令和元年度 ひもんや俳壇賞
2020年1月号
令和元年度
ひもんや俳壇賞
黒澤三主寿 選
※「ミモザ会」は特別作品として選外とさせていただきました
大賞
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芍薬のくれなゐの芽の固きこと苅野 節子冬の間何もなかったところに、真紅の芽が群がり出ていた。「あ、芍薬。」と思わず触れて、その固さに対する小さな驚き。「芽の固きこと」で意外性がはっきりと出ていて、よろこびも伝わって来ました。
次席
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食卓の今日の主役は花菜漬譲原 節子京土産かも、いや御自分で漬けられたも知れません。とにかく食卓にどんと花菜漬を出されたのでしょう。そのおいしいこと。これは確かに主役です。
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田の風へ開け放ちたる夏座敷仲島 信広い夏座敷である。古い農家かも知れない。見渡す限りのたんぼを渡ってくる風に戸を開け放つ。想像するだけでもいゝ気持です。
ひもんや診療所・院長賞
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皺増やし褒められてゐる干大根畑山 則子増えて嫌われる皺ではあるが、干大根となれば別。おいしい沢庵になるためにはこの皺が大事。たくさん皺が出来て褒められているのがほほえましい。
秀作
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御即位のオープンカーや菊日和安達久美子
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青空を分け紅梅と白梅と川部 義明
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山百合のヘッドライトに浮びくる苅野 玲子
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浴衣着てのりの固さに母恋うる佐藤加代子
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機長より案内のあり皐月富士渡辺 幸江
佳作
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冬紅葉美し行幸の深大寺滝口 智子
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梅雨晴や優先順位あれやこれ富所 敬子
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顔見世の招き揚がりて京の川戸上 和
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流れ行く形さまざま秋の雲村上 允子
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ねぶた出陣作る引く観るみな主役木村 遊風
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萩の花区の花として配らるゝ安藤 虎雄
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歓声の風に乗りくる運動会鈴木恵美子
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女医若しカルテの横に紙雛吉田 新子
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ほととぎす次の一ト声待つしじま藤田 静枝
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年迎ふ母の齢を一つ越え中村 常子
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味噌餡が残ってをりし柏餅小林 智子
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声かけて明るき返事春隣三浦 絢子
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返却の日数や灯火親しめり千葉ゆり子