帯状疱疹はワクチンで予防できます
帯状疱疹の患者さんが増えています。 帯状疱疹は過去に感染した水痘(みずぼうそう)ウイルスが再活性化することで起こります。 年齢とともに免疫を記憶したリンパ球が減ることで、再活性化したウイルスを抑えきれなくなることで、発症します。 昔は水痘に罹った子供や孫が周囲にいることで、免疫が刺激される機会があったのですが、核家族化、一人暮らしの増加、高齢化、そして小児の水痘ワクチンの公費定期接種が実施されたことで、水痘に罹る子供が減り、逆に水痘ウイルスに対する免疫記憶が落ちた高齢者が増えたことが、帯状疱疹の増加の原因と考えられています。 (私見ですが、みずぼうそうの子供に接する機会の多い医療従事者には、帯状疱疹は少ない印象があります) そのような状況で、厚生労働省は、水痘ワクチンの効果・効能に「50歳以上の帯状疱疹の予防」の追加を承認しました。 水痘ワクチンは、弱毒化した水痘ウイルス接種する生ワクチンです。 毒性を低くしたウイルスを体内に入れることで、忘れかけていた免疫記憶をおもいださせて、再活性化した水痘ウイルスを抑え込むというわけです。 効果は10年ほど持続し、厚労省の承認が得られたことで、万一ワクチン接種により健康被害が生じた場合、公的な救済措置の対象となります。
潜伏感染と再活性化
帯状疱疹(たいじょうほうしん)は水痘・帯状疱疹ウィルスの感染が原因で起こります。 水痘・帯状疱疹ウィルスの初感染の多くは小児期に起こり、水痘(みずぼうそう)として発症します。 ウィルスは水痘が治癒した後も、脊髄後根神経節に入り、長期に渡り潜伏しています。 そして、加齢の進行やストレス・疲労などで一時的に免疫力が低下したときに、潜伏したウイルスの再活性化が起こり帯状疱疹として回帰発症します。 神経に沿ってウィルスが増殖するため、帯状に水ほうが皮膚面に広がるため、帯状疱疹と呼ばれています。
年齢別患者数
年齢・性別患者数は、20歳代前後で小さなピークがあり、50歳以降に罹患患者数の大きなピークが見られます。
発症部位別患者数
上肢から胸背部、腹背部の胸神経領域部が最も多い発症部位です。また、頭部から顔部の三叉神経領域も好発部位です。
帯状疱疹の一般経過
帯状疱疹の一般経過は、紅斑や丘疹などの皮膚症状が現れる前に、皮膚に痛みや違和感が先行して現れます。やがて体の片側に水疱や膿疱が帯状に現われ、激しい痛みを伴うのが特徴です。皮膚症状はびらん、潰瘍、痂皮を経て、3週間ぐらいで治りますが、痛みはその後も帯状疱疹後神経痛として残る場合があります。
治療の基本は抗ヘルペスウイルス薬
治療は、抗ヘルペスウイルス薬を中心に行われます。抗ヘルペスウイルス薬はウイルスの増殖を抑えることにより、急性期の皮膚症状や痛みなどをやわらげ、治るまでの期間を短縮します。さらに合併症や後遺症を抑えることも期待されます。また、必要に応じて、消炎鎮痛薬が使われたり、痛みに対して神経ブロックが行われることがあります。
抗ヘルペスウイルス薬による治療に際して
- 抗ヘルペスウイルス薬の飲み薬は、効果があらわれるまでに2日程度かかる。
- 服用してすぐに効果があらわれないからといって、服用量を増やしたり、途中でやめたりしないように指導する。
- 抗ヘルペスウイルス薬は、発病早期に服用を開始するほど、治療効果が期待できる。
- 帯状疱疹の特徴的な症状を自覚したら、できる限り早く医師に相談するよう指導する。
<補足> 抗ヘルペスウイルス薬は、ウイルスそのものを破壊するのではなく、ウイルスの増殖を抑制するため、効果発現までに2日程度かかります。
日常生活の注意
- できるだけ安静にする
帯状疱疹は過労やストレスが原因となり、免疫力が低下したときに発症する。十分な睡眠と栄養をとり、精神的・肉体的な安静を心がけることが回復への近道である。
- 患部を冷やさないようにする
患部が冷えると痛みがひどくなる。患部は冷やさずに、できるだけ温めて血行をよくする。ただし、使い捨てカイロや温シップ薬は、やけどやかぶれに注意して使う。
- 水ぶくれは破らないように気をつける
水ぶくれが破れると、細菌による感染が起こりやすくなる。細菌による化膿を防ぐためにも、患部は触らないようにする。
- 小さな子どもとの接触は控える
帯状疱疹が他の人にうつることはないが、水ぼうそうにかかったことのない乳幼児には水ぼうそうを発症させる可能性がある。
がんが隠れていることがあります!
がんによる免疫低下も帯状疱疹の原因になります。 帯状疱疹をきっかけに、がんがみつかることは珍しくありません。 皮膚以外に調子の悪いところがあれば、必ずお申し出ください。
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