変形性膝関節症の治療にヒアルロン酸関節内注射
膝関節は大腿骨と脛骨のつなぎ目にある関節で、大腿骨側が凸、脛骨側が凹の組み合わせで、関節が滑らかに動くように、2つの骨の接する面は硝子軟骨でできていて、骨の間にはクッションの役割をする半月板があり、関節の中は潤滑剤の役割をする関節液で満たされています。
硝子軟骨が摩耗して、硬い骨が直接接するようになり、炎症を繰り返すことで変形し、慢性的な痛みや歩行困難をきたした状態が、変形性関節症です。
変形性関節症は、人間は二足歩行を始めてしまったために、左右一対の膝関節に膝から上の体重が全部掛かることによる、宿命的な病気と言えます。
加齢により硝子軟骨は摩耗していき、関節液も減少します。半月板も一度損傷すると再生しません。
高齢者の変形性関節症は、寿命の延長による長期間の荷重によって、膝関節が耐用限界を超えた状態になっていることが最大の原因です。
変形性関節症の主な治療方法
【歩行補助具の使用】
歩行補助具の使用により、二足歩行によってかかる荷重を分散することができ、関節の負担を軽減することができます。日本整形外科学会も推奨度※Aとしています。
推奨度
- A : 行うように強く推奨する
- B : 行うよう推奨する
- C : 行うことを考慮してよい
- D : 推奨しない
- I : 委員会の設定した基準を満たすエビデンスがない。あるいは複数のエビデンスがあるが結論が一様でない
【経口消炎鎮痛剤】
痛み止めを飲む治療です。軽度のもので、痛み止めを飲むことで日常生活上の制限が減少する方にはよい適応です。消化器系への副作用の少ない痛み止めも出ておりますし、痛いときだけ飲むこともできます。整形外科学会の推奨度Aです。
【経皮的消炎鎮痛剤】
湿布薬や塗り薬です。かぶれなどの副作用もあることや、経口薬よりも吸収がよくないことから、日本整形外科学会は、経口薬の代替治療と位置付けており、推奨度Bです。
【ステロイド膝関節内注射】
経口鎮痛薬・抗炎症薬が十分に奏効しない中等度~重度の疼痛がある場合,および滲出液などの局所炎症はある場合に考慮、日本整形外科学会の推奨度はCです。
【人工膝関節置換術】
鎮痛剤治療などでコントロールできない場合は、適応になります。日本整形外科学会の推奨度はAです。
【グルコサミン・コンドロイチン】
健康食品などでよくみかけますし、実際続けてよくなったという方もいらっしゃるのですが、グルコサミン、コンドロイチンも高分子物質なので、口から服用して、そのまま膝に届くわけではないので、軟骨の保護効果はありません。科学的な検証が行われていない治療法なので、日本整形外科学会の推奨度はIです。
ヒアルロン酸関節内注射
ヒアルロン酸関節注射は、ステロイド注射に比較して、その作用発現は遅いが、症状緩和作用は長く持続することが特徴で、日本整形外科学会の推奨度はBとしています。
ヒアルロン酸は、関節の中を満たしている関節液に含まれている物質で、関節を動かす際の潤滑液とクッションの役割を果たしています。
変形性膝関節症では、膝関節内のヒアルロン酸が炎症によって分解され、濃度が低下しています。結果、骨が直接きしむようにこすれ合うことで、炎症を起こし、さらにヒアルロン酸が減少するという悪循環に陥っています。 このような状態の膝関節に、注射でヒアルロン酸を補充することで、関節液がクッションの働きを取り戻すため、膝の痛みが和らけることができます。
ヒアルロン酸関節内注射の方法
ベッドに横になり、膝の消毒後、関節内に注射します。膝に水がたまっている場合は、水を抜いてから注射します。およそ10分程度の短時間の治療です。初回は注射後、具合が悪くならないか15分ほど様子を見て、問題なければ治療終了です。
膝関節へのヒアルロン酸注射は、週1回の治療を3~5週間ほど続け、効果に応じて2~4週間に1回のペースで行うのが一般的です。保険診療の場合、週1回までというのが原則となります。
ヒアルロン酸注射のメリット
膝の痛みが和らぐ
ヒアルロン酸を直接補充する治療法なので、膝関節への負担は軽減され、痛みが和らぎます。また、ヒアルロン酸には抗炎症作用があると言われており、それによっても痛みに対して効果が得られます。
膝が滑らかに動く
注射することで膝関節内の動きも滑らかになり、動かしやすさを感じることができます。
痛みが少ない
痛みの感度には個人差がありますが、一般的な注射と同程度の痛みです。針も普通の注射針と同じ太さです。
すぐ日常生活に戻れる
外来治療で、治療後の痛みも少ないので、生活の制限がありません。
副作用のリスクが低い
ヒアルロン酸はもともと体内に存在する成分なので、アレルギーを起こしにくいというメリットがあります。
他の治療と併用できる
痛み止めの飲み薬や湿布薬と併用ができるので、相乗効果が期待できます。
ヒアルロン酸注射のデメリット
効果が短期間
注射されたヒアルロン酸は体内に吸収されてしまうため、疼痛緩和の効果はそれほど長く続きません。
定期的な通院が必要
効果の持続期間が短いため、頻回に通院の必要があります。
慢性的な膝痛には不向き
初期の変形性膝関節症の膝痛緩和には効果を発揮しますが、症状が進行している膝関節では効き目がでないことがあります。
痛みと感染のリスク
関節内に注入するには技術を要します。もしヒアルロン酸が関節にうまく入らなかった場合には激痛を伴うことがあります。また注射によって皮膚の菌が関節内に入ってしまった場合には関節炎をおこすことがあります。
膝関節が元に戻るわけではない。
ヒアルロン酸注射によって、すでにすり減った骨や軟骨が修復されるわけではないので、いくら続けても膝関節を元の状態に戻すことはできません。
当院では「ヒアルロン酸関節内注射」を随時実施しております。
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