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2009年12月号掲載記事

ロコモティブシンドローム

〜要介護・寝たきりにならないための合言葉〜

ロコモティブシンドロームとは?

骨、関節、筋肉などの運動器の働きが衰えると、暮らしの中の自立度が低下し、介護が必要になったり、寝たきりになる可能性が高くなります。日本整形外科学会では、運動器の障害のために要介護の状態や要介護リスクの高い状態を表す新しい言葉として「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」(以下「ロコモ」)を提唱しています。

要因

ロコモティブシンドロームの三大要因は骨粗鬆症、変形性関節症、脊柱管狭窄症です。

骨粗鬆症は骨の成分であるカルシウムやたんぱく質が少なくなり、骨の組織がスカスカになっているため、骨が脆くなり、軽い力が加わっただけでも骨折しやすくなります。 一度骨折を起こすと5人に1人が1年以内に再度骨折を起こします。薬物治療・運動療法・食事療法などによって治療できるので、早期発見のために、骨粗鬆症の検査を受けましょう。

関節の軟骨に生じて痛みや動きの制限を生じるのが変形性関節症です。膝関節や股関節に生じることが多く、50歳以上では1千万人以上がかかっていると言われています。

神経を保護し、かつその通り道である脊柱管が狭くなり、保護しているはずの神経を障害するのが脊柱管狭窄症です。頸椎と腰椎に生じルことが多く、頸椎のものは手の使いにくさ、歩行障害、軽微な外傷での脊髄損傷の原因となります。腰椎のものは歩き続けると下肢の痺れや痛みを生じてそれ以上歩けなくなり、休息すると再び歩けるようになる「間欠性跛行」の症状を呈します。 そのほか、バランスを保つ能力の低下による易転倒生、筋肉の力の低下などがロコモティブシンドロームの大きな要因です。これらが複合したり、各々が各々を増悪させたりして、運動器の機能を低下させていきます。

ロコチェック

下記の項目で一つでも該当すれば「ロコモ」の心配があるといえます。

  1. 片足立ちで靴下がはけない
  2. 家の中でつまずいたり滑ったりする
  3. 階段を昇るのに手すりが必要だ
  4. 横断歩道を青信号で渡りきれない
  5. 15分くらい続けて歩けない

ロコモーショントレーニング(ロコトレ)

ロコモティブシンドロームが疑われるが三大疾患がない場合、またそれらがあっても治療の経過中に医師から許された場合は、運動訓練が有効です。高齢者の介護予防にはゆっくりとした動きを伴う筋力訓練をバランス訓練が有効で、ロコトレには片足起立訓練とスクワットを採用されています。

介護を必要とせずに自立した生活を送る"健康寿命"を延ばすために、ロコトレを日常生活に組み込み、継続しましょう。