忘年会シーズン到来!お酒に関する話題
新型コロナウイルス感染症が5類になって初めての忘年会シーズンになりました。 今年は時間や人数の制限なく、おもいきり呑める!と楽しみにしている方も大勢いらっしゃるかとおもいます。 アルコールの健康に関するデメリット、メリットに関してはこれまでたくさんの研究が行われてきましたが、最新の興味深い報告をご紹介いたします。
1日どのくらいの飲酒量で死亡リスクが増える? 483万人の解析研究
カナダ・ビクトリア大学のJinhui Zhao氏らが 飲酒と全死亡の関連をより正確に調べるために系統的レビューを行い、107件のコホート研究のメタ解析を行った結果、毎日のアルコール摂取量が少量~中量の場合は全死亡リスクと有意な関連はなかったが、摂取量が増えると明らかなリスク増加が認められ、女性のほうがより少ない摂取量から関連がみられた。
研究方法
PubMedとWeb of Scienceを用いて、1980年1月~2021年7月に発表された飲酒と全死亡率に関する107件の研究を特定。年齢中央値(56歳)の上下および性別で層別し、相対リスクをモデル化した。主要アウトカムは、1日当たりの平均アルコール摂取量(1.30g未満:機会飲酒者、1.30~24g:少量飲酒者、25~44g:中量飲酒者、45g~64g:大量飲酒者、65g以上:最大量飲酒者に層別)と全死亡率の関連についての相対リスク推定値とした。 ※アルコール20gの目安:ビール500mL、ワイン200mL、日本酒180mL、ウイスキー60mL、焼酎100mL
結果
- 解析対象となった計107件(483万8,825人、うち42万5,564人が死亡)のコホート研究で、飲酒による全死亡のリスク推定値は724であった。
- 機会飲酒者(相対リスク[RR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.86~1.06、p=0.41)および少量飲酒者(RR:0.93、p=0.07)では、生涯非飲酒者と比べ全死亡リスクの有意な低下はみられなかった。
- 中量飲酒者(RR:1.05、p=0.28)で全死亡リスクの増加がみられたが有意ではなく、大量飲酒者(RR:1.19、p=0.001)および最大量飲酒者(RR:1.35、p=0.0001)では有意に増加した。
- 女性においては、飲酒者が生涯非飲酒者と比べ全死亡リスクが有意に高く(RR:1.22、p=0.03)、どの摂取量においても男性より全死亡率が高かった。
うーん、やっぱり大量飲酒はよくないわけですが、女性の飲酒に関しては、少量なら健康に好影響という報告もありました。
女性は適量の飲酒で、非飲酒より死亡率低い? 1万118人を20年間追跡
女性の中年期のアルコール摂取量と全死亡率およびがん死亡率の関連について、オーストラリア・メルボルン大学のYi Yang氏らが持続的仮説的介入で検討した結果、全死亡率はまったくアルコールを摂取していなかった場合よりもある程度の量(エタノール30g/日以下)を摂取していたほうが低くなっていた可能性が示唆された。一方、がん死亡率では明らかではなかった。
研究方法
1996~2016年に定期的に収集されたAustralian Longitudinal Study on Women'sHealth 1946~51年出生コホートのデータを用いた。ベースライン時に女性をアルコール摂取量(エタノール0~30g/日超、または30g/日超の場合は20g/日以下に減量)に割り付け、摂取量を継続した場合の全死亡率およびがん死亡率を推定した。
結果
- 全死亡率およびがん死亡率の累積リスクは、それぞれ5.6%(1万118人を20年間追跡)および2.9%(18年間追跡)であった。
- ベースラインのエタノール摂取量が30g/日以下の場合、まったく摂取していない場合に比べて、全死亡率およびがん死亡率のリスクが低く、30g/日を超えると高くなった。
- 介入を継続していた場合、全死亡率については上記と同様の関係が観察されたが、がん死亡率については30g/日以下でみられた負の相関と30g/日超でみられた正の相関は明らかではなかった。
飲酒は消化器、呼吸器系のがんにはよくない一方で、飲酒者のほうが少ないがんもあります。
飲酒で発症リスクが上がるがん、下がるがん 女性80万人の前向き研究
英国・オックスフォード大学のSarah Floud氏らが、前向き研究であるUK MillionWomen Studyで調査したところ、アルコール摂取量が増えると、上部気道・消化管がん、乳がん、大腸がん、膵臓がんのリスクが増加し、甲状腺がん、非ホジキンリンパ腫、腎細胞がん、多発性骨髄腫のリスクが低下する可能性が示された。また、この関連は、上部気道・消化器がんを除いて、喫煙、BMI(肥満度)、更年期ホルモン療法による変化はなかった。
研究方法
本研究では、がん既往のない閉経後女性123万3,177人(平均年齢56歳)において、中央値1998年(四分位範囲:1998~99年)での飲酒量の報告をがん発症の記録とリンクさせた。非飲酒と1杯/週未満の女性(43万8,056人)を除外した79万5,121人について、ベースライン時の飲酒量(ワイン1杯、ビール半パイント[284mL]、蒸留酒1メジャー[30mL]を1杯と換算)に応じて4つのカテゴリー(週当たり1~2杯、3~6杯、7~14杯、15杯以上)に分類。Cox比例ハザードモデルで、21種類のがんにおける飲酒量ごとの調整相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を推定した。喫煙、BMI、更年期ホルモン療法との相互作用の統計学的有意性は多重検定を考慮し評価した。
結果
- 調査した79万5,121人の平均飲酒量は週6.7杯(SD:6.4杯)だった。
- 17年(SD:5年)の追跡調査中に14万203人ががんを発症した。
- 飲酒と上部気道・消化器がん(食道扁平上皮がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん)リスクとの間に強い関連がみられた(1杯/日当たりのRR:1.38、95%CI:1.31~1.46)。
- 乳がん、大腸がん、膵臓がんと飲酒との間に中程度の正相関がみられた(1杯/日当たりの RR:乳がん1.12[95%CI:1.10~1.14]、大腸がん1.10[同:1.07~1.13]、膵臓がん1.08[同:1.02~1.13])。
- 甲状腺がん、非ホジキンリンパ腫、腎細胞がん、多発性骨髄腫と飲酒との間に中程度の逆相関がみられた(1杯/日当たりのRR:甲状腺がん0.79[95%CI:0.70~0.89]、非ホジキンリンパ腫0.91[同:0.86~0.95]、腎細胞がん0.88[同:0.83~0.94]、0.90[同:0.84~0.97])。
- 上部気道・消化器がんでは、飲酒と喫煙の間に有意な相互作用がみられた(1杯/日当たりのRR:現在喫煙者1.66[95%CI:1.54~1.79]、過去喫煙者1.23[同:1.11~1.36]、非喫煙者1.12[同:1.01~1.25])。
- BMIおよび更年期ホルモン療法は飲酒関連リスクに有意な変化をもたらさなかった。
古くからフレンチパラドックス(フランス人は高脂肪食だが、赤ワインの効果で血管死が少ない)という言葉があり、お酒の中でもワインは身体にいい、というイメージがありますがそれを裏付ける報告がありました。
ワインは心血管に良い影響? 22試験の解析
多量のアルコール摂取は心血管に悪影響を及ぼす一方、少量であれば心血管に良い影響を及ぼす可能性が指摘されているが、結果は一貫していない。また、ワインの摂取が心血管の健康に及ぼす効果についても、意見が分かれている。そこで、スペイン・Universidad de Castilla-La ManchaのMaribel Luceron-Lucas-Torres氏らは、ワインの摂取量と心血管イベントとの関連について、システマティックレビューおよび22試験のメタ解析を実施した。その結果、ワインの摂取は、心血管イベントのリスク低下と関連していた。また、年齢や性別、追跡期間、喫煙の有無はこの関連に影響を及ぼさなかった。
研究方法
Pubmed、Scopus、Web of Scienceを用いて、2023年3月26日までに登録されたワインの摂取量と心血管イベント(冠動脈疾患、冠動脈性心疾患、心血管死)との関連を検討した研究を検索した。その結果25試験が抽出され、22試験についてDerSimonianand Laird Random Effects Modelを用いてメタ解析を実施した。また、ワインの摂取量と心血管イベントとの関連に影響を及ぼす因子を検討した。異質性はτ2値を用いて評価した(0.04未満:小さい、0.04~0.14:中等度、0.14~0.40:大きい)。
結果
- ワイン摂取は冠動脈疾患、冠動脈性心疾患、心血管死のリスクをいずれも有意に低下させた。リスク比(95%信頼区間)およびτ2値は以下のとおり。 -冠動脈疾患:0.76(0.69~0.84)、0.0185-冠動脈性心疾患:0.83(0.70~0.98)、0.0226-心血管死:0.73(0.59~0.90)、0.0510
- 試験参加者の平均年齢、性別(女性の割合)、追跡期間、喫煙の有無はワイン摂取と冠動脈疾患、冠動脈性心疾患、心血管死との関連に影響を及ぼさなかった。