追加接種はオミクロン株にも有効?交互接種ってどうなの?
現在わが国ではオミクロン株の流行の中、新型コロナワクチンの3回目追加接種が進んでおり、果たして3回目接種は有効なのか、という不安の声も聞かれます。
カリフォルニアでは、3回目接種が重症化予防に有効であるという報告がありました。
追加接種でオミクロン株での入院が未接種の23分の1
米国・カリフォルニア州ロサンゼルス郡での調査によると、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株優勢期におけるCOVID-19による入院率は、ワクチン未接種者では2回接種+追加接種者の23.0倍、2回接種者の5.3倍だった。
ロサンゼルス郡公衆衛生局は、COVID-19サーベイランスおよびCaliforniaImmunization Registry 2のデータを用いて、2021年11月7日~2022年1月8日の年齢調整14日間累積感染率と入院率について、新型コロナワクチン接種状況および各変異株の優勢期ごとに調査した。SARS-CoV-2感染は、核酸増幅検査もしくは抗原検査で確認した。対象は18歳以上の成人で、BNT162b2(ファイザー製)、mRNA-1273(モデルナ製)、Ad.26.COV2.S(Johnson & Johnson製)の最初の連続接種が終了した日から14日後に2回接種完了とみなした。また、2回接種完了者が追加接種を受けた日から14日後に追加接種完了とみなした。
主な結果は以下のとおり。
- 2021年11月7日~2022年1月8日に報告されたSARS-CoV-2感染者42万2,966人のうち、ワクチン未接種者は14万1,928人(33.6%)、2回接種+追加接種者は5万6,185人(13.3%)、2回接種者の22万4,853件(53.2%)だった。
- デルタ株優勢期の最終期である2021年12月11日までの14日間で、ワクチン未接種者の感染率は、2回接種+追加接種者の12.3倍、2回接種者の3.8倍で、入院率は、2回接種+追加接種者の83.0倍、2回接種者の12.9倍であった。
- オミクロン優勢期(2022年1月8日で終わる週)では、ワクチン未接種者の感染率は、3回接種者の3.6倍、2回接種者の2.0倍で、入院率は、2回接種+追加接種者の23.0倍、2回接種者の5.3倍であった。
- 全解析期間において、ICU入院、人工呼吸器装着、死亡は、ワクチン未接種者が2回接種+追加接種者、2回接種者より多かった(p<0.001)。
- 感染率、入院率とも、いずれの時期においても未接種者が最も高く、2回接種+追加接種者が最も低かった。
これまで2回の接種では1度目と2度目の接種は同じワクチンであることが原則でしたが、交互接種(1回目と2回目と違うワクチンを接種)の方が有効という報告も多くなされ、わが国でも、3回目接種からは交互接種(1、2回目と違うワクチンの接種)が選択できるようになりました。
シンガポールから、3回目の交互接種が有効、という報告がありました。
60歳以上への交互接種vs.同種接種、感染率・重症化率
日本と同様に国民の多くがファイザー社およびモデルナ社製のCOVID-19ワクチンによる1回目および2回目接種(初回シリーズ)を受けているシンガポールで、60歳以上を対象に3回目接種での交互接種と同種接種後の感染・重症者の発生状況が調査された。
シンガポールでは人口の8割以上がCOVID-19ワクチンを2回接種していたにもかかわらず、2021年9月に社会的距離と検疫についての措置が緩和され、感染者が急増した。これを受けて政府は、6ヵ月以上前に2回目接種を終えた60歳以上の成人に追加接種を受けるよう呼びかけ、30μgのBNT162b2(ファイザー社)と50μgのmRNA-1273(モデルナ社)のいずれかを選択するようにした。
本研究では、2021年9月15日~10月31日に追加接種を受けた人を対象に、SARS-CoV-2感染率と重症化率を、シンガポール保健省に報告された公式データに基づいて分析した。症例は、有症者、無症状の高リスク労働者および濃厚接触者の検査によって特定された。評価項目はPCR検査で確認された感染および重症化(酸素投与が必要、集中治療室への入院、COVID-19による死亡)であった。
抗体価の上昇に要する時間を考慮し、追加接種を受けた12日後に追加接種群に分類された。ポアソン回帰を用いて,初回シリーズでのワクチンの種類(BNT162b2:ファイザー、またはmRNA-1273:モデルナ)別に、追加接種群と非追加接種群の感染と重症化の発生率比(IRR)を推計。共変量には、性別、人種、社会経済状態の指標となる住居形態、年齢層、2回目のワクチン接種日、調査期間中の感染力の変化を調整するための暦日別ダミー変数などが含まれていた。また、追加接種として同メーカーのワクチンを接種した人(同種接種)と異なるワクチンを接種した人(交互接種)のIRRも算出された。
主な結果は以下の通り。
- 70万3,209人の対象者のうち、調査期間中に57万6,132人が追加接種を受けた。
- 研究対象となったのは、追加接種群933万9,981人日、非追加接種群2,264万3,521人日だった。
- 人日別では、60~69歳が59%、70~79歳が29%、80歳以上が11%で、女性が53%を占めていた。
初回シリーズでファイザーを接種
- 非追加接種群で(100万人日当たり)感染:600.4件、重症化:20.5件。
- 追加接種での同種接種群で(100万人日当たり)感染:227.9件、重症化:1.4件、感染確定症例のIRR(非追加接種群を対照)は0.272(95%信頼区間[CI]:0.258~0.286)、重症例のIRRは0.047(95%CI:0.026~0.084)。
- 追加接種での交互接種群で(100万人日当たり)感染:147.9件、重症化:2.3件、感染確定症例のIRRは0.177(95%CI:0.138~0.227)、重症例のIRRは0.078(95%CI:0.011~0.560)。
初回シリーズでモデルナを接種
- 非追加接種群で(100万人日当たり)感染:507.0件、重症化:4.5件。
- 追加接種での同種接種群で(100万人日当たり)感染:133.9件、IRRは0.198(95%CI:0.144~0.271)。
- 追加接種での交互接種群で(100万人日当たり)感染:100.6件、IRRは0.140(95%CI:0.052~0.376)。
- 初回シリーズでモデルナの投与を受けた人の重症者数は少なく、IRRは評価されなかった。
著者らは、短い追跡期間、モデルナ投与後の感染数が少ないことなどの本研究における限界を挙げたうえで、交互接種は同種接種と比較してSARS-CoV-2感染率を低下させたとしている。本結果は、追加接種の推奨を支持し、また交互接種がCOVID-19に対するより大きな予防効果をもつ可能性を示唆しているとまとめている。