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2013年10月号掲載記事

噛めよ 噛めよ 体が 強くなる

大岡山小学校学校保健委員会「食育〜噛む力について」より

小学生の頃は、みんなの机が後に下げられて、掃除当番がこれ見よがしに箒を振り回して埃を立てている中、一人べそをかきながら給食を食べていた私ですが、就職してからは、救急車のサイレンが聞こえ始めてから、病院の前で停まるまでの間に、おにぎりとカップラーメンを平らげてしまうぐらいの早食いになってしまいました。

消化器科の医者ながらお恥ずかしい限りですが、消化器官の活動にとって「咀嚼」は重要なファーストステップです。

咀嚼と健康

「よ〜く〜 噛〜めよ 食〜べも〜のを〜 噛めよ 噛めよ 噛めよ 体が 強くなる」という歌をご存知でしょうか?

row row row your boat の節で、子供の頃、祖母に歌い聞かせられた記憶があります。

食糧難の時代の歌で、たくさん噛んで、ゆっくり食べることで、少しでも満腹感を得ようという意図もあったのだとおもうのですが、「噛むと体が強くなる」というところにはうそはありません。

咀嚼によって消化管の動き、消化液の分泌、そして食欲や満腹感もコントロールされているのです。

咀嚼の第一歩は、「食べ物を口に運ぶ」ことです。

動物は食べ物を探し、手に取ったものを、さわって、見て、臭いをかいで、食べてもよいものかどうかを判断します。このとき脳は本能と経験を全開にしています。

人間はこの大切なプロセスは忘れてしまっているので、賞味期限表示に頼らず、冷蔵庫の食品のラップをはずして臭いを嗅いでみることは、大切なことだとおもいます。

さて、食品は、歯でちぎられ口腔内に入り、更に細かく砕かれます。

これは単に物理的に食品を小さくして飲み込みやすくするだけでなく、口腔から肛門までの一本の管である消化管の運動が、ここから始まります。

噛むことで、食道、胃、小腸、大腸に、運動の指令が送られるのです。

また、胆汁や膵液といった消化液の分泌の準備が始まります。

唾液とよく混ぜ合わせることは、物理的に飲み込みやすくなるだけでなく、デンプンの化学結合が切れて糖に分解され、ミクロのレベルでも消化吸収されやくなります。

よく噛まないことは、準備のできていない消化器官に食品を送り込むことになり、消化器官に負担をかけ、消化不良の原因になります。

また、噛むことで、脳に食事をとっていること、そして食べている量を伝えます。

脳は、胃の中の食品の量や、食事が吸収されて血糖値が上がることで、摂食をコントロールしていますが、胃の中の食品の量、血糖値の変化よりもまず先に、噛むことで食事の量を感知しています。

よく噛まずに食べると、胃の中に食事がたまって、血糖値が上がるまで満腹感を感じないので、食べ過ぎてしまうことになります。

たくさん噛むことで、脳をだますこともでき、これは簡単なダイエット方法です。

よく噛んで食べることでしっかり栄養がとれるだけでなく、食べすぎによる生活習慣病の予防にもなるのです。

NBI観察は、内視鏡のスイッチで光の波長を切り替えるだけなので、通常の内視鏡検査と全く同じ方法で受けられます。

当院では、内視鏡検査全例でNBI観察を行ない、消化管病変の確実な診断を目指しています。