ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
〒152-003 目黒区碑文谷2丁目6-24
TEL.03‐5704‐0810
2021年01月号掲載
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この冬の新型コロナウイルス感染対策
情報に踊らされずに、冷静に判断しましょう

新聞を開いても、テレビのニュースも、ネットの記事も連日コロナ、コロナで気が滅入ってしまいますね。 感染者数といった事実だけでなく、何の見識もないコメンテーターが主観でいい加減な意見を吐いたり、専門家と称する方からもご自身のジャンルを超えた首を傾げたくなるような提言がなされたり、質の低い情報が多く出回っていて、本当に困ってしまいます。 ウイルス学の専門家、疫学の専門家、統計学の専門家、感染症学の専門家、呼吸器病学の専門家、経済学の専門家・・・それぞれの立場からの発言は間違ってはいないかもしれませんが、それらをまとめて「では、私はどうすればいいの?」ということなると、これは各自が自分の頭で考えて判断するしかないとおもいます。 当院の外来でも、患者さん方も混乱してるご様子ですので、これまでいただいた新型コロナ感染を巡るご質問への答えを交えながら、当院の対応方針をご紹介いたします。

感染者数の報道とは裏腹に、今年は例年の同時期よりも、発熱など、感冒症状で来院される患者さんは圧倒的に少ないです。 これぞ、マスク効果、ソーシャルディスタンス効果、そして早い時期に多く方がインフルエンザ予防接種を受けた影響がでているのかもしれません。ただし、冬ですのである程度は風邪の患者さんがいますし、コロナウイルスもいわゆる風邪のウイルスの一つですので、冬に感染者が増えることは仕方のないことですが、PCR検査数が圧倒的に増え、接触者など無症状者からも感染者を掘り起こしていることは、考慮すべきです。

Q. 私はコロナの検査を受けたほうがいいでしょうか?
A. 少なくとも、ご本人にとっては今は必要ない、とおもいますが、できるだけ他人との接触を避けて安静にしていてください。
Q. 私、コロナじゃないですよね?
A. わからないですが、少なくとも重症化するサインは出ていません。できるだけ他人との接触を避けて安静にしていてください。

当院では新型コロナウイルス感染かどうか?を診断するよりも、重症化するサインを見逃さないことを重視しています。万一新型コロナウイルス感染症であっても、多くの人は無症状~軽症で、重症化する例は稀です。 パルスオキシメーターで呼吸状態をチェックし、胸部レントゲン検査で肺炎を起こしてないか、採血検査で白血球数上昇など、重篤な感染状態を示していないか、もちろん年齢や糖尿病などの合併症を考慮して、必要であればPCR検査、抗原検査も行っています。 少しでも症状があれば、どんどん検査を行い感染者をみつけていくべき、という考えの医療機関もありますが、検査には偽陰性(実際かかっているけれど、陰性と判定される)も少なからずあるので、検査を受けることよりも、軽微でも症状があれば新型コロナ感染の可能性がある、という前提で自己隔離して安静に過ごすことのほうが、感染を広げないためには理にかなっているし、医療費もかからないと、私はおもいます。

Q. コロナではない、という診断書をください。
A. 検査が陰性、という診断書は書けますが、新型コロナ感染ではない、という診断はできません。偽陰性も少なからずありますし、検査を行ったあとに感染しているかもしれません。

PCR検査の結果が免罪符になることを危惧しています。偽陰性の問題、そして検査したその時点での結果でしかないからです。検査を受けに出かけて行って感染するリスクだってあるわけです。

Q. どうして自費のPCR検査の値段に差があるのですか?安いところは検査精度に問題がありますか?
A. 今、2,000円程度の検査専門の業者もあり驚いています。安くて検査時間の短い(検査機の回転率が上がる)検査法※を使ったり、唾液検査に特化し咽頭からの採取は行わない、PCR検査以外の検査を行わないことで検体の移送コストや設備費を削減しているのだとおもいますが、それにしても考えられない価格です。当院は検査会社への外注費とほぼ同額で行っていますが、それでも2万円代です。利益よりもシェアをとるための価格設定かもしれません。※スマートアンプ法の精度は、陽性一致率90%、陰性一致率100%(会社HPより)で、精度に問題はないようです。
Q. 保健所から自宅待機と言われたが、何かあったら心配です。どうしたらいいでしょう?
A. 新型コロナウイルスに感染しても、多くの方は無症状~軽症で、持病のない20代、30代の方が重症化することは極めてまれですので、心配なさらずに安静にお過ごしください。当院も電話は24時間つながるようにしてあります。
Q. 自宅待機や、ホテル待機の軽症者からも死亡が出たと報道され心配です。
A. 新型コロナ感染とは関係なく、ご自宅や宿泊先で突然死される方はいます。多くの場合は不整脈などの循環器疾患や脳血管障害で、何の持病がない方にも起こる可能性があります。したがって、新型コロナ感染で療養している方が突然死することも、当然あります。報道されるのは「軽症の新型コロナ感染で療養している方が亡くなった」ということだけで、コロナ感染が直接死因かどうかはわかりません。そして、後でコロナ以外の死因が判明しても、そのことは報道されません。いずれにせよ、特殊な例に心配するのではなく、多くの軽症者は安静にしていることで回復している、という分母をみましょう。

Q. もっとしっかり近づいて診察、説明してほしいです。
A. ごめんなさい、今は距離を置いた最小限の接触での診察をお願いしています。これは私が患者さんからうつりたくないから、だけでなく、もしかしたら私から患者さんに感染させてしまう可能性も否定できないからです。
Q. 先生はコロナは怖くないのですか?
A. 年齢的には重症化リスクがありますが、仕事なので仕方ありません。ただ危険業務ということがあらかじめわかっているので、対策を立て、それに沿った振る舞いを許していただいています。例えば高所の工事現場でお仕事される方々と一緒だとおもいます。
Q. 先生はどうしてかからないのですか?
A. すべての患者さんが新型コロナの可能性がある、という前提で、マスク、ゴーグルをつけた上で、距離を保って診察させていただいています。感染は飛沫吸引と、ウイルスの付着した手指で目や鼻腔口腔に触れることさえ気をつければ、ほとんど起こりません。物品を消毒するよりも、自分の手を洗う方が大事です。手指にウイルスが付着しただけでは感染しません。

今年の春からずっと、私は院内でも自宅でも常時他人との距離は保っていますし、飲食も一人でしています。旅行も無し、会議はほとんどがリモート、外食もまれで、移動は自転車で、バスや電車にはほとんど乗りません。

商売柄、私はこれで仕方がないとおもっていますが、みんながここまでストイックにすべきとは、実はおもっていません。

感染は飛沫吸引と、ウイルスの付着した手指で目や鼻腔口腔に触れることさえ気をつければ、ほとんど起こらないのですから、ここさえ気をつければ、旅行も会食も楽しんでいいとおもっています。 コロナ禍でも時間が止まって待っていてくれるわけではありません。人生の残り時間はこうしてる間にもどんどん失われ、老いは進んでいます。今しかできないことは、今しなくてはなりません。コロナを言い訳に怠けてしまうこともあるのでは?

すべての人が、何を犠牲にしても、コロナ対策を優先すべきとは、私にはおもえません。

Q. どこの開業医も空いてますが、医療は本当にひっ迫しているのでしょうか?
A. うちのような開業医はどこも例年の半分程度の患者さんの来院ですが、病院のコロナ病棟はたいへんな状況です。重症化(厚労省の定義では、人工呼吸器かECMO使用とICU入院。都の定義は人工呼吸器かECMO使用)した患者さんのケアには直接人員だけで患者数×3~4名が常時必要ですし、それを支えるスタッフまで入れると、たいへんな人数になります。だから一人重症者が増えただけでも大きな負担なのです。病室への出入り毎にガウンなどの感染防止対策を行わなくてはならないこともスタッフのストレスの原因になっています。
医療のひっ迫の状況として、病床の確保数、利用率が報道されますが、多くの病院ではベッドを空けて、スタッフを黙って待機させているわけではなく、他の重症患者の病床を転用、スタッフの他部署からの転換ができるような状態にして確保しているので、利用可能ベッドに余裕があっても、病院スタッフの日常業務は減らないのです。

多くの感染者は無症状~軽症は間違いなく、重症化率も下がっている、すなわち分母が大きく、分子は極めて小さいという状況なのですが、その少ない分子(重症者)の絶対数が少し増えるだけでも、コロナ病棟はひっ迫するのです。

新型コロナ対策においては、重症者を増やさないことが一番大切だと私はおもっています。 重症化する因子は年齢と持病であり、これは感染する前から各自がわかっていることです。 高齢者、持病のある方は、まずはインフルエンザ予防接種、肺炎球菌予防接種を必ず受けて、重症化の要因となる持病の治療はしっかり行う。

そして常に他人との距離を置いて生活し、手指の洗浄、消毒をこまめに行い、不潔な手で目や鼻腔口腔を触らない注意をお願いします。

恐怖と差別は無知が原因です。知識を持って、冷静にこの困難を乗り切りましょう。

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