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2009年08月号掲載記事

小児の低身長

同じ年齢、同性の平均身長より2標準偏差(-2SD)以上下回っている場合を、低身長と定義しており、全小児の約2%が低身長に該当しますが、内分泌異常など治療の対象になる低身長はそのうちの5%以下です。

低身長の診断基準になる身長を表に示します

身長が伸びる年齢には個人差があるので、成長曲線に身長の推移をプロットしてみることをお勧めいたします。

成長曲線用のグラフは下記のサイトからダウンロードできます。

http://ghw.pfizer.co.jp/gh/c_down/index.html

低身長の原因と種類

低身長の原因には以下のようなものがあります。

家族性低身長・体質性低身長[小人症]

遺伝的なもの、体質的なものによる低身長。低身長の原因の約半分がこれにあたる。正常低身長とも呼ばれ医学的には低身長とはならず、ホルモン治療の対象とはならない。

思春期遅発症

「おくて」と呼ばれる発育の遅れによる低身長。治療は必要なく、通常は正常な身長に戻る。

思春期早発症

思春期遅発症とは逆に早熟なために成長が早く止まってしまうことで起こる低身長。始めのうちは周りと比べ一時的に成長が早くなるが、すぐに止まってしまうのが特徴。

成長ホルモン分泌不全性低身長症[下垂体性小人症]

成長ホルモンの不足によって起こる低身長。10歳までの早い時期にホルモン治療を受けると治療効果が高い。

甲状腺機能低下症[クレチン症]

甲状腺ホルモンの不足によって起こる低身長。10歳までの早い時期にホルモン治療を受けると治療効果が高い。

ターナー症候群

染色体の異常による低身長。X染色体の問題で起こるため女性だけに起こる。2000人に1人の割合といわれ、最終身長は140cm前後であることが多い。

軟骨異栄養症

骨軟骨の問題による低身長。手足の関節部の骨軟骨の成長が悪くなり、極端な低身長(最終身長130cm前後)となるのが特徴。

低出生体重性低身長[子宮内発育不全]

子宮内での栄養不足による低身長。妊娠中の母体の栄養不足、喫煙などによって起こる。

愛情遮断性低身長

家庭内の問題や社会的な問題などにより精神的なストレスから起こる低身長。

プラダー・ウィリー症候群

15番染色体の異常による遺伝病。低身長以外にも筋緊張低下、性腺発育不全、性格異常、肥満などの症状がある。

慢性腎不全

腎臓に問題があり、尿が正常に作られない場合、発育不全となり低身長となる可能性がある。

低身長が疑われたら

治療の対象になる低身長は少なく、多くの場合は無治療での経過観察となりますが、低身長がきっかけに内分泌異常や、脳腫瘍が発見されることもあります。また内分泌異常に対するホルモン治療は、治療開始時期が遅れると効果が得られません。

低身長がご心配の方は、これまでの身長の経過のわかるものをお持ちの上、ご来院ください。当院では、診察の上、国立成育医療センターや昭和大学病院の専門医へご紹介させていただいております。

なお、校医をしている大岡山小学校では、春の健康診断の結果で低身長が疑われる方には、保健室からお便りを差し上げていますので、夏休みを利用して、ぜひご来院ください。