ひもんや俳壇

ひもんや俳壇 2007

1月号

一般投句

  • 人日や菓子屋横丁賑はへり
    山路みゆき

向原喜楽会・不動会

  • ふっくらとあるじに似たり福寿草
    大間喜代治
  • 福寿草肩寄せあって咲きにけり
    安藤 虎雄
  • 初日待つ山の頂き星明り
    長橋 照孝
  • 野良猫に内緒の餌やる雪の縁
    坂田 和子
  • つるし柿のれんのように揺れてゐる
    高尻 由紀江
  • ほころびし鉢より売れて福寿草
    笹島 美和子
  • 穏やかに喜寿迎えたる冬日和
    広門 登喜子
  • 日溜りへ日溜りへゆく冬日和
    加加路 伸子
  • 嬉しさのはにかみとなる七五三
    森崎 富貴
  • 蹲踞の水の静けさ冬日和
    野口 永子
  • 仲のよき五十路姉妹に土手小春
    丹野 久子
  • 朝光に金色となる初雀
    黒澤 三主寿

わかみどり会

  • 母の年はるかに越えて初手水
    浅田 智子
  • 買初や美しき絵柄の書簡箋
    清水 悠子
  • 初笑いピカソ・ムンクも描けぬ顔
    畑山 則子
  • 襟元を合はせ直して初電話
    真虎 竹世

ミモザ会

  • 長身の最敬礼のお年玉
    佐々木 巴里
  • 我が過去も未来も包み山眠る
    須藤 喜美子
  • 冬桜にも花見てふ輪のありぬ
    三国 紀子
  • 初髪のにほふが如きうけこたへ
    石橋 万喜子

2月号

一般投句

  • 絵ガラスの待合室や春立てり
    山路みゆき

向原喜楽会・不動会

  • その中に畳針あり針供養
    大間喜代治
  • まだ冷ゆる名ばかりの春立ちにけり
    安藤 虎雄
  • 白魚は春のおとずれ四手かな
    長橋 照孝
  • たるみきし雪吊りに風荒き日も
    坂田 和子
  • ものの芽に日差し眩しくなって来し
    高尻由紀江
  • 石垣をこぼる露ともインク草
    小澤 孝子
  • 吹き溜る北風小僧の置きみやげ
    亀山 文子
  • 掃き寄せし屑に紅白梅の寺
  • 帯解の長襦袢さへ可愛らし
    広門登喜子
  • 寒梅のつぼみふくらむ日和かな
    加加路伸子
  • 節分の豆撒く声の小声がち
    森崎 富貴
  • 豆を撒き柊をさし家を守る
    野口 永子
  • 試歩の杖四温日和に恵まれし
    丹野 久子
  • そぞろ寒朝日さし込む厨内
    吉田 新子
  • 薬包紙より取出して針納む
    黒澤三主寿

わかみどり会

  • 一粒が幸せはこぶ福の豆
    浅田 智子
  • 鍼灸の針の冷たく寒に入る
    清水 悠子
  • 日をつかむことの一途な冬木立
    畑山 則子
  • 春立つや京より届く五色豆
    真虎 竹世

ミモザ会

  • 苔寺の苔をしとねに落ち椿
    佐々木巴里
  • 雪沓の乾く間のなく降りつゞく
    須藤喜美子
  • 梅に佇つ日向日蔭となく冷ゆる
    三国 紀子
  • ものの芽の力溜めゐる尖りかな
    石橋万喜子

3月号

一般投句

  • うすうすと加湿器の湯気桃の花
    山路 みゆき

向原喜楽会・不動会

  • おみくじの大吉と出し初詣
    安藤 虎雄
  • 渡し舟春の疾風に棹をさす
    長橋 昭孝
  • 大護摩に膝つめ合ひて初詣
    高尻 由紀江
  • わが机辺母の遺せし手鞠あり
    東 孝
  • 初凪や波待つサーファー火を囲む
    南川 文子
  • すすぎ場に春菊の笊湯治宿
    笹島 美和子
  • 白菜のはじける力刃を入るる
    廣門 登喜子
  • 八十路祝ぐ御慶嬉しく受けとめし
    加加路 伸子
  • 肩越しに見る仲見世や初詣
    森崎 富貴
  • 葉牡丹のレースのグラデーションを巻く
    野口 永子
  • 春の風邪おしゃれ心の故かとも
    丹野 久子
  • 傍らに夫ある日向寒椿
    吉田 新子
  • 万両の雨に滲める玻璃戸越し
    野口 愛子
  • 変る世に七草粥を変りなく
    黒澤 三主寿

竹の子会

  • 紅梅の香は白にゆづりけり
    苅野 玲子
  • 紅白梅寄り添ふごとく咲きにけり
    千葉 百合子
  • 新しき生命出でよと野焼きかな
    安達 久美子
  • 芝焼きの燻る先にひ焔あり
    苅野 節子

わかみどり会

  • 春宵の三味のつま弾きしのびごま
    浅田 智子
  • わがために飾りし雛を仕舞ひかね
    清水 悠子
  • 老木のねじれても張る木の芽かな
    畑山 則子
  • 蕗の薹見つけしことの一大事
    真虎 竹世

ミモザ会

  • 孫悟空乗ってきさうな春の雲
    佐々木 巴里
  • 久々に娘に会ふこころクロッカス
    須藤 喜美子
  • 水辺より座を広げ来し名草の芽
    三国 紀子
  • 日も月も波に遊ばせ春の海
    石橋 万喜子

4月号

一般投句

  • 嬉嬉として少女三人木瓜の花
    山路みゆき

向原喜楽会・不動会

  • 初午や屋敷稲荷の幟旗
    安藤 虎雄
  • 春泥にうかつに一歩とられけり
    長橋 昭孝
  • 梅の下野点の人となりにけり
    高尻由紀江
  • 豆撒の隣の坊や変声期
    東 孝
  • 春立てり子に歳時記を贈らるる
    南川 文子
  • なじみなき駅に降り立ち春寒し
    笹島美和子
  • 白魚のおどり食ひとは跳ねもして
    廣門登喜子
  • いたわりつ盆梅を地に下ろしけり
    加加路伸子
  • 椀種に黒い目並ぶ白魚かな
    森崎 富貴
  • つくばいに影を写して梅香る
    野口 永子
  • 子を負うて磴下りけり春時雨
    丹野 久子
  • 白菜の安値につづく鍋料理
    吉田 新子
  • 昏るまでおしゃべりつづく春炬燵
    野口 愛子
  • 白梅は直立薄紅梅しだれ
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 老辛夷力の違ひ見せつけて
    苅野 玲子
  • 岩団扇咲きみちのくの山笑ふ
    渡辺 幸江
  • 月淡く色香こぼして辛夷かな
    千葉百合子
  • 山笑ふ生命の息吹薫り来る
    安達久美子
  • 裾野より膨らみ初めて山笑ふ
    苅野 節子

わかみどり会

  • 鎮めたき心に仰ぐ月朧
    浅田 智子
  • 花便り遠回りしてポストまで
    清水 悠子
  • 乳ふふむややの微笑みあたたかし
    畑山 則子
  • 春塵の中に東京タワーの灯
    真虎 竹世

ミモザ会

  • 和服着て身八つ口より桜東風
    佐々木巴里
  • 桜餅鴬餅とよくしゃべり
    須藤喜美子
  • 老幹の意地あるごとく花を吐き
    三国 紀子
  • 花筏水の絵巻のはじまれり
    石橋万喜子

5月号

一般投句

  • 花冷や紙人形の紙の櫛
    山路みゆき

向原喜楽会・不動会

  • 天までも届けとばかり雛の磴
    安藤 虎雄
  • 雛かざる指折り数ふ孫の年
    長橋 昭孝
  • 石段に揃ひし雛の豪華さよ
    高尻由紀江
  • 雛あられ受くる二才のこごめる手
    東 孝
  • うららかや砂場の子らのはしゃぎ声
    南川 文子
  • 庭の来し雀にわかつ雛あられ
    半澤ハツ子
  • 春雨や相合傘の花模様
    笹島美和子
  • 終戦のどさくさの中卒業す
    廣門登喜子
  • 卒業の次の難関ありにけり
    加加路伸子
  • 平成のハイカラさんの卒業日
    森崎 富貴
  • 何かしら心の踊るチューリップ
    野口 永子
  • 卒業児一っ刻固く口結び
    丹野 久子
  • 追ひついて夫にさしかく春日傘
    吉田 新子
  • 昔なら飛ぶ春泥でありにけり
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 待ちわびし大山桜紅深く
    苅野 玲子
  • チュニジアに父の植ゑたる桜咲く
    渡辺 幸江
  • この寺を守りて幾年老桜
    千葉百合子
  • 京の宵しだれ桜とだらり帯
    安達久美子
  • しばらくはフロントガラスに舞ふ桜
    苅野 節子

わかみどり会

  • 満開の花にたわむれ鳥立ちぬ
    浅田 智子
  • 退院す桜並木を通り抜け
    清水 悠子
  • あやす子の明るき笑顔春うらら
    畑山 則子
  • 次の田へ次の田へ落ち春の水
    真虎 竹世

ミモザ会

  • 奈良の寺巡りしあとのわらび餅
    佐々木巴里
  • 老松のいのちたくまし緑立つ
    須藤喜美子
  • 織りなせる踊り子草と犬ふぐり
    三国 紀子
  • 子は貝を宝物とし磯遊び
    石橋万喜子

6月号

一般投句

  • 白日の磐梯山や桐の花
    山路みゆき
  • 桜散り古木の幹にひとめぼれ
    奥山ツヤノ

向原喜楽会・不動会

  • 温暖化花咲くときを狂はせし
    安藤 虎雄
  • 夏草の雨に煙るや上高地
    長橋 昭孝
  • 夜桜の場所取りといふ初仕事
    高尻由紀江
  • ひとしきり又ひとしきり花吹雪
    東 孝
  • ぱっと咲きさっと散りたる花惜しむ
    南川 文子
  • 釣糸に光の遊ぶ水の春
    半澤ハツ子
  • 藤垂れてより雨の日の多きこと
    笹島美和子
  • むらさきに土手を染めたる諸葛菜
    廣門登喜子
  • 裏道を明るくしたる諸葛菜
    加加路伸子
  • 春の空ビルの谷間の花やしき
    森崎 富貴
  • 諸葛菜その名の由来尋ねけり
    野口 永子
  • アスパラの穂先いとしき小筆ほど
    丹野 久子
  • 正面に山霞みゐる露天風呂
    吉田 新子
  • 鯉幟森の広場の日曜日
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 星こぼれわすれな草の花となる
    苅野 玲子
  • 花嫁の金襴緞子風光る
    渡辺 幸江
  • 風光り水面すぎゆく鳥の影
    千葉百合子
  • 勇ましき菖蒲の刃先湯にぷかり
    安達久美子
  • 幾重にも巻かれて香る粽かな
    苅野 節子

わかみどり会

  • 色も香も新茶でありし深呼吸
    浅田 智子
  • 葉桜のカーテンに窓遮られ
    清水 悠子
  • 応援の声わき上がる青嵐
    畑山 則子
  • 地に届く届かぬと言ひ藤くぐる
    真虎 竹世

ミモザ会

  • 白粉で鼻筋通し祭りの子
    佐々木巴里
  • 園に入り一気に纏ふ新樹の香
    三国 紀子
  • しんがりの玉の雫の新茶汲む
    石橋万喜子

7月号

一般投句

  • 挨拶のよき少年や夏の山
    山路みゆき

向原喜楽会・不動会

  • 万緑の心を癒す薬とも
    安藤 虎雄
  • 梅雨雲の中より出し槍穂高
    長橋 昭孝
  • 囀にひと休みして本を読む
    高尻由紀江
  • 鰹なら一本買ひよ浜育ち
    東 孝
  • 緑陰や主も犬も顔なじみ
    南川 文子
  • 青葉道来て青葉道振り返る
    半澤ハツ子
  • この森を知りつくしたる老鴬よ
    笹島美和子
  • 名札の字消えし一樹の芽吹きけり
    廣門登喜子
  • 木洩れ日に新緑の梢輝いて
    加加路伸子
  • 夏めくや森林浴を存分に
    森崎 富貴
  • 子等の声空つき抜けて初夏の森
    野口 永子
  • 森五月風に乗り来る友の声
    丹野 久子
  • 新緑をのみ込むやうに深呼吸
    吉田 新子
  • 新緑の大樹に力得たりけり
    野口 愛子
  • 合同の句会襖をはずしけり
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 五月晴匂ひ立つ青光る青
    苅野 玲子
  • あめんぼうブナの葉っぱを舟にして
    渡辺 幸江
  • 十薬の白さコップに挿してみる
    千葉百合子
  • 華やかなドレスを着替へ葉桜に
    安達久美子
  • 十薬の咲き盛りたる門の内
    苅野 節子

わかみどり会

  • 雨傘が日傘に変る午後の街
    浅田 智子
  • 伸び縮みして噴水の深呼吸
    清水 悠子
  • 夕焼けに背ナを押されし畑の道
    畑山 則子
  • 一つだけ残せし行李土用干
    真虎 竹世

ミモザ会

  • 水色と白の日傘のすれ違ふ
    佐々木巴里
  • どこまでも背筋真直立葵
    三国 紀子
  • 氷より匙の冷たき掻き氷
    石橋万喜子

8月号

一般投句

  • 席に着く吹奏楽や夏の果
    山路みゆき

向原喜楽会・不動会

  • 鮮やかや明治の森の花菖蒲
    安藤 虎雄
  • 舟溜り団扇片手の潮来笠
    長橋 昭孝
  • 草取りにたのまれて行く友の家
    高尻由紀江
  • 夏帽子かぶりたる人皆美人
    東 孝
  • 産卵の枝決まらぬや黒楊羽
    南川 文子
  • イヤリング少し覗かせ夏帽子
    半澤ハツ子
  • 花菖蒲白紫と分かつ橋
    笹島美和子
  • 梅雨晴やたっぷり使ふ化粧水
    廣門登喜子
  • おさな児のリボンひらめく夏帽子
    加々路伸子
  • 走り梅雨出先で傘を買ふ羽目に
    森崎 富貴
  • あでやかに一夜の月下美人かな
    野口 永子
  • 遠目にはお若く見えし夏帽子
    丹野 久子
  • 菖蒲園色とりどりの傘動く
    吉田 新子
  • 雨斜めまっすぐに花菖蒲かな
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 降りつづく雨に色増す四葩かな
    苅野 玲子
  • 日の暮れて山百合のよく匂ひけり
    渡辺 幸江
  • 雛罌粟(コクリコ)の赤の絨毯空の青
    千葉百合子
  • 木々渡る風さらさらとハンモック
    安達久美子
  • 山を背に二本(ふたもと)の百合匂ひたつ
    苅野 節子

わかみどり会

  • 髪洗ふ明日手術のたかぶりに
    浅田 智子
  • 仄白き庭園灯や半夏生
    清水 悠子
  • 甚平の千鳥掛けより風抜けて
    畑山 則子
  • 月涼し舟より望む陸の灯も
    真虎 竹世

ミモザ会

  • 流れ星王妃の眠る地に届け
    佐々木巴里
  • 一刀に花開くごと西瓜割れ
    三国 紀子
  • ぽんと帯たたいて暑さ払ひけり
    石橋万喜子

9月号

一般投句

  • 門川に残る洗場草の花
    山路みゆき

向原喜楽会・不動会

  • サングラスをんなの齢隠しけり
    安藤 虎雄
  • はや虫を聞く高原の旅にあり
    長橋 昭孝
  • 公園に日々草の咲きそろふ
    高尻由紀江
  • のうぜん花妖艶のまま散りにけり
    東 孝
  • のうぜん花咲いてこぼれてまた咲いて
    南川 文子
  • 隠れ蓑着けたい時のサングラス
    半澤ハツ子
  • 山少し近づけ離しハンモック
    笹島美和子
  • あの日からまだ咲いてます百日草
    廣門登喜子
  • 夕立や傘をななめに小走りに
    加々路伸子
  • 留守番はをさな児の守玉の汗
    森崎 富貴
  • 幹高く鳴きて名残の法師蝉
    野口 永子
  • 夏萩のうねりのはざま蝶とべり
    丹野 久子
  • 診療を終へ夕立のやむを待つ
    吉田 新子
  • 夕立の飛沫プラットホームにも
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 天の川名もなき星も輝きて
    苅野 玲子
  • 出来立ての綿飴三つ雲の峰
    渡辺 幸江
  • いにしえの重みを今に蓮の花
    千葉百合子
  • 風神か雷神かとも雲の峰
    安達久美子
  • 高原の笹持ち帰り星祭る
    苅野 節子

わかみどり会

  • 仲秋やしきりに昔思はれる
    浅田 智子
  • 顔少しこけて鏡に今朝の秋
    清水 悠子
  • 振り向けば色移ろへる花野かな
    畑山 則子
  • 山荘の一人に惜しき星月夜
    真虎 竹世

ミモザ会

  • そのむかし母にもたれて月見かな
    佐々木巴里
  • 黒船の昔ありたる浦の秋
    三国 紀子
  • 棘ありて裾をとられし花野かな
    石橋万喜子

10月号

一般投句

  • 木犀や瓦の厚き城下町
    山路みゆき
  • 健康にと担いで帰宅大西瓜
    山本 三郎
  • 緑陰や子曰くと朗誦す
    平沼 高明

向原喜楽会・不動会

  • 熱気なほままにならざる夕涼み
    安藤 虎雄
  • 盆灯籠あかあか灯しなほ淋し
    長橋 昭孝
  • 多摩川の花火といふも音ばかり
    高尻由紀江
  • ひょっとして銀河は宇宙花火かも
    東 孝
  • 待って待って待ちくたびれし秋の風
    南川 文子
  • 手花火に老人ホーム賑はへり
    半澤ハツ子
  • 大花火果て満天の星現るる
    笹島美和子
  • 小バエ見てあわてゝキッチン掃除する
    西川舞依子
  • 携帯に差入れの花火当直医
    笹島 雅彦
  • 蝉時雨負けじと歌う子らの声
    山形 定房
  • 遠花火ながら特等席なりし
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 金色の光をまとふ芒かな
    苅野 玲子
  • 山荘をつつみて霧の夜となる
    渡辺 幸江
  • 大花火特等席は歩道橋
    千葉百合子
  • 墨すりて心鎮まる夜長かな
    安達久美子
  • 白き蝶しばし憩へる女郎花
    苅野 節子

わかみどり会

  • 孫集まりて丈くらべ敬老日
    浅田 智子
  • 窓からは見えずなりたる花火かな
    清水 悠子
  • シャガール展待ちし広場の赤とんぼ
    畑山 則子
  • 十人が全校生徒うろこ雲
    真虎 竹世

ミモザ会

  • 上棟や盃にあふれて今年酒
    佐々木巴里
  • 溝萩の一叢畑と田の境
    三国 紀子
  • 物語はじまるやうな月の出て
    石橋万喜子

11月号

一般投句

  • 松手入れときどき猫の見てゐたり
    山路みゆき

向原喜楽会・不動会

  • 芒原漕ぎゆくごとく分け入りぬ
    安藤 虎雄
  • 秋刀魚焼く隣も同じ匂ひする
    高尻由紀江
  • 露ころりん葉っぱ大きくうなづけり
    東 孝
  • 秋暑し金メダル得しやわらママ
    南川 文子
  • 息災を分け合ひ夫を秋刀魚食ぶ
    半澤ハツ子
  • 夜や長き駅長帽を遺されし
    笹島美和子
  • 子を叱り今日の秋刀魚の苦きこと
    西川舞依子
  • 昼めしの吾をにらみし秋刀魚かな
    笹島 雅彦
  • 群れて赤抽ん出て白曼珠沙華
    廣門登喜子
  • さらさらと肌に爽やか絹のシャツ
    加々路伸子
  • ひっそりと水引草に朝の雨
    森崎 富貴
  • あきつ飛ぶ白馬の空は真青なる
    野口 永子
  • 彼岸花寺苑の芝生灯しけり
    丹野 久子
  • 木犀や読み返しつゝ投函す
    吉田 新子
  • 山峡の瀬音さわやか湯治宿
    花岡 天明
  • 野の風を妖しくしたり曼珠沙華
    黒澤三主寿

竹の子会

  • ほろ苦きあけび料理に銘酒あり
    苅野 玲子
  • ゆらゆらと紫苑に風の道ありぬ
    渡辺 幸江
  • 空広くダム一面に赤トンボ
    千葉百合子
  • 大きな眼今何を見る赤とんぼ
    安達久美子
  • 嵐去り銀杏散り敷く遊歩道
    苅野 節子

わかみどり会

  • 美容師に気遣はれたる木葉髪
    浅田 智子
  • 在りし日の猫を偲びぬ狗尾草
    清水 悠子
  • 休日を使ひ切ったる日の短か
    畑山 則子

ミモザ会

  • 嵯峨菊の鉢が順路に京都御所
    佐々木巴里
  • 垣内はひそと暗しや石蕗の花
    三国 紀子
  • 稽古場にひとり習ひの夜寒かな
    石橋万喜子

12月号

一般投句

  • 十字架に日のさしてをり冬木立
    山路みゆき
  • 秋出水今も八岐大蛇ゐて
    浅田 貞行

向原喜楽会・不動会

  • カンバスに画きたくなる秋の雲
    安藤 虎雄
  • 誕生日ふるさとの栗送ります
    高尻由紀恵
  • 天高しYシャツ波の丸の内
    東 孝
  • 朝寒や寝床で天気予報見る
    南川 文子
  • 島中に校内放送天高し
    笹島美和子
  • 運動会我が子の勇姿追ふレンズ
    西川舞依子
  • 柿の味判る齢となりにけり
    笹島 雅彦
  • あるだけの星出揃ひし寒さかな
    廣門登喜子
  • 旅心ひときは増せる菊膾
    加々路伸子
  • 憂きことも忘れて仰ぐ後の月
    森崎 富貴
  • 留守居役つとむる羽目にそぞろ寒
    丹野 久子
  • 霜降るや牧場の牛の動かざる
    吉田 新子
  • そぞろ寒近道抜けて帰りけり
    花岡 天明
  • いつの間に膝揃へをりそぞろ寒
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 紅葉散りかそけき音の庭となり
    苅野 玲子
  • 小春日は山の暮しの恵みとも
    渡辺 幸江
  • 心にも身にもしみ入る時雨かな
    千葉百合子
  • 茶室へと加賀友禅の散紅葉
    安達久美子
  • 迷ひつゝ捨てゝは拾ふ散紅葉
    苅野 節子

わかみどり会

  • 聖夜劇天使の舞ひ降り来し如く
    浅田 智子
  • 赤き花友より届くクリスマス
    清水 悠子
  • 初めての英語の歌よクリスマス
    畑山 則子

ミモザ会

  • 亡き夫の好みし色の返り花
    佐々木巴里
  • 錆朱てふ色を重ねし冬紅葉
    三国 紀子
  • 日向ぼこいまだ心のぬくもらず
    石橋万喜子