ひもんや俳壇

ひもんや俳壇 2006

1月号

一般投句

  • 秋深し団地の子供夏姿
    奥山ツヤノ
  • 山茶花の花散り地面スリ模様
    奥山ツヤノ

2月号

一般投句

  • 八十路の旅糸とふれあい未知の国
    奥山ツヤノ
  • 曜日なき一人生活の明日の日を
    奥山ツヤノ
  • 枯葉ちり落葉ふみしめ足をとめ
    奥山ツヤノ

向原喜楽会

  • 枯葉ちり落葉ふみしめ足をとめ
    長橋 昭孝
  • 紅葉して明るくなりし森の中
    坂田 和子
  • 捻子を巻く形見の時計秋の夜
    浅田 智子
  • 朝稽古寒さが肌に喰ひつく
    大間喜代治
  • 日捲りの残りの頼みの師走かな
    安藤 虎雄
  • ドクターも北風に乗りいそがしそ
    高尻由紀江
  • 旅衣脱ぐや即ち師走妻
    笹島美和子
  • 顔出して外の寒さを確かめし
    黒澤三主寿

3月号

向原喜楽会

  • 冬眠の札外しをり御老体
    大間 喜代治
  • 楽しみの一つは老いの日向ぼこ
    安藤 虎雄
  • 風花や青空市場人まばら
    長橋 昭孝
  • 夫の試歩一歩一歩に春近し
    浅田 智子
  • 人声のありしあたりの下萌ゆる
    笹島 美和子
  • 白魚とはねてわかりし四手網
    笹島 美和子

4月号

2005年度「毎日俳壇賞」

  • かりがねの声を飛天の笛かとも
    石橋 万喜子

向原喜楽会

  • 治縁台で峠の茶屋の草だんご
    大間 喜代
  • 風冷ゆる春のたよりのいづくより
    安藤 虎雄
  • 我が庭の日差しぬくもり雪割草
    長橋 昭孝
  • 豆を撒く亡き父の声耳にあり
    坂田 和子
  • 春泥を気にする人とせぬ人と
    笹島 美和子
  • 寺長閑ぼろ市の立つご縁日
    黒澤 三主寿

わかみどり会

  • 春の宵夫の面打つ音ひゞく
    浅田 智子
  • 春の虹退院といふ良き日和
    清水 悠子
  • いつの間に人集まりて磯菜摘み
    畑山 則子
  • 春の夜のラジオひねれば寄席囃子
    真虎 竹世

ミモザ会

  • 菜の花や札所は遥か山の上
    佐々木 巴里
  • 春の夢さめて我が身のあることも
    須藤 喜美子
  • 野遊びにたんぽぽ尽きるところなし
    三国 紀子

5月号

向原喜楽会

  • 桜咲く土手を越えれば渡しかな
    大間 喜代治
  • 花筏川面に映ゆる絵柄かな
    安藤 虎雄
  • 若草に子ら追ひかけて転びけり
    長橋 昭孝
  • ものの芽に日差し眩しくなって来し
    高尻 由紀江
  • また同じ話題に老の日向ぼこ
    坂田 和子
  • しとしとと雨ぐんぐんと名草の芽
    笹島 美和子
  • 山越えの桜吹雪を来りけり
    黒澤 三主寿

わかみどり会

  • 散る花を惜しみつ九段詣でかな
    浅田 智子
  • 白壁に影をゆらして初桜
    清水 悠子
  • 遠き日の母と桜の大安寺
    畑山 則子
  • 真っ先に幹事が酔うて花筵
    真虎 竹世

ミモザ会

  • ぬぐときにひとひら散りて花衣
    佐々木 巴里
  • みちのくの春好もしや花と城
    須藤 喜美子
  • 流れなき水にも組みて花筏
    三国 紀子

6月号

向原喜楽会

  • お茶作り焙炉たしかめ腕まくる
    大間 喜代治
  • 浅草は祭り一色三社様
    安藤 虎雄
  • 早立ちのわれらに京の春しぐれ
    長橋 昭孝
  • 五月雨や一つの傘に二人づれ
    高尻 由紀江
  • 夏の草舗装の割れに花をつけ
    坂田 和子
  • 古茶入れて午後のテレビを独り占め
    笹島 美和子
  • 夏草の踏まれて釣の穴場らし
    黒澤 三主寿

わかみどり会

  • 日をさけて傘ふかぶかと白牡丹
    浅田 智子
  • ベランダに日増し賑ふ春の草
    清水 悠子
  • 短夜や柱時計に寝そびれて
    畑山 則子
  • 喜ばれ二日つづきの豆の飯
    真虎 竹世

ミモザ会

  • 行く春や姉の遺せし舞小袖
    佐々木 巴里
  • 行く春や遺品の指輪はめて見る
    須藤 喜美子
  • 囀りの空ひくくとも応へ合ふ
    三国 紀子
  • 藤の香やすこしつめたき椅子に坐し
    石橋 万喜子

7月号

向原喜楽会

  • 火の番にかまどの前の竹床几
    大間 喜代治
  • 若竹の伸びて大空おほふ丈
    安藤 虎雄
  • 古民家のここも山の手竹茂る
    長橋 昭孝
  • 青梅を漬け込む氷砂糖買ふ
    高尻 由紀江
  • 舞台去るいなせな男腰団扇
    坂田 和子
  • 竹皮をぬぎかけのまま丈くらべ
    笹島 美和子
  • 竹林の青さに入りぬ梅雨晴れ間
    黒澤 三主寿

わかみどり会

  • 東京の真ん中にして今年竹
    浅田 智子
  • ほめられてその気になって夏帽子
    清水 悠子
  • 訪ね来し人の触れたる貝風鈴
    畑山 則子
  • わが座もうなきふるさとの夏炉かな
    真虎 竹世

ミモザ会

  • 青嵐ヒマラヤ杉の大うねり
    佐々木 巴里
  • 世をさけて住む尼寺の花うつぎ
    須藤 喜美子
  • 梅雨茸の踏めばたちまち地に還る
    三国 紀子
  • 新緑や白衣のままの昼休み
    石橋 万喜子

8月号

向原喜楽会

  • 草取りは老の仕事とまかせられ
    大間 喜代治
  • 草取りのはじめは文句言ひながら
    安藤 虎雄
  • 訪ふ家の表札隠す濃紫陽花
    長橋 昭孝
  • ぬかみそは黴させまいとお母さん
    高尻 由紀江
  • 夏草をつまみてすがし父母の墓
    坂田 和子
  • 砂浜にまだ日のぬくみ夏の月
    笹島 美和子
  • 出水退く橋の高さの残りけり
    黒澤 三主寿

わかみどり会

  • 山程の梅漬け終へし安堵かな
    浅田 智子
  • 敷き詰めて光と風に昆布干す
    清水 悠子
  • 十薬やつかねばならぬ嘘ひとつ
    畑山 則子
  • 筆塚のそばに拾ひぬ落文
    真虎 竹世

ミモザ会

  • 襟元をゆったりと着て薄暑かな
    佐々木 巴里
  • 日盛や髪を見せざる修道女
    須藤 喜美子
  • 水音の蛍の園は昼閉ざし
    三国 紀子
  • 日盛や気休めほどの蔭に入り
    石橋 万喜子

9月号

向原喜楽会

  • この頃は焼いた秋刀魚のパック入り
    大間 喜代治
  • こだわりの七輪で焼く秋刀魚かな
    安藤 虎雄
  • 大文字果て星空のありにけり
    長橋 昭孝
  • 秋刀魚焼くそばで見ている猫がいる
    高尻 由紀江
  • 降る程に啼く一匹はカナカナか
    坂田 和子
  • ためらひてゐしとは見えぬ踊りやう
    笹島 美和子
  • 風に乗る碑文谷囃し秋祭
    黒澤 三主寿

わかみどり会

  • 逝きし人遺されし人今日の月
    浅田 智子
  • 筆走る音の静けさ虫時雨
    清水 悠子
  • すがるものまだ探しゐて葛の花
    畑山 則子
  • 午後よりの凌ぎやすさよ法師蝉
    真虎 竹世

ミモザ会

  • 秋草や形見となりし楽茶碗
    佐々木 巴里
  • 蝉涼し殿の菩提寺大広間
    須藤 喜美子
  • 暮れてより街吹く風の秋めきし
    三国 紀子
  • 新涼や拭きかさねゆく皿の音
    石橋 万喜子

10月号

一般投句

  • サルビアや誕生カード医院より
    有峰
  • 天高し野道に古きポンプあり
    山路みゆき

向原喜楽会

  • 針めどに糸の通らぬ母よなべ
    大間喜代治
  • 三日月や眉を描きて傾けり
    安藤 虎雄
  • 夜なべしてやうやくに会ふ帳簿かな
    長橋 照孝
  • 名月を仰ぐ銭湯帰りかな
    高尻由紀江
  • 月の出や川の向かうは蔵の町
    笹島美和子
  • 社長一人工員一人夜なべの灯
    黒澤三主寿

わかみどり会

  • ほろにがき漢方薬や今朝の秋
    浅田 智子
  • 菜を洗ふ我手の老いや秋の水
    清水 悠子
  • 感知して灯る門灯秋暑し
    畑山 則子
  • 炊くことのなき外かまど曼珠沙華
    真虎 竹世

ミモザ会

  • ぐいのみの志野をえらびて十三夜
    佐々木巴里
  • いただきし明日香の里の曼珠沙華
    須藤喜美子
  • 秋暑し日傘の目より日の洩るる
    三国 紀子
  • 触るるものみな濡れてゐし花野ゆく
    石橋万喜子

11月号

一般投句

  • ゆったりと捌く袱紗や鵙高音
    山路みゆき

向原喜楽会・不動会

  • 茅葺も久しぶりなる里の秋
    大間喜代治
  • クラブ振る朝露に裾濡らしつつ
    安藤 虎雄
  • 梁すすけ菊一輪や山の宿
    長橋 照孝
  • 気がつけば虫の音いつか失せてをり
    坂田 和子
  • かあさんの秋茄子の味忘られず
    高尻由紀江
  • 有線で人呼ぶ村の秋高し
    笹島美和子
  • 森の木々草も音立て秋の風
    広門登喜子
  • 千二百年崇めてここに秋祭
    吉田 新子
  • ただこゝにいる幸せの夜長かな
    森崎 富貴
  • あさまだき虫の音繁き頃となり
    加々路伸子
  • 優し師を偲ぶ桔梗の色深く
    野口 永子
  • 年なりに身に添ふものよ藍浴衣
    丹野 久子
  • 梨剥いて二十世紀をなつかしむ
    黒澤三主寿

わかみどり会

  • 能面展出て銀ぶらの小六月
    浅田 智子
  • 小春日や一寸お出かけおしゃれして
    清水 悠子
  • 幼き日母の迎への時雨傘
    畑山 則子
  • 小春日や糸杉の影塔の影
    真虎 竹世

ミモザ会

  • 海風を陸に招きて花芒
    佐々木巴里
  • 殿の墓家臣の墓や落葉降る
    須藤喜美子
  • 対岸は風と光の芒原
    三国 紀子
  • 着飾りて紐ひとつなき菊人形
    石橋万喜子

12月号

一般投句

  • 背の高き振子時計やクリスマス
    山路みゆき

向原喜楽会・不動会

  • 洋室に昔ながらの炬燵あり
    大間喜代治
  • 散り続く葉に銀杏の埋れけり
    安藤 虎雄
  • 吾よりも一足先に炬燵猫
    長橋 照孝
  • 空碧し熟柿たわゝな庭に佇つ
    坂田 和子
  • ふるさとへ帰りてみれば冬構
    高尻由紀江
  • 焼芋屋呼び止めるにはちと遠し
    笹島美和子
  • 木守り柿一つのための夕日とも
    広門登喜子
  • 注連繩の少し汚れし神の留守
    吉田 新子
  • 娘の来る日松茸飯を焚いて待つ
    森崎 富貴
  • やゝ寒の堂の灯明ほの暗く
    加加路伸子
  • 子の手借る試歩の林道やゝ寒く
    丹野 久子
  • 熟れ切って抄ふ一匙百匁柿
    黒澤三主寿

わかみどり会

  • 新婚の一間占領して炬燵
    浅田 智子
  • 窓越しに赤の目に染むポインセチア
    清水 悠子
  • 潮の目にゆれて海鳥見え隠れ
    畑山 則子
  • 駅裏の木々も灯されクリスマス
    真虎 竹世

ミモザ会

  • 海風を陸に招きて花芒
    佐々木巴里
  • 殿の墓家臣の墓や落葉降る
    須藤喜美子
  • 対岸は風と光の芒原
    三国 紀子
  • 着飾りて紐ひとつなき菊人形
    石橋万喜子