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2011年1月号掲載記事

胃がんリスク検診を受けましょう!

胃がんになりやすいか、なりにくいかは、簡単にわかります。

胃がんにはピロリ菌感染が深くかかわっています。ピロリ菌感染のない方から胃がんが発生することはまれです。またピロリ菌感染によって胃粘膜萎縮が進むほど、胃がんが発生しやすくなります。

胃粘膜の萎縮の程度はペプシノゲンという消化酵素を測定することでわかり、血液中のペプシノゲンの濃度が基準値以下の人は、6〜9倍胃がんになりやすいことがわかっています。

胃がんリスク検診は、ピロリ菌感染の有無と、胃粘膜萎縮度(ペプシノゲン)を採血検査で判断することで、胃がんになりやすい人か、なりにくい人かを判定する、新しい検診法です。

胃がんリスク検診の判定について

胃がんリスク検診はピロリ菌感染の有無と、ペプシノゲン値による胃粘膜萎縮度によって、胃がんになりやすいかどうかをABCDの4段階で判定します。

A群:ピロリ菌感染がなく、胃粘膜萎縮のない群で、胃がんの発生するリスクはほとんどありません。

B群:ピロリ菌感染があるも、ペプシノゲン値が基準値以上(陰性)で、胃粘膜萎縮の進んでいない群で、胃がん発生率は年率0.1%程度です。

C群:ピロリ菌感染があり、ペプシノゲン値が基準値以下(陽性)で萎縮の進んだ群で、年率0.2パーセントの胃がん発生率です。

D群:胃粘膜萎縮が進んで、ピロリ菌が住めなくなった状態です。ピロリ菌抗体陰性、ペプシノゲンは陽性となし、胃がん発生は年率1.25%です。

A群→B群→C群→D群の順に胃がんになるリスクが高まっていきます。(Fig.1)

(クリックすると大きな画像を表示します)

これからの胃がん検診は、胃がんリスクを知って、内視鏡検査を受ける時代です!

ピロリ菌感染は4〜5歳以下の免疫力の弱い時期に起こります。

A群の成人は現在だけでなく、将来も胃がんになる危険はほとんどなく、無症状であれば、バリウム検査や内視鏡検査を受ける必要がないと考えられます。 BCD群については、内視鏡精査の実施を行うことで、早期に胃がんを発見することを目指します。胃がんになる危険度に応じて、B群は3年に1度、C群は2年に1度、D群は毎年の内視鏡実施を推奨しています。 胃がんリスク検診で重要なことは、胃がんのリスクに応じた内視鏡検査を将来も継続していくことです。

胃がんが発見されるのは、胃がんリスク検診を実施した年だけではなく、5年後、10年後、20年後かも知れないからです。

胃がんリスク検診を受診する際に気をつけなくてはいけないこと

胃の手術を受けたことのある方、過去にピロリ菌の除菌療法を受けた方、現在胃の薬を飲んでいる方、腎機能の悪い方は、胃がんリスク検診の結果が正しく出ない場合がありますので、受診の際に必ずお申し出ください。 また、ピロリ菌感染がなく、ペプシノゲンが陰性のA群からの胃がん発生は極めて低い率ですが、ゼロではありません。胃がんリスク検診でA群でも、おなかの自覚症状のある場合は、胃の検査を受けましょう。

当院では、胃がんリスク検診を毎日実施しています。

ピロリ菌除菌が成功しても、胃がんになるの?

ピロリ除菌療法が成功することによって、胃がんになる危険度を下げる可能性がありますが、100%胃がんにならなくなるわけではありません。除菌後の胃がんの発見率は、複数の施設の報告から年0.23〜0.3%程度あり、決して少なくありません。

除菌療法を実施した時点で、胃がんが発生している可能性があります。除菌が成功しても、すでにできてしまった胃がんがなくなるわけではありません。除菌療法から数年以内に発見される胃がんはこのタイプである可能性が高いとおもわれます。

当院では除菌療法を行なう前に、必ず内視鏡検査を受けていただいておりますが、内視鏡検査で異常なしでも、内視鏡では見えない大きさの胃がんがすでにある可能性は残っています。

またすでにピロリ菌感染で萎縮が進んだ胃粘膜は、除菌がうまくいっても胃がんが発生しやすい状態であることにはかわりありません。除菌時に胃がんがなくても、新たな胃がんが発生してくる可能性があります。

ピロリ菌除菌が成功しても、完全に胃がんにならなくなるわけではありません。除菌後も定期的な胃の内視鏡検査を必ず受けてください。