ひもんや俳壇平成二十六年度
2015年1月号
平成二十六年度
ひもんや俳壇賞
黒澤三主寿 選
※「ミモザ会」は特別作品として選外とさせていただきました
大賞
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鳥帰る被災の人も帰りたし久保田光江東日本大震災から間もなく四年。掛替えのない故郷を離れ、いまだに仮設住宅での生活を余儀なくされていられるたくさんの方々。春になって鳥は北方へ帰って行くのにと思いひとしおの作者のやさしさが伝わってきます。
次席
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四半世紀経て平成の年新た飯田久美子新しい年を迎えての句である。年号が平成に変わって、今年は二十六年。あっと言う間に四半世紀が過ぎたことに、感慨無量のお正月となった。
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台風や父の足音待ちし日も中村 常子激しい台風の夜、家族で心配しながら父の帰りを待っていたあの頃。卓袱台を囲んでいた、懐かしい昭和の時代が目に浮かんでくる句。
ひもんや診療所・院長賞
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草餠の皮の厚めも亡母の味富所 敬子昔は何でも手作りだった。草餠も母のは皮も厚めで、少しいびつ。そしてそれが何とも言えぬ母の味なのだ。今ではそれが懐かしい。
秀作
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猛暑にも負けず米寿を迎へけり安藤 虎雄
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譲られし席のぬくもり梅雨の旅鈴木恵美子
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駅の名の変り戸惑ふ業平忌吉田 新子
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手花火の玉のとろりと落ちにけり石井 昭子
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剪定の鋏の音に迷ひなし苅野 節子
佳作
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色鳥にしばし掃く手を休ませて戸田 徳子
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秋深し古きアルバムまた繰りて畔柳 葉子
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満開の花のトンネル雨こぼす滝口 智子
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物足らぬ風にすねてか鯉幟新田はるゑ
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真冬には花が少なくさみしいな森丘 裕子
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かんさつ日記くいしんぼうの夏蚕飼ふきりいのぞみ
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ふんわりとねぎらふごとく春の雪畑山 則子
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宇宙よりお年賀のやう初日の出小澤孝ん子
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赤門の朱のきはだつ夏木立柴崎 英子
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朧月語り尽くせぬまゝ別れ廣門登喜子
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初電話華やぐ部屋の声届く森崎 富貴
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蝶の来て庭の広さを計りけり佐々木 弘
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若き日の大志はいづこ秋立ちぬ川部 義明
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木の芽吹き産着に覗くややの指仲島 信
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子雀の声を消したる俄雨藤田 静枝
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頬叩く春一番と思ひけり滝口ふじ子
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真新しい制服に花吹雪かな服部嘉奈子
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炎天の影曳き急ぐ乳母車市川須美子
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外灯のはや灯りたる秋夕べ譲原 節子
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はらはらと渓に呑まれて散紅葉苅野 玲子
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隙間風小言までもが割り込んで渡辺 幸江
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道沿ひにゼブラ模様の残り雪千葉ゆり子
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善と悪鬩ぎ合ひして大ねぷた安達久美子