医療記事一覧

医療情報

2011年2月号掲載記事

不眠症と睡眠薬

不眠症とは?

不眠症とは、寝つけない、熟睡できないなど、睡眠が妨げられるために日常生活に支障を来たす疾患です。厚生労働省の報告によると、日本人の3人に1人が、現在または過去に睡眠についての悩みを経験しています。

「最適な睡眠」とは?

「最適な睡眠」というと、「1日8時間睡眠をとる」というように、トータルの睡眠時間に着目しがちですが、 図1を見てみると、「睡眠での休養が十分と感じている人」で最も多い睡眠時間は7時間、「不十分と感じている人」で最も多い睡眠時間は6時間と、実際には1時間しか違いはありません。睡眠時間の長さだけに充足感や休息感を感じるわけではないようです。

不眠症のタイプ

最適な睡眠を得るためには、睡眠時間以外の要素も重要です。

たとえば、寝付くまでに時間がかかってしまったり、夜中や早朝に目覚めてしまうと、睡眠による満足が得られません。不眠症は、症状によって、4つのタイプに分類されます。

「入眠障害」
本人が眠ろうと意識したときから寝つくまでに時間がかかってしまう、いわゆる「寝つきが悪いタイプ
「熟眠障害」
十分な時間眠っていても、翌朝起きた時に眠った気がしない、眠りが浅いタイプ
「中途覚醒」
一度寝ついても、途中で何度も目が覚めてしまう場合や、夜中に目が覚めてからなかなか寝つけないタイプ
「早朝覚醒」
自分が起きようとしていた時間より早く目覚めてしまう場合で、高齢者によく見られるタイプ

この4タイプの中では「入眠障害」が最も多く、不眠症の約6割を占めています。

不眠症と治療(睡眠薬の使い分け)

不眠症の治療の基本は、最適な睡眠を得るようにすることです。

不眠の原因(ストレスや、精神的・身体的疾患など)を取り除くことが最も重要ですが、睡眠薬を利用することで、最適な睡眠を得られることも多く、効果的な治療といえます。

睡眠薬は、作用時間によって、超短時間作用型短時間作用型中間作用型長時間作用型の4種類に分類されます。

図2は、「超短時間作用型(マイスリー、アモバン、ハルシオンなど)」や「短時間作用型(レンドルミン、リスミー、ロラメットなど)」の睡眠薬の血中濃度を示しています。 これらの薬剤は、服用とともにすばやく血中濃度が上昇して睡眠の前半に強く作用するため、作用時間が短くなっています。 したがって、「入眠障害」に優れた効果を示します。翌朝にふらつきやめまいなどが残ることが少なく、目覚めがよいタイプです。最近では、薬の化学構造を工夫して、入眠作用以外の副作用の出にくい薬も開発されています。

中間作用型(サイレース、ベンザリン、ユーロジンなど)」の睡眠薬は、作用時間が中程度で、「中途覚醒」や「早朝覚醒」などの睡眠の維持の障害を訴えるタイプに向いています。しかしながら、翌日の就寝前にもある程度体内に残っているため、連用すると体内に蓄積し、朝目覚めたときに眠気、頭重、ふらつきなどを生じることがあります。

長時間作用型(ダルメート、ドラールなど)」は、作用時間が長く、翌日の昼間も体内にかなり残っていることから、眠気やふらつきを生じ、日中の精神運動機能に影響を及ぼします。しかし、抗不安作用が強いことから精神疾患に伴う不眠に向いています。

 

睡眠薬の副作用や習慣性を心配して、服用をためらっている方もいらっしゃいますが、不眠の状態を長く続けることは、健康にとってマイナスです。自分にあった睡眠薬を上手に利用して、最適な睡眠を得ることをお勧めいたします。