ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
〒152-003 目黒区碑文谷2丁目6-24
TEL.03‐5704‐0810
2016年01月号掲載
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血清ヘリコバクターピロリ抗体検査の陰性高値って何?

胃がんリスク検診(ABC検診)のヘリコバクターピロリ抗体陰性高値について

胃がんリスク検診(ABC検診)は胃がんの原因になる幼少時からのピロリ菌感染の有無と、胃がんの発生しやすい胃粘膜萎縮の度合いを血液検査で判定する検査です。

ピロリ菌感染がなく(ヘリコバクターピロリ抗体陰性)、胃粘膜萎縮の進んでいない(ペプシノゲン陰性)の方は、胃がんになる危険度が低い群(A群)に分類されていますが、このA群の中に胃がんの危険度が低くない方がいることがわかっています。

ピロリ菌除菌後の方は定期的に内視鏡検査を!

ピロリ菌除菌が成功すると、ヘリコバクターピロリ抗体は徐々に低下して半年から2年ぐらいで陰性化しますが、進んでしまった萎縮性胃炎はなかなか改善しないため、胃がんリスクが残ります。

川崎医科大学の報告では、1787例のピロリ菌除菌成功症例から9年間で20例の胃がんを認めました。累積胃がん発見頻度は2.2%、毎年0.2%が除菌後に胃がんを発症している計算です。

したがってピロリ菌除菌後の方には、胃がんリスク検診で数字上A群と診断されても、定期的に内視鏡検査を受けることをお願いしています。

ヘリコバクターピロリ抗体陰性高値の方は、一度内視鏡検査を!

抗体というのは、病原体に対する免疫反応で、ピロリ菌に感染するピロリ菌抗体価が上昇します。

抗体価が10以上であれば、ピロリ菌感染有と判断します。

10未満であれば、現在感染がないと判断するのですが、抗体価3~10(陰性高値)には過去に感染があって、現在は菌がいなくなった状態の方が含まれる率が高いことがわかってきました。ピロリ菌除菌の薬をのむ以外でも、副鼻腔炎などの治療で気がつかないうちにピロリ菌が除菌されてしまっている場合がありますから注意が必要です。

ピロリ菌除菌後の方から胃がんが少なからず発生することがわかっているように、過去に感染があった人は、もともとピロリ菌感染がない人とは違い、胃がんリスクがあるのです。

目黒区胃がんリスク検診受診者で、A群に分類された方のピロリ菌抗体価をピロリ菌除菌歴の有無で分類してみると、図のようになります。除菌していない方は90%が抗体価3以下なのに対し、除菌歴のある方の6割は抗体価3~10(陰性高値)になっています。このことからも、ヘリコバクターピロリ抗体陰性高値(抗体価3~10)の方は、胃がんリスクの残っている過去の感染の可能性があることが推察できます。

また高齢者などで免疫能が低下している場合、現在ピロリ菌感染があってもピロリ菌抗体価が陰性を示すことがあり、この場合も抗体価3~10(陰性高値)をとることが多いことがわかっています。

胃がんリスク検診でA群に分類された方は、ヘリコバクターピロリ抗体の数値を見直してみてください。陰性高値(抗体価3~10)であれば、ピロリ菌除菌歴がなくても、過去に感染があった可能性があります。

ヘリコバクターピロリ抗体陰性高値(抗体価3~10)の方は、ぜひ一度内視鏡検査をお受けになってください。

胃粘膜の状態を直接みることで、過去にピロリ菌感染があったかどうかを判定することが可能です。

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