ひもんやだよりWEB版
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ひもんや内科消化器科診療所
〒152-003 目黒区碑文谷2丁目6-24
TEL.03‐5704‐0810
2014年04月号掲載
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胃がんリスク検診
A群の人は胃がんにならないの?D群の人にはピロリ菌はいないの?

胃がんリスク検診は、胃がんの原因であるピロリ菌感染の有無と、胃粘膜萎縮度を血液検査で診断することで、胃がんになりやすいかどうかをA・B・C・Dの4段階で判定する検診です。

目黒区住民検診にも採用されており、平成23年度には5,918人が胃がんリスク検診を受診し、15名の胃がんが発見(発見率0.25%)されています。

胃がんリスクが高い(B、C、D群)と判定された人は、検診を受けた年だけでなく、将来にわたって定期的に胃の検査を受けて、早期に胃がんを発見することを目指します。

またピロリ菌感染のあるB、C群の方は、ピロリ菌を除菌することで、将来的に胃がんになる危険度を下げることが期待できます。

逆に、ピロリ菌に感染のないA群の方は胃がんになることはまれですので、将来的にも胃の検査を受ける必要性は低い、ということがいえます。

胃がんリスク検診は胃がんをみつけるだけでなく、受診者それぞれにあった胃がん対策を立てることのできる有用な検診ですが、検診を受けられた方から、A群は本当に胃がんにならないのか? D群はピロリ菌除菌をしなくてもいいのか?というご質問を多く受けるようになりました。

A群は胃がんにならないの?

胃がんになりにくい人を判定することも胃がんリスク検診の目的の一つです。

毎年バリウム胃がん検診を受けている人の中には、ピロリ菌の感染のない、胃がんになりにくい人も多く含まれています。

広島大学の調査では、ピロリ菌感染を伴わない胃がんは、胃がん3,161例のうち21例、0.66%と圧倒的に少なく、このことからもピロリ菌感染のないA群の方に、放射線被曝の伴うバリウム検診を毎年勧めるのは、健康上も経済的にも合理的ではありません。

しかしながら、近年A群の方から胃がんが見つかる、また胃がんがみつかってから胃がんリスク検査をおこなってみるとA群であった、という報告が増えています。

その原因として、ピロリ菌除菌療法の普及により、A群の中に、過去にピロリ菌除菌を受けた人が多く混入してきていることがあげられます。

ピロリ菌除菌が成功すると、抗体価は低下し、ペプシノゲン値も改善し、採血検査ではA群に分類されてしまうことがありますが、未感染の人と同じ胃に戻るわけではありません。除菌する時点ですでに内視鏡ではみつけられないサイズの胃がんができている場合や、除菌をしたあとに胃がんが発生する可能性もあります。(図2)ピロリ菌除菌は100%の胃がん予防ではありません。

除菌療法を受けていなくても、過去に風邪や副鼻腔炎などの治療で、ピロリ菌除菌に使うのと同じタイプの抗生物質をのんだことで、気がつかないうちに除菌されてしまっている方もいます。

また、胃がんリスク検診のピロリ菌感染診断は血清抗体検査なので、実際は感染しているのに、加齢などで免疫力が落ち抗体価が下がって陰性になる場合もあります。

以上のことから、A群=ピロリ菌未感染、とはいえなくなっています。

A群の人はどうしたらいいの?

胃がんリスク検診を受ける時点で、すでにピロリ菌除菌を受けている方は、検診数値に関係なくE群(E:ERADUCATION=除菌)として、BCD群同様に定期的に胃の内視鏡検査をお受けになることをお願いしています。

また、A群のうち、ペプシノゲン値:PGⅡ≧12、PGⅠ/Ⅱ≦4、ヘリコバクターピロリ抗体価:10<HpIgG<3の方は、A群でも上記のような理由でピロリ菌に感染したことがある可能性があるので、一度は内視鏡検査を受けることをお勧めしています。内視鏡で胃粘膜の状態をみれば、過去にピロリ菌感染があったかどうかが判断できます。

過去にピロリ菌感染のあった胃粘膜と診断された方は、A群であっても定期的な内視鏡検査をお勧めしています。

あわせて内視鏡検査でピロリ菌感染の可能性のある胃粘膜と診断された方には、血清抗体検査よりも精度の高い尿素呼気試験、ピロリ菌便中抗原検査を受けて、現在のピロリ菌の感染がないかどうか確認することをお勧めしています。他の検査でピロリ菌感染有りと診断された場合は、ピロリ菌除菌療法の適応になります。

D群の人にはピロリ菌はいないの?

D群は過去のピロリ菌感染によって胃粘膜萎縮がすすみ、ピロリ菌が住めなくなった状態と説明されています。

この解釈には諸説ありますが、実際にD群は胃がんの発生率が一番高いグループです。 ピロリ菌感染については、すでに菌は消退して感染はなくなっていると解釈できますが、胃がんリスク検診のピロリ菌感染診断は血清抗体検査なので、実際は感染が続いているのに、加齢などで免疫力が落ち抗体価が下がって陰性になっている場合もあります。

したがって、D群=すでにピロリ菌感染はない、とはいいきれません。

D群の人はどうしたらいいの?

胃がんリスクが一番高い群ですので、定期的、できれば毎年の内視鏡検査をお願いいたします。

また、初回の内視鏡検査時に、血清抗体検査よりも精度の高い尿素呼気試験かピロリ菌便中抗原検査を受けて、現在本当にピロリ菌の感染がないかどうか確認することをお勧めしています。他の検査でピロリ菌感染有りと診断された場合は、ピロリ菌除菌療法の適応になります。

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