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2011年3月号掲載記事

更年期を漢方治療でのりきる

 更年期障害に対する漢方治療

当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸が更年期の多彩な症状を和らげます。

更年期の特徴

更年期には、卵巣から分泌されるホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が激減します。エストロゲンには、皮膚、乳房などに弾力性、みずみずしさを与える働き、コレステロール値を正常化する働き、骨粗しょう症、アルツハイマー病を予防する働きなど、さまざまな機能があり、エストロゲンが不足すると、のぼせ、ほてり、手足の冷え、腰痛、関節痛、頭痛、不安感、興奮、冷感、しびれ感、頻尿、排尿障害、腹痛、食欲不振、睡眠障害、疲れやすい等、心身にいろいろなトラブルが起こりやすくなります。こうした症状が、日常生活に支障を来すほど強くなった状態を、「更年期障害」と呼びます。

セルフチェックしてみてください。

  1. 顔や身体(特に上半身)が熱くなる(ほてる
  2. 汗をかきやすい
  3. 手足や腰が冷えて、暖めても暖まりにくい
  4. 寝付きが悪い
  5. 夜中に目が覚めやすい
  6. 朝早く目が覚めてしまう
  7. 少しのことで興奮しやすく、いらいらする
  8. ささいなことが苦になって、くよくよしやすい
  9. 今まで楽しかったこと(趣味など)がつまらなくなった
  10. 動悸がしやすい
  11. 首や肩がこる
  12. 手足の関節が痛む、あるいは、手足の指先がしびれる
  13. 頭が重かったり、頭痛がしたりする

更年期の診断

血液中のホルモンE2(卵巣から出るエストロゲン)とFSH(下垂体から出て、卵巣を刺激し、エストロゲンを出させるホルモン)を測定することで、更年期にあるかどうかの診断ができます。

しかし、更年期にみられる自覚症状は多彩で、内科、婦人科疾患が原因の可能性も少なくありません。貧血、高脂血症、肝機能障害、甲状腺機能異常、骨粗しょう症、子宮がん、 卵巣がんなどの疾患が背景にある可能性もあるため、血液検査、尿検査、超音波検査をあわせて行ないます。

更年期障害の漢方治療ホルモン補充療法

更年期障害には、ホルモン補充療法、自律神経調整剤や抗不安薬、そして漢方薬治療が行われていますが、当院では安全で、有効性の高い漢方治療を中心に治療を行っています。

更年期障害に効果のある処方の代表が当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸です。

 

 

【当帰芍薬散】

比較的体力の低下した成人女子に用いられることが多く、一般に冷え症で貧血傾向があり、 性周期に伴って軽度の浮腫、腹痛などを呈する場合に用いる。

(1)全身倦怠感、四肢冷感、頭痛、めまい、耳鳴り、肩こり、心悸亢進などの症状を訴える場合。

(2)無月経、過多月経、月経困難など、月経異常のある婦人

【加味逍遙散】

比較的虚弱な人で疲労しやすく、精神不安、不眠、イライラなどの精神神経症状を訴える場合に用いる。

(1)肩こり、頭痛、めまい、上半身の灼熱感、発作性の発汗などを伴う場合。

(2)心窩部・季肋部に軽度の抵抗・圧痛のある場合。(胸脇苦満)

(3)性周期に関連して上記精神神経症状を訴える場合。

【桂枝茯苓丸】

体力中等度もしくはそれ以上の人で、のぼせて赤ら顔のことが多く、下腹部の抵抗・圧痛を訴える場合に用いる。

お血※に伴う諸症状に用いる。

(1)頭痛、肩こり、めまい、のぼせ、足の冷えなどを伴う場合。

(2)無月経、過多月経、月経困難など月経異常のある婦人。

※お血(「お」はやまいだれに於):漢方の一概念で主として婦人科疾患、出血性疾患などに起こり、 静脈系のうっ血、出血などに関連した症候群をいう。

更年期の診断、漢方治療をご希望の方は、ぜひご相談ください。