猫とジュースと朝ごはん 最近の医学論文より
最近の医学論文から、私たちの生活習慣と死亡リスクに関連するものを集めてみました。
朝食抜きと遅い夕食の2つの食習慣の組み合わせが死亡リスクになる?
私のこと?とおもわれている方も多いはず。
でもこれは、心筋梗塞でカテーテル治療を受けた患者さんの食習慣と退院後の死亡や再発リスクを検討した研究で、健常人を対象としたものではありません。
ただし、このような食生活が循環器疾患のリスクになりそうなことは、容易に想像がつきますね。
ブラジル・Universidade Estadual Paulista、Botucatu Medical SchoolのMarcos Ferreira Minicucciは、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者を対象に前向き観察研究を行った。
対象は、2017年8月~18年8月にSTEMIと診断され、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた18歳以上の入院患者113例。精神状態の変化が認められたり、人工呼吸器を要したりする患者は除外した。朝食抜きは起床から昼食までに飲料を含め何も摂取していないこと、遅い夕食は就寝前2時間以内の食事摂取とし、それぞれ週3回以上を食習慣の条件とした。主要複合エンドポイントは、退院後30日以内における死亡、心筋梗塞の再発、狭心症の発症とした。
「朝食抜き+遅い夕食」で死亡、心筋梗塞再発、狭心症が4~5倍に
113例の年齢は59.9歳(中央値)、男性73例。主要複合エンドポイントの発生は26例(23.0%)で、発生率は死亡が5.3%、心筋梗塞の再発または狭心症の発症が17.7%であった。これらの患者では、総コレステロールおよびLDLコレステロール(LDL-C)がいずれも低値で、左室拡張終末期径(LVDd)拡大の重症度が高かった。一方、食習慣については、朝食抜きが57.5%、遅い夕食が51.3%、2つの食習慣がともに認められた患者は40.7%であった。
多重ロジスティック回帰分析を用いて、年齢、性、CK-MB、左室駆出率で補正した朝食抜きと遅い夕食の2つの食習慣による複合エンドポイントのリスクを検討した。その結果、オッズ比(OR)は4.2(95%CI 1.6~11.2、P=0.004)と、複合エンドポイントのリスクは有意に4倍超高かった。さらに喫煙、LDL-C、LVDdで補正したところ、ORは5.1(同1.7~15.0、P=0.004)と、有意な上昇が確認された。
Minicucci氏らは「朝食抜きと遅い夕食という2つの食習慣の組み合わせは、STEMIで入院してPCIを施行した患者の退院後30日以内における死亡、心筋梗塞の再発、狭心症の発症リスクを4~5倍上昇させることと関連していた」と結論した。
原著論文:Eur J Prev Cardiol(2019年4月17日オンライン版)
砂糖入り飲料の消費は、全がんおよび乳がんのリスクを増加させ、100%果物ジュースも全がんのリスクと関連?
砂糖入り飲料が体に悪いことは想像がつきますが、100%ジュースも危ないのです。どちらも糖分の吸収が早く血糖値を急上昇させ、肥満の原因となります。そして肥満は多くのがんの強力なリスク因子であることがわかっています。
フランス・パリ第13大学のEloi Chazelas氏らの研究グループは、100%果物ジュースを含む砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料と、がんのリスクとの関連の評価を目的とする住民ベースの前向きコホート研究を行った(フランス保健省などの助成による)。
解析には、フランスで2009年にWebベースで登録が開始されたNutriNet-Santeコホートの2018年までのデータ(10万1,257例)を用いた。
砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料の消費の評価には、3,300項目の食品および飲料に関して、参加者の日常的な消費状況が記録されるようデザインされた反復的4時間食事記録法を用いた。飲料のタイプごとに、男女別の消費量をそれぞれ4段階に分けて解析した。
主要アウトカムは、飲料の消費と全がん、乳がん、前立腺がん、大腸がんの関連とした。競合リスクを考慮し、多変量で補正したFineとGrayのハザードモデルを用いて評価を行い、部分分布のハザード比(HR)を算出した。
10万1,257例(平均年齢42.2[SD 14.4]歳)のうち、女性が7万9,724例(78.7%)を占め、男性は2万1,533例(21.3%)であった。飲料のタイプ別の割合は、砂糖入り飲料(100%果物ジュースを除く)が36%、100%果物ジュースが45%で、人工甘味料入り飲料は19%だった。
追跡期間中央値5.1年(49万3,884人年)の間に、2,193例が初発のがんを発症した。内訳は、乳がんが693例(閉経前283例、閉経後410例)、前立腺がんが291例、大腸がんは166例で、診断時の平均年齢は58.5±12.0歳だった。
砂糖入り飲料の消費は、全がん(消費量100mL/日増加の部分分布HR:1.18、95%信頼区間[CI]:1.10~1.27、p<0.001)および乳がん(1.22、1.07~1.39、p=0.004)のリスクと有意な関連が認められた。乳がんは、閉経前(p=0.02)が閉経後(p=0.07)よりも関連性が明確であったが、砂糖入り飲料の消費量中央値は、閉経期88.2mL/日)のほうが閉経前(43.2mL/日)に比べ多かった。
砂糖入り飲料の消費は、前立腺がんおよび大腸がんとは関連がなかった。また、肺がんにも関連は認めなかったが(p=0.1)、統計学的検出力がきわめて低かった。
人工甘味料入り飲料の消費は、がんのリスクとは関連しなかったが、全サンプルに占める消費の割合が相対的に低かったことから、統計学的検出力が不十分であった可能性がある。
サブ解析では、100%果物ジュースの消費は全がん(消費量100mL/日増加の部分分布HR:1.12、95%CI:1.03~1.23、p=0.007)のリスクと有意な関連を示した。
著者は、「これらの結果は、他の大規模な前向き研究で再現性を検証する必要がある」とし、「欧米諸国で広く消費されている砂糖入り飲料は、がん予防における修正可能なリスク因子である可能性が示唆される」と指摘している。
原著論文:Chazelas E, et al. BMJ. 2019;366:l2408.
猫を飼うのが女性の死亡リスクを高める?
猫を飼っている女性の肺がん死亡リスクが高いとは、驚きの報告です。禁煙に続いて禁描時代が来るのでしょうか?
米国ジョージアサザン大学のAtin Adhikari氏らは、米国の全国コホートにおける18年間の追跡調査で、ネコを飼っている女性は飼っていない女性に比べ、肺がん死亡率が2.85倍と有意に高かったことを報告した。ペットによるこの影響は、喫煙やアトピー性疾患の交絡によって説明されないという。
この研究の対象は、1988~94年の米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)IIIにおいて、ペット所有に関する質問に回答した19歳以上の1万3,725人で、2010年12月31日まで追跡調査を行った。
主な結果は以下のとおり。
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対象者の約43%がペットを飼っており、20.4%がネコ、4.6%が鳥を飼っていた。
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18万3,094人年(unweighted)の追跡期間中に肺がんで213人死亡し、肺がん特異的死亡率は1,000人年当たり1.00であった。
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喫煙・飲酒・身体活動・BMI・アトピー性疾患歴・血清中コチニンについて調整後、女性では、ペット所有者は非所有者に比べて、肺がん死亡率が2倍以上であった(ハザード比[HR]:2.31、95%信頼区間:1.41~3.79)。ペット別のHRは、ネコが2.85(1.62~5.01)、鳥が2.67(0.68~10.5)、イヌが1.01(0.57~1.77)で、ネコおよび鳥の所有がこの関連に大きく起因していた。
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男性では、ペットの有無やペットの種類にかかわらず、有意な関連はみられなかった。
原著論文:Adhikari A, et al. Environ Res. 2019;173:379-386. [Epub ahead of print]
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