粥を分かち食ぶ
川喜田秀雄
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お雑煮や我が家は決まって具だくさん
富所 敬子
向原喜楽会・不動会
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初夢や浄土の父と酌み交す
安藤 虎雄
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初みくじ祈りながらに開きたる
東 孝
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二日には子等と声かけ庭仕事
南川 文子
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水仙や越の岬はいつも荒れ
半澤ハツ子
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水仙や夕日傾く三方五湖
森 譜稀子
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地球儀の海の碧さや水仙花
柴崎 英子
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まねごとの畑まねごとの鍬始
笹島美和子
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早送りしてゐるやうな三ヶ日
廣門登喜子
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熱燗の酒量気になる親ごころ
森崎 富貴
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晴着の娘晴着の歩幅初詣
加々路伸子
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鏡餅やっぱり日本がとても好き
吉田 新子
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餅うまし競ひてぐいと伸ばしけり
野口 永子
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しんしんと境内冷ゆる初詣
川部 義明
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風の日はガラス戸越しに日向ぼこ
佐々木 弘
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遠富士を先づ染め上げし初明り
黒澤三主寿
竹の子会
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風花は舞ひてしずくとなる運命
苅野 玲子
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初鏡男結びが決まらずに
渡辺 幸江
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風花に光差し来る夏油の湯
千葉百合子
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刈り込みし庭に一輪寒椿
安達久美子
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空と海朱色に染めて初日の出
苅野 節子
わかみどり会
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お飾りの稲穂ついばむ初雀
浅田 智子
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開発のクレーンの伸び冴返る
清水 悠子
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まっ先に春を並べて和菓子店
畑山 則子
ミモザ会
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芽柳や蘇州の旅の舟の上
佐々木巴里
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百蕾の耀き立てる辛夷かな
三国 紀子
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一礼の影うつくしき春障子
石橋万喜子
4月号
一般投句
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初空や雲存分に一の文字
川喜田秀雄
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春浅き咲くを思案の沈丁花
富所 敬子
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日を浴びて喜色満面福寿草
半澤 篤
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みちのくの桜待たれる頃となり
木村 遊山
向原喜楽会・不動会
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庭隅の一坪畑草青む
安藤 虎雄
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梅の香や髪かき上げしときにふと
東 孝
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下萌に乳房重たく牛の伏す
半澤ハツ子
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梅早し骨董市の招き猫
森 譜稀子
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薄氷を白雲渡りゆきにけり
柴崎 英子
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薄氷のひねもす溶けぬところかな
笹島美和子
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囀りのいよゝ本気となってきし
廣門登喜子
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鶯やむかし昔の婚約日
森崎 富貴
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鶯や気のはればれと朝厨
加々路伸子
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頼らるゝとも幸せ老いの春
吉田 新子
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今年また鶯を待つ庭の日々
川部 義明
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春めくや少女玻璃戸に髪直す
佐々木 弘
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名園の摘んではならぬ蕗の薹
黒澤三主寿
竹の子会
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大地よりの使者かも知れずふきのたう
苅野 玲子
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地震ありし地に見つけたる蕗の薹
渡辺 幸江
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隣より声高々と「鬼は外」
千葉百合子
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バレンタイン八方美人となりにけり
安達久美子
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春菊の束に小さき蕾あり
苅野 節子
わかみどり会
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任地より子も戻りませ梅香る
浅田 智子
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春塵や工事トラック行き来して
清水 悠子
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春灯や明るき知らせ友の文
畑山 則子
ミモザ会
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春眠の障子まぶしき目覚めかな
佐々木巴里
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目白来て又来て散らす梅の花
三国 紀子
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手籠より摘みし若菜の香りかな
石橋万喜子
5月号
一般投句
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散りてなほ根本を飾る花椿
浅田 貞行
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春立つや陽射しに赤きタピストリー
川喜田秀雄
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遠霞富士の在処ぞ胸の内
同
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タピスリを幔幕と思へば雛の間
同
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男の子しか持てぬ我が身に孫の雛
富所 敬子
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天空を仰ぎ咲きをる白木蓮
同
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天網の綻び春の雪となる
半澤 篤
向原喜楽会・不動会
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春となり孫それぞれの門出かな
安藤 虎雄
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朝霞山一肌を脱ぎはじむ
東 孝
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春愁や老眼鏡の指紋拭く
半澤ハツ子
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剥落の阿吽の像に春の風
森 譜稀子
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北に向かふ旅の終点雪の果
柴崎 英子
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卒業す養護教師の拍手受け
笹島美和子
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すみれ濃し淡き光にかたまりて
廣門登喜子
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つぼすみれ斜面の風と小おどりす
森崎 富貴
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庭隅の妻に見せたやすみれ草
川部 義明
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遥拝す霞の中の奥の院
黒澤三主寿
竹の子会
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沈丁花風一陣の香りかな
苅野 玲子
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佳きことを秘めて蛤さくら色
渡辺 幸江
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公害のなき空めざしつばくらめ
千葉百合子
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大切に手帳に栞るクローバー
安達久美子
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蛤のつやの貫録旬の膳
苅野 節子
わかみどり会
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朝日射す白き可憐な花ゆすら
浅田 智子
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沈丁の香り何処から小糠雨
清水 悠子
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あたたかや夫と貼り合ふ湿布薬
畑山 則子
ミモザ会
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一本にして庭中が花吹雪
佐々木巴里
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春風にまだ尖りある水辺かな
三国 紀子
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水中に風ある如く花藻ゆれ
石橋万喜子
6月号
一般投句
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老いてなほ生きる気力の木の芽吹く
浅田 貞行
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鵯雀折り合ふ雨の餌壺かな
川喜田秀雄
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春あした寸刻見しや真白富士
同
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お花見や人気スポットカメラ持ち
富所 敬子
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母に手をひかれし記憶春夕焼
半澤 篤
向原喜楽会・不動会
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花見より宴のほうが一番と
安藤 虎雄
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さくらさくらおしべめしべとみなみせて
東 孝
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出して見せ舌は一枚四月馬鹿
半澤ハツ子
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行春や知覧に兵の遺し文
森 譜稀子
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行春や大事な鍵をなくしたる
柴崎 英子
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うららかや棚田の陰の労思ふ
武井 康子
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初花にもう先着の来てゐたり
笹島美和子
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春愁や独り暮しの重き日も
廣門登喜子
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佳き話はずみて姉妹桜餠
森崎 富貴
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雑事なく日々春眠をほしいまゝ
加々路伸子
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葉を重ね塩加減よき桜もち
吉田 新子
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車窓には過ぎゆく桜富士の山
川部 義明
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池の面に触れんばかりの藤の花
佐々木 弘
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一望の斜面つゝじの染めつくす
野口 永子
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自転車を押し花人となってをり
黒澤三主寿
竹の子会
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土の香の爪にのこりし土筆摘み
苅野 玲子
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つんつんと背くらべしてつくしんぼ
渡辺 幸江
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散歩道袋いっぱい土筆摘む
千葉百合子
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見いつけたこれが合図の土筆摘み
安達久美子
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群生地想ひて鉢の桜草
苅野 節子
わかみどり会
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なにもかも流れにのせて春の川
浅田 智子
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花に酔ひ人にも酔ひて戻りけり
清水 悠子
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引き潮の足裏くすぐる春の海
畑山 則子
ミモザ会
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新緑や常念岳の白き峰
佐々木巴里
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山吹の池の濁りに染まらぬ黄
三国 紀子
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たたずめば丈の身にそふ藤の房
石橋万喜子
7月号
一般投句
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土下座してシャッターを切る著莪の花
浅田 貞行
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春昼の雲が悪さよ富士崩す
川喜田秀雄
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銀色の葉裏そよぎしオリーブの
富所 敬子
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コンサート終へて若葉の風に逢ふ
半澤 篤
向原喜楽会・不動会
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母の日に照れつつ妻に花束を
安藤 虎雄
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麦飯の見当たらずとも麦の秋
東 孝
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虹の足大東京を踏まへたる
半澤ハツ子
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新緑やピザを囲みてカフェテラス
森 譜稀子
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母の日や息子はパパに娘はママに
柴崎 英子
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麦を刈る束の重さに恵みあり
武井 康子
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戯れに夏炉を焚けば里心
笹島美和子
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兄よりも妹はしゃぎ鯉幟
廣門登喜子
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心まで軽くなりたる更衣
森崎 富貴
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心地よく風をはらんで鯉幟
加々路伸子
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菖蒲湯やそれぞれに子は自立して
吉田 新子
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鯉幟広場の風を存分に
川部 義明
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薔薇散りて静かな庭に戻りけり
佐々木 弘
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胡瓜苗はや五つ六つ花つけて
野口 永子
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新緑の山なみ低く日は高く
黒澤三主寿
竹の子会
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教えてよ迷ひ螢の帰り道
苅野 玲子
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見あぐれば薄墨の雨梧桐に
渡辺 幸江
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バス待つも木蔭をえらぶ薄暑かな
千葉百合子
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晴天の植田に映る浅間山
安達久美子
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そよ風にひらりと散りぬ芥子の花
苅野 節子
わかみどり会
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その中の山あぢさゐに魅せられて
浅田 智子
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壁紙に雨染みのあり桜桃忌
清水 悠子
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五月雨に傘ささずゆく高校生
畑山 則子
ミモザ会
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屋上に狭庭もありて七変化
佐々木巴里
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紫陽花の雨に浅黄を解く気配
三国 紀子
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海霧晴れて海の際までせまるビル
石橋万喜子
8月号
一般投句
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風鈴の音は風の音千の風
浅田 貞行
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夏暁や月の行方に富士望む
川喜田秀雄
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涼風へ垣を穿つや鳩入り来
同
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梅雨空にアガパンサスの花清き
富所 敬子
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梅雨空や黄色きカンナ凛として
同
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紫陽花の次々と咲き蝶が舞ひ
栗原 敏雄
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地下街も梅雨のさなかでありにけり
半澤 篤
向原喜楽会・不動会
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紫陽花の雨を溜めたる重さかな
安藤 虎雄
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島に残る円空秘仏梅雨晴るる
東 孝
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甚平を着て病棟の主となる
半澤ハツ子
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花菖蒲女船頭の竿さばき
森 譜稀子
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回廊に人溢れをり花菖蒲
柴崎 英子
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せせらぎに螢とびかふ夕餉かな
武井 康子
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何ひとつ置かぬもてなし夏座敷
笹島美和子
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旅発ちにならんだお洒落夏帽子
廣門登喜子
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散歩道夫婦揃ひの夏帽子
森崎 富貴
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紫陽花の花より落ちる雨雫
加々路伸子
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夏帽子からす除けともなりにけり
川部 義明
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瞑想をくづせし蠅を追ひ払ふ
佐々木 弘
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雨斜めまっすぐに花菖蒲かな
黒澤三主寿
竹の子会
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夾竹桃息苦しさを覚えけり
苅野 玲子
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夾竹桃ふるさとつなぐ高速路
渡辺 幸江
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高層のビルをまたいで虹二重
千葉百合子
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雨粒に右往左往の蟻の列
安達久美子
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夕焼を背にして富士のシルエット
苅野 節子
わかみどり会
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父の忌や疎遠の人と夏座敷
浅田 智子
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橋桁に水嵩の跡桜桃忌
清水 悠子
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海峡の村夏霧の立ち籠めて
畑山 則子
ミモザ会
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洗ひ髪あとは夜風のなすがまゝ
佐々木巴里
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高々と武蔵野ぶりの夏木立
三国 紀子
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打ち水の人に一礼して通る
石橋万喜子
9月号
一般投句
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蝉しぐれ露座の大仏座禅中
浅田 貞行
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みんみんは何党の蝉総選挙
同
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虹立ちて天空縦に截りにけり
川喜田秀雄
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虹消えてなほ夕映えの雲の色
同
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朱色ののうぜんかずら地にも映え
富所 敬子
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夏に入る球児の声と応援歌
半澤 篤
向原喜楽会・不動会
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茅葺の屋根守るとか百合の花
安藤 虎雄
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夏痩せて並のサイズとなりしかな
東 孝
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遠雷やいつもどこかに戦あり
半澤ハツ子
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テファニーへ銀座夕立の雨宿り
森 譜稀子
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老犬の夢を破りし大夕立
柴崎 英子
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夕立に降りこめられてよりの縁
武井 康子
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一つだけ残せし行李土用干
笹島美和子
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サングラス取りて公明正大に
廣門登喜子
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浴衣着て大和撫子らしくなる
森崎 富貴
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サングラスかけて景色の変わりけり
加々路伸子
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サングラスちょっと気取った歩きぶり
野口 永子
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迎火や追憶の日々甦り
川部 義明
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雲の峰坂を下れば目の前に
佐々木 弘
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夕立のなかりしごとく街混める
黒澤三主寿
竹の子会
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打水の一瞬縮めアスファルト
苅野 玲子
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打水や格子戸くぐる風の道
渡辺 幸江
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西瓜割り老人ホームに笑ひ声
千葉百合子
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野牡丹の葉の縦縞も粋なこと
安達久美子
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夏空をスペースシャトル帰り着く
苅野 節子
わかみどり会
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ふるさとの尽きぬ思い出夏の夜
浅田 智子
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「おかえり」の母の一声帰省子に
清水 悠子
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点々と牧草ロールの布置涼し
畑山 則子
ミモザ会
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おみやげのハワイドレスで日盛へ
佐々木巴里
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風鈴に風の愛想のなき日なり
三国 紀子
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写生画に父の加筆や夏休み
石橋万喜子
10月号
一般投句
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百日紅虫遊ばせてなほ静か
川喜田秀雄
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五階より高き松の木月並ぶ
富所 敬子
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子持鮎群れなし上る五十鈴川
栗原 敏雄
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つり革の一律にゆれ夏の月
半澤 篤
向原喜楽会・不動会
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明日は知らず今日を限りと蝉の声
安藤 虎雄
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脱ぎ様の器用不器用蝉の殻
東 孝
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古民家へつづく飛び石秋暑し
半澤ハツ子
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我が苦楽知りたる道や蝉しぐれ
森 譜稀子
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嬰児の寝返り出来し今朝の秋
柴崎 英子
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自づから憂きこと忘れ竹の春
武井 康子
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古民家の昼を灯せし涼しさよ
笹島美和子
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あの日より耳に棲みつく蝉の声
廣門登喜子
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竹林に一歩踏み入れ蝉しぐれ
森崎 富貴
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蝉の声ひきとめられて一句出来
加々路伸子
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逝きし君何処に在す天の川
野口 永子
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竹林に提灯揺れて盆踊り
吉田 新子
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雨上がりひぐらし一つ鳴き出でし
川部 義明
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目の先を嘲るやうに黒揚羽
佐々木 弘
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心頭を滅却すれどこの残暑
山形 定房
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百幹を駆け抜くる蝶竹の春
黒澤三主寿
竹の子会
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山萩に埋もるゝごとく住家あり
苅野 玲子
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白萩に風が頬ずりしてゆきぬ
渡辺 幸江
-
せり出たる枝をくゝれば萩こぼれ
千葉百合子
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虫の声野外ライブの果てしとき
安達久美子
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ひぐらしの鳴いて季節の移りゆく
苅野 節子
わかみどり会
-
車窓には山々青田に鷺三羽
浅田 智子
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黒南風や三角波の立つ川面
清水 悠子
-
青岬水平線に船の消え
畑山 則子
ミモザ会
-
スケッチもかなはず見とれ花野ゆく
佐々木巴里
-
草の花かひがひしきはしじみ蝶
三国 紀子
-
新涼といふ書き出しの美しき
石橋万喜子
11月号
一般投句
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朝しらふ昼ほろ酔ひの酔芙蓉
浅田 貞行
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鰯雲綿雲今朝の大振舞ひ
川喜田秀雄
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二才児のジャンプで届く石榴かな
富所 敬子
向原喜楽会・不動会
-
女郎花野原一面黄金色
安藤 虎雄
-
全身をサンマまつりの煙の中
東 孝
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のぼりつゝ崩るゝ雲の九月かな
半澤ハツ子
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兄真似て回す指先赤とんぼ
森 譜稀子
-
牛乳を人肌にして今朝の秋
柴崎 英子
-
山荘のはや灯ともりて霧ふかし
武井 康子
-
二つ三つ早酩酊の芙蓉かな
笹島美和子
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お互ひの健康を祝ぎ敬老日
廣門登喜子
-
水引草紅の目立てる角度あり
森崎 富貴
-
その中に紅一点の神輿ゆく
吉田 新子
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蜩のちょっと網戸に鳴いて去る
川部 義明
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唐黍や喰ひつく歯の衰へて
佐々木 弘
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太平洋独り占めして根釣人
黒澤三主寿
竹の子会
-
落花生その生り様は知らねども
苅野 玲子
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新米や新政権の誕生す
渡辺 幸江
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夫が選るくびれ美人の落花生
千葉百合子
-
案山子立つ田んぼのベストポジションに
安達久美子
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朱の炎樹間に飾り実山梔子
苅野 節子
わかみどり会
-
秋めきし風色の中朝散歩
浅田 智子
-
夕暮の風に戯れ花芒
清水 悠子
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騎手となりはしゃぐ夜店の肩車
畑山 則子
ミモザ会
-
疎開地の味なつかしき市田柿
佐々木巴里
-
たよりなき色を寄せ合ひ藤袴
三国 紀子
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椅子あれば座したき齢黄落期
石橋万喜子
12月号
一般投句
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本州を台風一過富士も見ゆ
川喜田秀雄
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花咲きてこの生垣も金木犀
富所 敬子
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地下街を出て驚きぬ日短
半澤 篤
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芦ノ湖の秋引き寄せて竿を振り
栗原 敏雄
向原喜楽会・不動会
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友禅の着物さながら紅葉山
安藤 虎雄
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小鳥鳴くエプロン結びつゝ庭へ
東 孝
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ひきたての朝のコーヒー小鳥来る
半澤ハツ子
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鳥渡るディズニーランドてふ国へ
森 譜稀子
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身構へて小鳥そこまで来てをりぬ
柴崎 英子
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すゝき原銀の波間におぼれたり
武井 康子
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供花のなき外人墓地に小鳥来る
笹島美和子
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月照らす京に金閣銀閣寺
廣門登喜子
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ぷつぷつとどんぐりを踏む朝の径
森崎 富貴
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ほの暗き菓舗に一鉢菊明り
吉田 新子
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一輪の菊に備前の壺適ふ
野口 永子
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秋草の知るも知らぬも好ましく
川部 義明
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寄り道をしよかしまひか秋の雨
佐々木 弘
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一群の小鳥一樹に納まりぬ
黒澤三主寿
竹の子会
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生けるものしばし休めと黄落す
苅野 玲子
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色変えぬ松美しく毛越寺
渡辺 幸江
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色変へぬ松我が同人我が母校
千葉百合子
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黄落を踏みしめ孫の文化祭
安達久美子
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木枯や夜更けの辻の街路灯
苅野 節子
わかみどり会
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手術後の今日の献立秋づくし
浅田 智子
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旧館の外壁覆ふ蔦紅葉
清水 悠子
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子の齢またも尋ねる夜長かな
畑山 則子
ミモザ会
-
賛美歌のひときわ高くクリスマス
佐々木巴里
-
奉納の菊ともなれば身じろがず
三国 紀子
-
みごもりの眉うすうすと毛糸編む
石橋万喜子