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2012年10月号掲載記事

健康のため、赤ワインを食卓に

涼しくなって、ワインの美味しい季節がやってきました。

ワイン、特に赤ワインが健康によいことが、近年注目されていますが、化学薬品の無かった中世以来、ヨーロッパではワインはもともと薬として研究されていました。また、ペンフォールドなど、オーストラリアのワイナリーの創始者に医師や科学者が多いのも、ワインを健康のための飲料として生産してきた歴史があるからです。

フレンチパラドックスとは

心臓疾患と乳脂肪摂取量が多いと、動脈硬化が進み心臓疾患が起きやすい傾向があるにもかかわらず、同じような食生活をしている他の欧米諸国に比べて、フランス人に心臓疾患が少ないことは、「フレンチパラドックス」といわれ、長い間謎になっていました。(Fig.1)

90年代初めにこの疑問に対する答えが、科学雑誌ランセットに発表されました。

「乳脂肪の消費量からワインの消費量を引いた数値」が少なければ、心疾患死亡が少ない、即ち「乳脂肪をたくさん摂っても、ワインを多く飲んでいる国は、心疾患が少ない」ということが疫学的に証明されたわけです。(Fig.2)

ワインが身体によい理由

その後の研究から、ワイン、特に赤ワインに含まれる「ポリフェノール」が、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の酸化を防ぐことがわかりました。

LDLコレステロールは、紫外線、放射線、喫煙、さまざまな環境物質によって発生した活性酸素によって酸化LDLとなり、酸化LDLは血管の壁を攻撃して、動脈硬化を進め、心疾患、脳血管障害を引き起こします。

赤ワインのポリフェノールの持つ「抗酸化作用」が、動脈硬化が進むのを抑えているのです。

レスベラトロールと長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)

食欲の秋のお供に、ぜひ赤ワインをお選びください。

ただし、いくら動脈硬化を防ぐ、長寿遺伝子を活性化するからといって、赤ワインを何本も飲むことは肝障害やアルコール依存症の心配もあります。適量を心がけてください。

またアルコールが苦手な方には、アルコールを除き、赤ワインの有効成分だけを抽出したサプリメントをご提案しております。長寿遺伝子といわれるサーチュイン遺伝子は、カロリー制限や飢餓によって活性化されます。これは過酷な環境で生き抜くためのシステムとして、生物の備わった能力ですが、赤ワインに含まれるポリフェノールの一つ、「レスベラトロール」投与によっても、サーチュイン遺伝子を活性化できることが実験で確かめられています。

2006年に科学雑誌ネーチャーに、ラットを使った実験で、レスベラトロールによる寿命延長効果が報告され、注目されるようになりました。それまでは昆虫や魚類を使った実験でしたが、哺乳類であるラットでの効果が証明されて以降、人間での効果が期待できる報告が多数なされています。