ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
〒152-003 目黒区碑文谷2丁目6-24
TEL.03‐5704‐0810
2017年05月号掲載
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NASHって何?
非アルコール性脂肪肝炎について

脂肪肝が最近注目されています

肝臓内に中性脂肪の貯まった状態を脂肪肝といいますが、アルコールをほとんど飲まない人に起こる脂肪肝を非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)と呼んでいます(国内に約1,000万人と推定)。

NAFLDは進行せず良性の経過をたどる単純性脂肪肝と肝硬変、肝癌へと進行する可能性のある非アルコール性脂肪肝炎 (nonalcoholic steatohepatitis:NASH)(ナッシュと呼びます)が存在します。NASHは国内に約100~200万人も存在すると推定されています。

NASHの原因は?

  1. 肥満 (内臓脂肪蓄積)
  2. 糖尿病
  3. 脂質異常症
  4. 高血圧症
  5. 急激な体重減少や急性飢餓状態
  6. 薬剤 (タモキシフェン, ステロイド,アミオダロンなど)
  7. 完全静脈栄養

などが考えられています。

肥満と糖尿病は肝癌の発症の危険因子

米国の約40万人の男性のデータから、肥満は肝癌の危険因子となることが報告されました。

日本人の糖尿病患者18,385例の死因を調査した報告が日本糖尿病学会から発表され、糖尿病患者の8.6%が肝癌で、4.7%が肝硬変で死亡していることが分かりました。併せると13.3%が肝疾患で死亡していることになり、これらの中にはNASHが原因となっている例が存在すると推察されています。

肝炎ウイルスに感染していない肝癌患者が増加している

これまで肝癌の発生の多くはB型肝炎やC型肝炎ウイルスに感染している患者さんはが90%程度を占めてきましたが、近年肝炎ウイルスに感染していない肝癌患者が増加傾向にあります。これらの原因としてNASH由来の肝癌が疑われています。

NASHの症状は?

NASHは、脂肪肝と同じく自覚できる症状はほとんどありません。

NASHの診断

アルコールと関係の無い肝障害であること、また、他の慢性肝疾患が否定できることが必要条件となります。 まず、超音波またはCTで脂肪肝の診断をします。

脂肪肝炎があるかどうかは、肝臓の組織をとってみないとわかりませんが、肝生検は入院が必要で、出血、肝損傷等のリスクを伴う検査なので、脂肪肝の患者さん全員に行うことは、現実的ではありません。

まずは肥満の人では減量をして、血液の検査が良くなるかどうかを見ます。 良くなれば、そのまま経過観察とします。 良くならなければ、 NASH の疑いが強くなり、肝生検をして NASH かどうかを調べます。血液検査も診断の参考になります。脂肪肝は、ALT(GPT)がAST(GOT)より高く、コリンエステラーゼも高い。 空腹時血糖、中性脂肪、コレステロール、尿酸が高い。 これがNASH になり、線維化が進んでくると、AST(GOT)がALT(GPT)より高くなってきます。

単純脂肪肝よりもNASHを疑う血液検査所見として上記の点数を合計して2点以上であればNASHの可能性が極めて高くなります。

0点ではNASHの可能性は低いと考えます。しかし、正確な診断には肝生検が必須です。

(日本国内の9施設の共同研究結果より. Sumida Yet. J Gastroenterol 2011)

NASHの治療

脂肪性肝炎の治療では、脂肪肝と同じくライフスタイルの見直しが必要です。NASHの治療は低カロリーで栄養バランスのよい食事を心がけ、適度な運動を取り入れます。肝臓に炎症や線維化がみられるNASHは、そのまま放置すると悪化する恐れがあり、注意が必要です。ライフスタイルを改めることで、原因となる肥満や糖尿病を改善します。なお、ライフスタイルを改めても肝機能異常が治らない場合は、薬物療法も検討します。

ライフスタイルの見直し

バランスの良い食事

定期的な適度の運動

十分な休養と睡眠

現在のところ確立された薬物療法は存在しませんが、病態に応じて下記のような治療法が行われています。

  1. 抗酸化剤:ビタミンE、C
  2. 尿病治療薬:チアゾリジン系薬剤、ビグアナイド系薬剤、シダグリプチン
  3. 質異常症治療薬:フィブレート系薬剤、エゼチミブ、EPLなど
  4. 肝庇護剤:ウルソ、グリチルリチンなど

除鉄療法

NASHでは過剰な鉄は肝臓に負担を掛けますので、鉄を減らすことが重要です。

  1. 瀉血療法:1回に200~400mlの血液を2週ごとに抜きます。
  2. 鉄制限食: 1日の食事中の鉄を6-7mg以下にします。

外科的治療

  1. 減量手術
  2. 肝移植

健康診断で肝機能障害があっても、腹部エコーで脂肪肝を指摘されても、自覚症状がないため放置するケースが多くあります。アルコール性の場合は勿論ですが、アルコールを飲まない人も、検査結果を侮ることなく、また自覚症状に惑わされることなく、放置せずに医療機関を受診し、治療を受けることが必要です。

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