ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
〒152-003 目黒区碑文谷2丁目6-24
TEL.03‐5704‐0810
2017年11月号掲載
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食べ順ダイエット
「べジ・ファースト」でなく「カーボ・ラスト」

食後高血糖は、空腹時血糖以上に血管合併症と関連しています。

食後高血糖を避けるための食事法として「食べ順ダイエット」が有名で、日本糖尿病協会も推奨しています。

食べ順ダイエットの基本は、べジ・ファースト(野菜を最初に食べるの意)とされています。

このたび、米・ニューヨークのウェイル・コーネル医科大学のグループから、欧米人においても食べ順ダイエットが食後血糖管理に有効であり、その要諦がべジ・ファーストというよりも、カーボ・ラスト(糖質を最後に食べるの意)であることが示されましたので、ご紹介します。 (出典:BMJ Open Diabetes Res Care 2017;5:e000440)

【研究のポイント1】

2型糖尿病患者を対象として3パターンの食べ順を比較

本研究では、35~65歳でBMIが25~40のメトホルミン投与を受けている2型糖尿病患者が対象とされた。被験者には同じ試験食をクロスオーバーで3パターンの食べ順で摂取してもらい(それぞれの試験食摂取は1週間の間隔を空けた)、食前から食後3時間まで30分ごとに採血し、血糖、インスリン、グルカゴン、活性型GLP-1値を測定した。

3パターンの食事内容は、いずれも表1の試験食であり、それぞれの食べ順は以下の通りであった。

パターン1(カーボ・ファースト)

チャバタとオレンジジュースを10分で食べ、10分の休憩を挟み、10分で鶏肉とサラダを食べる

パターン2(カーボ・ラスト)

鶏肉とサラダを10分で食べ、10分の休憩をはさみ、チャバタとオレンジジュースを10分で食べる

パターン3(サンドイッチ)

鶏肉とサラダをチャバタに挟み、サンドイッチをつくった上で、サンドイッチ半分とオレンジジュース60g(半分)を10分で食べ、10分の休憩を挟み、残りのサンドイッチ半分とオレンジジュース半分を食べる

【研究のポイント2】

カーボ・ラストで追加インスリン分泌を増やさず血糖上昇が抑制

被験者は16人(男性7人、女性9人)で、年齢57.7±7.6歳、BMI 32.8±3.3、HbA1c 6.5±0.7%であった。この16人での採血の結果は、図の通りであり、カーボ・ラストの食べ順では、カーボ・ファーストあるいはサンドイッチより、血糖上昇の曲線下面積が有意に抑制されていた(表2)。

またこの間、カーボ・ラストでは、インスリン上昇の曲線下面積もカーボ・ファーストより有意に抑制されていた。一方、GLP-1濃度については、曲線下面積としてはカーボ・ラストの方がカーボ・ファーストよりも有意に高くなっていたものの、初期の60分間でのGLP-1濃度についてはカーボ・ラストとカーボ・ファーストの間に差異は認められなかった。

カーボ・ラストの有効性が確定

図1で食後180分において血糖もインスリンもカーボ・ラストで高値になっていることから、胃排泄遅延がカーボ・ラストの血糖上昇抑制の主たる要因であろうと推測される。しかし、初期の60分におけるGLP-1の変動はカーボ・ファーストとカーボ・ラストで全く差異がない。よって、今回の研究において生じていると想定される胃排泄遅延はGLP-1では説明できない。測定されていないGIPか、それ以外のなんらかの要素による胃排泄遅延がカーボ・ラストの血糖上昇抑制の主たる要因ということになろう。

民族を超えて食べ順ダイエットが血糖管理に有効であること、そして野菜→主食であれ、魚→米であれ、肉→米であれ、サラダ→チャバタであれ、カーボ・ラストが食べ順ダイエットの要諦であることは確定的になったといえよう。

これで安心して〆のラーメン・・・はいけませんよ。

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