ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
〒152-003 目黒区碑文谷2丁目6-24
TEL.03‐5704‐0810
2016年10月号掲載
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麻疹(はしか)が流行しています

関西方面で、麻疹(はしか)の流行が続いています。いつ東日本で流行しても不思議ではない状況です。

麻疹ウイルスは、接触、飛沫、空気(飛沫核:空気中を浮遊している病原体)のいずれの感染経路でも感染し、極めて感染力が強く免疫のない人が感染すると、ほぼ100%発症します。

麻疹ウイルスに感染すると、8~18日間の潜伏期ののち、咳、くしゃみ、鼻水、目の充血などをともなう38度くらいの熱が出て、口の中の粘膜に「コプリック斑」という白く小さな斑点ができます。その後、一旦熱が下がりますが、すぐに39度くらいの高熱になり、それとともに、赤い小さな発疹が体中に広がっていきます。熱に関しては、3~4日程度で軽快し、発疹は、10日~2週間ほどで治まります。

有効な治療法はなく、対症療法しかありません。途上国では3~5%の高い死亡率で、わが国でも0.1%程度、毎年数十名の死亡者が出ています。

5歳未満の小児と20歳以上の大人が罹った場合に重症化しやすく、肺炎や脳炎を併発する率が高くなります。

麻疹の予防法

予防法は予防接種しかありません。

1990年4月2日以降に生まれた人は、定期接種として、「麻疹・風疹の混合ワクチン(MRワクチン)」を受ける機会が2回(1歳時・小学校入学前の1年間)あります。ワクチンの接種率は現在90%を超えています。

さまざまな理由で子供に予防接種を受けさせない親がいますが、麻疹は感染力が強く、死亡率の低くない感染症なので、自分のお子さんのためだけでなく、集団生活をする他の子供たちのためにも、せめて麻疹・風疹の混合ワクチンだけは受けさせていただきたいとおもいます。

どうして今回の麻疹流行は発生したのか?

現在40歳以上の人は、麻疹が流行していた時代に自然感染し免疫を獲得している人が多いのですが、それ以降の世代で、1990年3月以前に生まれた方は1歳時の1回接種のみの世代であり、幼少期に麻疹の流行を経験していないので、予防接種の効果が下がっている可能性が高い。また不幸なことに1989年4月から導入されたMMR(麻疹,おたふくかぜ,風疹)という混合ワクチンの定期接種が、ワクチン中のおたふくかぜワクチンが主因と思われる無菌性髄膜炎が多数報告されたため,1993年4月に中止されました。予防接種に対する負のイメージから、接種率も70~80%と低いのが、現在流行の中心になっている20歳代から30歳代の世代なのです。

今から8年ほど前にも、大学生を中心とした流行があり、国は2008年4月1日から2013年3月31日の5年間に、中1と高3を対象とした追加接種を実施しましたが、全員が接種したわけではありません。

これからの対策

麻疹に罹ったことのない方、予防接種歴のない方は予防接種をお受けになることをお勧めします。

特に1990年4月1日以前に生まれた方は、1回接種の世代ですので、接種歴があっても抗体価が下がってしまっている可能性があるので、麻疹の抗体検査をお受けになることをお勧めします。採血検査で、麻疹に免疫があるかどうかがわかります。

麻疹の予防接種には、麻疹単体ワクチンと、麻疹・風疹の混合ワクチン(MRワクチン)がありますが、麻疹単体ワクチンは生産量が少なく、現在かなり品薄で入荷に時間がかかっています。

麻疹・風疹の混合ワクチンも、厚労省より1歳児、6歳児の定期接種を優先するという通達が出ているので、大人の接種には制限がかかる可能性があります。

なお、麻疹、風疹ワクチンとも、もし免疫がある人に接種したとしても害はありません。(麻疹のみ免疫なく、風疹に免疫がある方にMRワクチンを接種しても問題ない) 受付でご相談ください。

おまけ

麻疹(はしか)の語源

麻疹と書いてはしかと読みますが、麻疹は漢語で、はしかは和語で、語源は異なります。

芒(はしか、草かんむりに亡)はイネ科の植物の穂先の針のようなとがった毛のことで、これが皮膚に触れると赤くはれてちくちく痛むことから、はしかの語源といわれています。

一方麻疹は、麻のちくちくによる発疹に見立てています。蕁麻疹も蕁麻(とげに毒のあるいらくさ)のちくちくが語源。

中国人も日本人も植物のちくちくを連想した点は同じなんですね。

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