ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
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2019年12月号掲載
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肉と魚、そして海藻も

ベジタリアンは肉食より脳卒中リスク増

魚食や菜食主義(ベジタリアン)の人は、肉食の人と比較して虚血性心疾患の発生率は低かったが、ベジタリアンでは脳出血および全脳卒中の発生率が高いことが示された。英国・オックスフォード大学のTammy Y N Tong氏らが、ベジタリアンと虚血性心疾患および脳卒中との関連を調査した前向きコホート研究「EPIC-Oxford研究」の18年を超える追跡調査結果を報告した。これまでの研究では、ベジタリアンが非ベジタリアンより虚血性心疾患のリスクが低いことは報告されていたが、利用可能なデータが限られており、脳卒中に関するエビデンスは十分ではなかった。 "BMJ誌2019年9月4日号掲載の報告"

約5万人を18年以上追跡、肉食・魚食・菜食群に分け心血管疾患の発生を調査 研究グループは、1993~2001年に虚血性心疾患、脳卒中、狭心症または心血管疾患の既往がない4万8,188例を登録し、ベースラインとその後2010~13年に収集された食事の情報に基づいて、肉食群(魚、乳製品、卵を消費するかどうかにかかわらず肉を食べる人:2万4,428例)、魚食群(魚は食べるが肉は食べない人:7,506例)、菜食群(ヴィーガンを含むベジタリアン:1万6,254例)に分類し、追跡調査した。ベースラインとその後の2010年頃(平均追跡期間14年後)の両方で食事に関する報告があったのは2万8,364例であった。

主要評価項目は、2016年までの英国医療サービスの関連記録から特定された虚血性心疾患および脳卒中(脳梗塞、脳出血)の発生とし、Cox比例ハザードモデル、Wald検定を用いて解析した。

脳卒中、肉食群に比べ菜食群で20%増加

18.1年以上の追跡調査の結果、虚血性心疾患2,820例、全脳卒中1,072例(脳梗塞519例、脳出血300例)が確認された。社会人口学的および生活習慣の交絡因子を調整後、魚食群および菜食群の虚血性心疾患の発生は、肉食群と比較してそれぞれ13%(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.77~0.99)および22%(HR:0.78、95%CI:0.70~0.87)低下した(異質性のp<0.001)。この差は、虚血性心疾患の発生が肉食群よりも菜食群において、10年以上で1,000人当たり10症例(95%CI:6.7~13.1)少ないことに相当した。虚血性心疾患との関連性は、自己報告による高コレステロール、高血圧、糖尿病、BMIで調整すると、部分的に減弱した(菜食群のHR:0.90、95%CI:0.81~1.00)。

一方、菜食群では、全脳卒中の発生が肉食群より20%増加した(HR:1.20、95%CI:1.02~1.40)。これは、10年以上で1,000人当たり3症例多いことに相当し、大部分は脳出血の増加によるもので、脳卒中との関連性は疾患リスク因子を調整しても減弱しなかった。 なお、著者は研究の限界として、スタチンなどの薬物療法に関する情報が利用できなかったこと、食事や食事以外に関する交絡因子の可能性、対象者の多くが欧州の白人であり一般化できるかは限定的であることなどを挙げている。 "原著論文:Tong TYN, et al. BMJ. 2019;366:l4897."

高齢者における魚摂取量と認知症発症リスクの関連 ~ 大崎コホート2006 ~

魚類は、認知機能低下を予防する多くの栄養素を含んでいる。したがって、習慣的な魚類の摂取は、認知症発症リスクの低下に寄与する可能性が示唆されている。しかし、認知症発症と魚類の摂取を調査したプロスペクティブコホート研究は少なく、それらの調査結果は一貫していない。東北大学の靏蒔 望氏らは、魚類の摂取量と認知症発症リスクを評価するため、大崎コホート研究のデータを用いて検討を行った。

ベースライン時に65歳以上であった大崎市在住の住民を対象に、食物頻度アンケートを実施し、魚類やその他の食物摂取に関するデータを収集した。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定には、多変量調整Coxモデルを用いた。魚類の摂取量を四分位に分け、最も少ない群をQ1、最も多い群をQ4とし、Q1を基準に認知症発症リスクを検討した。

主な結果は以下のとおり。

著者らは「健康な高齢者において、魚類の摂取量が多いと認知症発症リスクが低いことが認められた。本知見は、習慣的な魚類の摂取が、認知症予防に有益であることを示唆している」としている。 "原著論文:Tsurumaki N, et al. Br J Nutr. 2019 Sep 3. [Epub ahead of print]"

海藻食べると心筋梗塞リスク低下 [8万人を20年調査]

ワカメやコンブなどの海藻を食べると、心筋梗塞(こうそく)などの虚血性心疾患になるリスクが低くなるという研究結果を、国立がん研究センターや筑波大のチームがまとめた。海藻に含まれる食物繊維やたんぱく質が影響している可能性があるという。

チームは1990年代以降、岩手や沖縄など9県に住む40~69歳の男女約8万6千人(男性4万707人、女性4万5406人)を追跡調査。食事に関する調査に協力してもらい、20年間の健康状態を調べた。

海藻を食べる頻度を「ほとんど食べない」「週1~2日」「週3~4日」「ほとんど毎日」の4群から選んでもらった。食べる量は聞いていない。20年間に1204人が虚血性心疾患になり、生活習慣やほかの食べ物などの影響をのぞいて分析すると、男女ともに海藻を食べる頻度が高いほど、虚血性心疾患になるリスクは低くなった。

「ほとんど毎日」の群は、「ほとんど食べない」の群に比べてリスクが男性は0・8倍、女性は0・6倍に低くなった。チームは男女差について「大きな差ではない」とみているという。

動物の研究では、海藻に含まれる食物繊維が脂質代謝を改善し、たんぱく質が血圧を下げる作用があると報告されている。チームの山岸良匡(かずまさ)・筑波大教授(社会健康医学)は「人でも、海藻の摂取が虚血性心疾患になるリスクを下げることがわかった。海藻は日本人になじみ深い食材だ。さらに調べることで、生活習慣病予防につなげられる可能性がある」と話す。
"原著論文:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31518387"

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