医療記事一覧

医療情報

2010年10月号掲載記事

食道がん

有名人の食道がんに関する報道の影響からか、当院でも食道がんを心配されて受診される方が増えています。

食道がんの初期の症状は、のどのつかえ感や違和感ですが、これは食道がんに限った症状ではなく、 また早期の食道がんではほとんど症状がないことも多いため、自覚症状から早期発見することは困難です。

また食道がんは胃がんや大腸がんと比べて進行が早く、がんが周囲に広がりやすく、リンパ節転移もしやすいため、難治性のがんといえます。

食道がんのリスク

食道がんは女性に比べ、圧倒的に男性に多いことも特徴的です。

「男性」は食道がんのリスクファクターであるといえます。

生活習慣では、飲酒と喫煙が食道がんの最大のリスクです。

(グラフ:食道がんに対する飲酒・喫煙習慣の影響 愛知がんセンターホームページより)

お酒にふくまれるエタノールは、体内で分解されてアセトアルデヒドとなります。アセトアルデヒドには発がん作用があるため、食道が長期間高濃度のアセトアルデヒトにさらされると食道がんになりやすくなります。

アセトアルデヒドは、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)によって、炭酸ガスと水に分解されますが、ALDH2が先天的に少ない人は、アセトアルデヒドがたまりやすく、食道がんのリスクが高いといえます。

飲酒によって顔が赤くなるのはアセトアルデヒドによる作用ですので、少量の飲酒で顔が赤くなる、または若いときは赤くなった人は、ALDH2が先天的に少ない、アセトアルデヒドがたまりやすい体質です。このような人が、大量に飲酒する習慣を続けると、食道がんになりやすくなります。

さらに喫煙が加わると食道がんのリスクが上昇することがわかっています。

あなたの食道がんのリスクを自己診断してみましょう。

食道がんを早期に発見するには

胃の内視鏡検査の際に、食道も観察するので、まずは胃の内視鏡検査を受けることが大事です。

レントゲン検査では、バリウムは食道をすぐに通過してしまうため、食道の表面にできた早期がんを発見するのは困難です。

食道がんのリスクスコアが11点以上の方は、症状にかかわらず、定期的に内視鏡検査を受けることをおすすめいたします。

食道がんの治療

不幸にして食道がんが見つかった場合でも、早期がんであれば内視鏡治療で切除できる可能性があります。

内視鏡で治療できれば、ほぼ食道の機能を温存でき、5年生存率も70%以上あります。

また進行がんであっても、化学療法や放射線療法の進歩で外科手術と同等の成績が得られるようになりました。