ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
〒152-003 目黒区碑文谷2丁目6-24
TEL.03‐5704‐0810
2023年05月号掲載
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♪歩こう、歩こう、あなたは元気!

5月は気温も日差しも外出に最適な時期です。運動と健康についてはたくさんの報告がありますが、今回少ない歩行でも高齢者の心臓に好影響を与えるという報告が米国アラバマ大学からありましたので、ご紹介いたします。

また適度な日光浴(紫外線)は、ビタミンDを活性化して骨粗鬆症の予防になることがわかっています。骨粗鬆症の進行は椎体骨の圧迫骨折をきたし、年齢とともに身長が短縮する原因となっています。福島県立医科大学からの、身長短縮で死亡リスクが上がるという報告も合わせてご紹介いたします。

梅雨入りから夏になると、外に出づらくなります。今のうちにお散歩して、健康貯金をしましょう。

70歳以上なら歩数を1日500歩増やすだけで心臓に良い影響

「70歳以上の人を対象とした新たな研究から、少ない歩数であっても心臓の健康に良い可能性のあることが分かった。1日3,000歩でもよく、さらに500歩増やすだけでも大きな違いが生じる可能性があるという。米アラバマ大学のErin Dooley氏らが、米国心臓協会(AHA)の生活習慣科学セッション2023(EPI2023、2月28日~3月3日、ボストン)で発表した。

Dooley氏らはこの研究で、一般住民のアテローム性動脈硬化リスク因子に関する大規模疫学研究「ARICスタディ」の参加者のうち、1日10時間以上の加速度計の記録が3日以上ある、70歳以上の高齢者452人(平均年齢78.4歳、女性59%)を解析対象とした。1日の歩数は平均3,447±1,796歩だった。

3.5年(1,269人年)の追跡で、34人(7.5%)に心血管イベント(冠状動脈性心疾患、脳卒中、心不全)が発生した。最も歩数の少ない第1四分位群(2,077歩/日未満)のイベント発生率は11.5%、最も歩数の多い第4四分位群(4,453歩/日以上)は3.5%だった。年齢、性別、BMI、人種、教育歴、加速度計の装着時間で調整後、第4四分位群のイベントリスクは第1四分位群より77%低いことが示された〔ハザード比(HR)0.23(95%信頼区間0.07~0.83)〕。

Dooley氏は、「身体活動は、心臓の健康に関連するあらゆるリスク因子を抑制するために、非常に大切だ。血糖値や血圧のコントロールに役立ち、体重管理につながる。また、ウォーキングはストレス解消にも最適であり、さらに高齢者にとっては骨の健康維持という点でも重要である」と解説。同氏によると、今回の研究では、1日の歩数が3,000歩を超える当たりから、心血管イベントのリスク低下が顕著になる傾向にあったという。なお、目標とする歩数を1回で達成する必要はなく、1日の中で何回かに分けて積み重ねて達成しても良いとのことだ。

それでもまだ、ウォーキングを始めることにためらいがあるという高齢者がいるかもしれない。そのような人に対してDooley氏は、「まず500歩増やすことからスタートしてみては?」と提案する。このアドバイスは、今回の研究で1日の歩数が500歩多いごとに、心血管イベントリスクが14%低下する〔HR0.86(同0.76~0.98)〕というデータが得られたことに基づくものだ。

身長が5mm低くなっただけで死亡リスクが有意に上昇―日本人での縦断研究

加齢に伴い、わずかに身長が低くなっただけで、死亡リスクが有意に高くなる可能性を示唆するデータが報告された。2年間で5mm以上低くなった人は、そうでない人より26%ハイリスクだという。福島県立医科大学医学部腎臓高血圧内科の田中健一氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に3月3日掲載された。

身長は椎間板の変形や椎骨骨折などの影響を受けて、歳とともに徐々に低くなる。 そのような身長短縮の影響は骨粗しょう症との関連でよく検討されており、また死亡リスクとの関連も検討されている。ただし後者については、2cm以上という顕著な身長短縮が見られた場合を評価した研究が多く、わずかな身長短縮と死亡リスクの関連は明らかになっていない。田中氏らは、特定健診研究(J-SHC study)のデータを用いて、軽微な身長短縮の死亡リスクへの影響を縦断的に検討した。

福島や大阪、沖縄などの7府県の2008年、2010年両年の特定健診受診者から、データ欠落者や測定誤差と見なされる身長の変化(2年間で5cm以上)が記録されていた人を除外した22万2,392人(平均年齢63.4±7.3歳、男性39.7%)を解析対象とした。このうち31.2%が、2年間で身長が5mm以上低くなっていた。身長短縮幅が5mm以上の群は5mm未満の群(対照群)に比べて、高齢で女性が多かった。また、ベースライン時データに関しては、身長が対照群より低く体重は軽くて、ウエスト周囲長が大きいという有意差が見られた。BMIについては同等だった。

平均4.8±1.1年の観察で、1,436人が死亡。死亡リスクの評価に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、ベースライン時の身長、BMI、喫煙習慣、高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳卒中・心血管疾患の既往)を調整後、身長短縮幅が5mm以上の群は、主要評価項目の全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクが26%有意に高いことが示された〔対照群を基準とする調整ハザード比(aHR)1.26(95%信頼区間1.13~1.41)〕。性別に見ても、男性はaHR1.24(同1.08~1.43)、女性はaHR1.28(1.07~1.52)であり、ともに有意なリスク上昇が認められた。

二次評価項目として設定されていた心血管死については、全体解析〔aHR1.34(1.04~1.72)〕と女性〔aHR1.60(1.08~2.37)〕では、身長短縮幅が5mm以上の場合に有意なリスク上昇が認められたが、男性はこの関連が非有意だった〔aHR1.18(0.85~1.64)〕。男性では非有意となった理由として著者らは、心血管死が少なかったこと(全体で279人、男性は172人)が一因ではないかとの考察を加えている。

これらの結果を基に論文の結論は、「日本人を対象とする研究から、2年間でわずか5mmの身長短縮も全死亡リスクと関連のあることが明らかになった。身長の変化は、死亡リスクを層別化して評価するための、低コストで簡便なマーカーとして利用できるのではないか」とまとめられている。

原著論文)Iwasaki T, et al. Sci Rep. 2023;13:3593.
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