ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
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2026年03月号掲載
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ビタミン剤との付き合い方8

ビタミンCサプリメントの選び方天然ボケはいけません

ビタミンCは酸っぱくて黄色、レモンのイメージですが、アスコルビン酸には淡い酸味はありますが、無色透明の物質です。レモン何個分のビタミンCのような宣伝文句をよく見かけるように、ビタミンCを多く含む食品の代表であるレモンがビタミンCのイメージリーダーになっていますが、レモンの酸味はクエン酸によるものです。

ビタミンCの効果を謳う健康食品やサプリメントの多くは、ビタミンCのイメージを強調するために、黄色の着色をしてクエン酸で酸味を強化しています。そんなこともあって、ビタミンCは天然の食品から摂るべきという意見もあり私もこれには賛成です。果物や野菜から摂るほうが吸収が穏やかです。ただし果物は摂りすぎるとカロリー過多になりますし、生野菜は嵩の割には量が少なく、加熱調理するとビタミンCはかなり失活してしまいます。また私のように食事時間が不規則な方は、食品からコンスタントにビタミンCを補充できないので、手軽なサプリメントでのこまめな摂取をおすすめしています。

ビタミンC製剤の原末のアスコルビン酸は糖から化学的に合成されています。その糖の原料が中国産であったり、遺伝子組み換え作物由来である可能性があることから、化学合成されたアスコルビン酸を使ったビタミンC製剤を不安視する方もいらっしゃいます。ビタミンCを多く含むアセロラなどなどの果実から抽出したビタミンCの方が安全なのではないか?抽出ではなく果汁をそのまま濃縮したり粉末にしたもののほうがいいのではないか?さらには天然のビタミンCと化学合成されたアスコルビン酸は異なるとおっしゃる方もいます。

ビタミンC=アスコルビン酸です。天然由来でも化学合成されたものも、全く同じL-アスコルビン酸です。物質によっては自然界にはL体しかないのに、化学合成するとL体だけでなく鏡像異性体のD体もできてしまうものもありますが、アスコルビン酸に関しては天然と同じL-アスコルビン酸だけを合成することができます。天然のビタミンCにはアスコルビン酸以外の成分も含まれているというおかしな意見は、1919年にドラモンドの水溶性物質Cの時代にはアスコルビン酸の含まれる天然物質をビタミンCと呼んでいたのが、後にその天然物質の中の有効成分がアスコルビン酸ということが判明したという事実を分かっていない意見です。

化学合成されたアスコルビン酸は、その原料が中国産であれ、遺伝子組み換え作物であれ、きちんと精製されていれば全く問題はありません。中国産の野菜や遺伝子組み換えの穀物を食べるのとは違います。むしろ注意しなくてはいけないのは天然素材から抽出した(という)ビタミンCで、まず抽出にコストがかかる、抽出過程で加熱していれば失活する、そして抽出に使う薬品の残留が心配です。そして得られたL-アスコルビン酸は化学合成したものと全く同じです。濃縮果汁や粉末には抽出の過程はありませんが、ビタミンC以外の成分も一緒に濃縮されています。天然成分であればすべて安全、というわけではなく過剰摂取すると害のある成分もあります。また残留農薬など外来の成分も濃縮されます。私は一般に体に良いといわれる食品をそのまま濃縮したものを摂るのは、化学合成されたものよりも気を付けなくてならないとおもっています。ふぐの毒も、餌の貝に含まれる微量の毒素が体内で濃縮されたものです。

ビタミンCに関しては、化学合成された製剤を天然食品の代替として大いに利用していただきたく、もちろん私もそうしています。

Cから先のビタミン研究

ビタミンAを発見したエルマー・マッカラムのくる病の研究から1919年にビタミンDが、1922年には米国のハーバート・エバンスとキャサリン・ビショップによりビタミンEが発見され、現在もビタミンとして定着しています。

ビタミンFは、ヒトが生体内で合成できない必須脂肪酸、リノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸で、体外から摂取する必要があり、欠乏した場合には皮膚炎や脱毛、成長障害、免疫低下などの欠乏症をきたしますが、脂肪酸の構造がわかったことから三大栄養素の一つであることが明らかになり、ビタミンから外れています。

ビタミンGはビタミンB2、ビタミンH、IはビタミンB7(ビオチン)と同じであることがわかり、ビタミンJについては、論文等も残されておらず不明です。

そして最後の真打登場です。ビタミンKはコレステロールの研究をしていたデンマークの生化学者カール・ピーター・ヘンリク・ダムが、ニワトリにコレステロールを全く含まない食事を与えると血液の凝固障害を起こし、出血が止まらなくなる症状が出ることを確認し、これをきかっけに1934年にビタミンKを発見し、1943年度のノーベル生理学・医学賞を受賞しています。おもしろいのは、ビタミンKはDから数えて7番目に発見されたビタミン、ではなくて、Kは凝固を意味するドイツ語Koagulationsの頭文字です。

その後もヒトが生体内で合成できず、体外から摂取しないと欠乏症を生じるとおもわれるビタミン様物質が見つかり、カルニチンをビタミンO、フラボノイドをビタミンP、ユビキノン(コエンザイムQ10)をビタミンQとすることが提案されていますが、既存のビタミンと比べて欠乏症がはっきりせず、ユビキノンは体内で合成できることがわかり、ビタミンとしては定義されていません。

このようにビタミンは20世紀前半の医学研究の花形でしたが、ビタミンが物質名ではなく、生体内での働きに由来する分類であり、現在では物質の構造分析が容易になったことから、物質にビタミンの名称を与えることは科学的ではありません。

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