ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
〒152-003 目黒区碑文谷2丁目6-24
TEL.03‐5704‐0810
2023年10月号掲載
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新型コロナワクチンが変わりました
当院でも新ワクチン接種を実施しています

9月20日から、新型コロナワクチンの型が変わります。これまでは初回接種は従来株のBA.4の1価ワクチン、2回目以降の接種はBA.4およびBA.5の2価ワクチンを使用していましたが、9月20日以降は初回接種。2回目以降接種とも、現在流行しているオミクロン株のXBB系統に対応した新たな1価ワクチンを接種いたします。

米FDA諮問委員会は「現在の2価ワクチンにより、XBB系統を含むオミクロン株に対して効果が持続しているが、接種後、時間が経過すると有効性が低減する。現行の2価ワクチンで誘導されるXBB/XBB.1.5系統に対する中和抗体価がBA4/5に対する抗体価より低い」などとして、2023-2024年におけるワクチンの株構成は、1価のXBB系統を推奨しています。 年齢6か月以降のすべてのかたが接種対象です。

接種時期

令和5年9月20日から令和6年3月31日まで

接種対象者

目黒区に住民票がある新型コロナワクチンの初回接種を完了した生後6か月以上のすべてのかた

※5歳以上のかたは1・2回目接種、4歳以下のかたは1から3回目接種を指します。

接種間隔

直近の接種から3か月後以降

接種回数

1人1回に限り接種できます。

初回接種(5歳以上のかたは1・2回目、6か月から4歳までのかたは1回目から3回目)がまだのかたは、引き続き接種を実施します。2回目接種は原則、1回目接種から3週間後、追加接種(3回目接種以降)は直近の接種から3か月後以降、オミクロン株XBB対応ワクチンを接種いたします。

接種券は9月15日以降、接種可能な時期が近づいたかたへ順次発送します。

接種を受ける際の同意の取得

接種を受けるかたの同意がある場合に限り接種を行います。15歳までのかたは、接種時に保護者の同伴および予診票「接種希望書欄」への保護者の署名が必要です。

問い合わせ先

目黒区新型コロナ予防接種課 電話0120-102-654

ワクチン接種者でCOVID-19が重症化しにくいのはなぜか

相変わらず、連日新型コロナウイルス感染患者さんが多数受診されています。熱、のどの痛み、咳が主な症状ですが、幸いなことに、重症化しやすいと言われている高齢者、合併症のあるかたも含め、入院が必要ななるようなケースはほとんどありません。

ウイルスの感染性は強くなっていますが、弱毒化しているため「罹りやすいけれども、悪化しない」状況ですが、重症化が少ないのは、高齢者、合併症のあるかたを中心に、ワクチン接種が普及した影響も大きいとおもいます。

これからもワクチン接種は新型コロナ感染の重症化予防の役割を果たしていくとおもわれます。もちろん、今後、ウイルスが再び強毒化する可能性もないとはいえません。

今回は米国コロラド大学から、新型コロナワクチン接種による、重症化リスク低下の理由を考察した論文が発表されたので、ご紹介いたします。


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン(以下、新型コロナワクチン)を接種することで、感染リスクがなくなるわけではないが感染後の重症化リスクは低下する。しかし、それはなぜなのか。その理由の解明につながる研究結果を、米コロラド大学コロラド公衆衛生大学院のAlison Abraham氏らが、「The Lancet Microbe」に8月7日発表した。この研究によると、COVID-19罹患者のうち、ワクチン接種を受けていた人では未接種の人に比べて、炎症マーカーの値が低かったことが示されたという。

サイトカインとケモカインは、感染症やワクチン接種に対する応答において重要な役割を果たしている。サイトカインは主に免疫細胞から分泌されるタンパク質で、細胞間の情報伝達を行う。一方、ケモカインはサイトカインの一種で、細胞遊走を活性化する働きを持つ。Abraham氏らは、2020年6月29日から2021年9月30日の間に新型コロナウイルスに感染した882人(女性57%)の血液サンプルを用いて、新型コロナワクチン接種と、21種類のサイトカインおよびケモカインの濃度とその経時的な変化との関連性を検討した。対象者は、回復期患者血漿療法のCOVID-19重症化に対する効果を検討する目的で実施された試験への参加者で、78%(688人)が新型コロナワクチン未接種、6%(55人)は一部(1回)接種済み、139人(16%)は接種完了者だった。

対象者の年齢や性別、BMI、基礎疾患などで調整して解析した結果、感染後1〜8日(スクリーニング時)では、ワクチン接種完了者では未接種者に比べて、IL(インターロイキン)-2RA、IL-7、IL-8、IL-15、IL-29、INF(インターフェロン)-γ誘導性サイトカイン(IP-10)、MCP(単球走化性促進因子)-1、TNF(腫瘍壊死因子)-αの濃度の幾何平均が有意に低いことが明らかになった。また、回復期患者血漿療法後90日目では、ワクチン接種完了者では未接種者よりも、IL-7、IL-8、VEGF(血管内皮増殖因子)-Aの濃度の幾何平均がそれぞれ、26%、20%、17%低かった。これに対して、ワクチンの一部接種者では未接種者に比べて、スクリーニング時にIP-10とMCP-1の濃度の幾何平均が有意に低かったが、回復期患者血漿療法後90日目になると、いずれのサイトカイン・ケモカイン濃度の幾何平均についても、未接種者との間に有意差は認められなかった。

研究グループは、「これらの結果は、新型コロナワクチンが、COVID-19重症化の引き金となる炎症反応を短期的にも長期的にも減少させる効果を持つことを示唆している」と述べている。その上で、「この知見は、ワクチンを接種した人でCOVID-19の重症化リスクや死亡リスクが低下し、後遺症の発症率も低下する理由の少なくとも一部を説明するものだ」と付け加えている。

今回の研究には関与していない、米ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターのAmesh Adalja氏は、「オミクロン株が蔓延していた頃のワクチン接種の主な目的は、感染症予防よりも重症化予防だった。今回の研究結果は、重症化予防のメカニズムの一端を解明するものだ」と指摘している。

研究グループは、今回の研究で得られた知見により、COVID-19のより良い治療法を探る研究に弾みがつく可能性があるとの見方を示している。論文の上席著者である、米ジョンズ・ホプキンス大学医学部病理学・内科学・疫学分野のAaron Tobian氏は、「新型コロナワクチンが、この疾患の悪化や長期的影響、死亡を予防するメカニズムの解明は、体の過剰な炎症反応を抑えるための方法の開発につながり、それが患者に対するより良い治療に役立つ」と述べている。

原著論文:Zhu X, et al. Lancet Microbe. 2023 Aug 7. [Epub ahead of print]
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