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2010年4月号掲載記事

小児用肺炎球菌ワクチン 「プレベナー」

小児用肺炎球菌ワクチン「プレベナー」の接種を開始いたしました。

肺炎球菌は、小児の細菌性肺炎の原因菌では第1位、髄膜炎の原因菌としては、インフルエンザb菌(Hib)に次ぐ第2位です。

特に1歳以下では、肺炎、髄膜炎とも重症化しやすく、髄膜炎は治っても後遺症を残すことがあります。

成人用の肺炎球菌ワクチン「ニューモバックス」は、特に高齢者の肺炎を予防する目的で接種されていますが、2歳未満の小児には効果がありませんでした。ニューモバックスは免疫反応が未成熟な小児に接種しても、抗体をつくる作用が弱いためです。

「プレベナー」は小児でも免疫反応が起こりやすいように、肺炎球菌の抗原に無毒化されたジフテリア毒素を付けてサイズを大きくし、アジュバントと呼ばれる免疫反応を高める物質を加えています。

未熟な子どもの免疫系に対して「読みやすいように、文字を大きくして、ふりがなをふった」という感じかな。

アメリカでは、プレベナーの定期接種前と後で、肺炎球菌による髄膜炎、菌血症の発症が94%減少したと報告されました。昨年接種が開始されたヒブワクチンとプレベナーを接種すれば、わが国の細菌性髄膜炎患者(年間約1,000人)の約90%は予防できることが予想されます。

プレベナー接種スケジュール

標準として、初回免疫を2カ月齢以上7カ月齢未満で開始、27日間以上の間隔で3回接種します。追加免疫は通常、12〜15カ月齢の間に1回接種します。合計4回の接種です。 この時期に接種を開始できなかった接種もれ者には、次のようなスケジュールで通常接種します。

この時期に接種を開始できなかった接種もれ者には、次のようなスケジュールで通常接種します。

7ヵ月齢以上12ヵ月齢未満の場合

初回免疫を2回、27日以上の間隔で接種したのち、60日間以上あけて追加接種を12ヵ月齢後に1回接種

2ヵ月齢以上24ヶ月齢未満の場合

60日間以上の間隔で2回接種

24ヶ月齢以上9歳以下の場合

1回接種

これまでにいただいたご質問

ニューモバックスのほうが、効果が高いと聞いています。2才以上の場合、プレベナーとニューモバックスのどちらを接種したほうがいいでしょうか?

プレベナーは7価(7種類の血清型の抗原を含む)であるのに対して、ニューモバックスは23価で、カバーする菌の種類が多いことは確かですが、メーカー報告によると、プレベナーに含まれる7つの血清型で、わが国の侵襲性肺炎球菌感染症の70〜80%を、急性中耳炎の約60%をカバーしています。耐性株による感染症に関してはカバー率がさらに高く、侵襲性肺炎球菌感染症の約90%、急性中耳炎の約80%をカバーしています。

予防接種は、接種後に身体が免疫反応を起こしてはじめて効果が得られます。プレベナーは小児に特化して、免疫反応を起こさせやすくしているので、ニューモバックスよりも効果が低いとは言い切れません。

試験に出る確率の高いところを、重点的に何度もおさらいするのと、出題率の高くないところまでを、広く浅く勉強するのと、どちらがいいか、という感じでしょうか。

余力のある(5歳以上ぐらい?)のお子さんなら、広く浅くのニューモバックスで高得点をねらってもいいですが、2歳を過ぎたばかりのお子さんであれば、まずは合格点をとる(重症化しない)ことを目標に、プレベナーをお勧めいたします。

他のワクチンと接種間隔は?また他のワクチンと同時接種できますか?

他の生ワクチン(水ぼうそうやおたふくなど)接種後4週、他の不活化ワクチン接種後1週をあけて、プレベナーを接種することができます。またプレベナー接種後1週で、他のワクチンを接種することができます。ヒブワクチンと同様に、三種混合(DPT)と同時に接種することができます。他の不活化ワクチンと同時接種も可能ですが、実施実績が少ないので、当院ではあまりお勧めしておりません。

小児用肺炎球菌ワクチン「フレベナー」接種をご希望の方は、お電話(03-5704-0810)にてご予約ください。

費用は 接種1回 10,500円(税込)です。