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2009年07月号掲載記事

胃の不調と漢方

「胃がもたれる」「食欲がない」というようなとき、市販の薬に頼る人は多いものです。企業で働く20歳以上の男女約500人に対して行われた調査によると、胃腸の調子が悪いときに使う市販薬として最も多いのは「総合胃腸薬」でした。次いで「漢方胃腸薬」でした。このように胃腸の調子がよくないときに、漢方薬を使うという人は多いのです。その「漢方胃腸薬」の代表薬は次のとおりです。

代表的な市販の漢方胃腸薬

  • 大正漢方胃腸薬   → 安中散 + 薬甘草湯
  • 太田漢方胃腸薬供、 安中散 + 茯苓
  • 武田漢方胃腸薬A  → 安中散

このように安中散がよく配合されています。この安中散の"中"という字は漢方ではある意味をもちます。漢方では体を"上""中""下"に分けて考えます。その"中"は体の真中の部分、つまり消化器の部分を指します。だから安中散は消化器を安らげる、つまり胃腸を安らかにするお薬であると考えられます。胃腸の症状のなかでも安中散は胃の痛みに対してより効果あると考えられています。しかし、市販薬だけでなく、医師の処方する薬にも胃の不調に対する漢方薬があります。

当院では体質によって漢方薬を使い分けています

漢方では、その人の体質や全身的な状態を「証」といい、「証」に応じて漢方薬を使い分けます。その基本となるのが、体質を「実証」と「虚証」に分けて考える「虚実」の概念です。

「実証」は体力があり、胃腸も丈夫なタイプですが、無理がきくだけに、過食から生活習慣病になりやすい傾向があります。 一方「虚証」は体力がなく、胃腸が弱いタイプで、慢性的な体の不調に悩む人が多いのが特徴です。

その体質からみた漢方薬の使い分けは

  • 胃もたれ、食欲不振の第一選択薬 → 六君子湯(虚証タイプ)
  • 胃痛、胸やけ、げっぷ → 安中散(虚証タイプ)
  • 腹鳴、胃のつかえ感、下痢 → 半夏瀉心湯(実証タイプ)
  • 無効例 → 香蘇散、平胃散(虚証タイプ)

六君子湯というお薬

漢方では、体の中でも胃腸は特に重要だと考えられており、胃腸の調子を整える漢方薬が安中散以外でもたくさんあります。その中で六君子湯というお薬は最近の研究で、胃腸に対して、西洋薬にはみられない効果を発揮することも科学的に証明されつつあります。 胃の不調の原因の一つは胃の運動機能の低下だと考えられています。

六君子湯はこういった胃の運動機能の低下を改善します。

さらに、六君子湯には「グレリン」という食欲刺激ホルモンを活性化する働きがあるため、食欲が増して食欲不振も改善します。こういった研究の成果が発表されるに伴い、海外でも注目されるようになっています。

ぜひご相談ください!

これから暑くなり、体調がすぐれずだるい、食欲がない、胃腸の調子が悪い、体重が落ちる…。夏ばてのこんな症状、病気ではないけれど、つらいものです。原因としては冷房のあたりすぎ、食欲減退、冷たい飲み物のとりすぎによる消化機能の低下などがあります。そういう時にも上記の処方で効果がある場合もあります。毎年困られている方はご相談ください。