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2006年11月号掲載記事

インフルエンザワクチン

インフルエンザワクチンとは

インフルエンザワクチンは、大量に培養されたインフルエンザウィルスの粒子を集め、加熱や薬剤処理によって病原性を消失させたものです。

これを接種することで、体内にインフルエンザウィルスに対する抗体ができ、感染を予防したり、かかった時に症状が軽く済むようになります。

インフルエンザワクチンの中身

インフルエンザウィルスには、いくつものタイプ(株)があります。毎年、その中から流行すると予測される株が選定され、それを使ってワクチンが作られます。よって、インフルエンザワクチンの中身は毎年異なります。

ワクチンに含まれる成分

  • ワクチン主成分(ウィルス粒子・ウィルス構成成分)
  • 添加物(安定剤・保存剤)

インフルエンザワクチンの作り方

ウィルスは、生きた細胞内でしか増殖することができません。インフルエンザワクチンの製造にはニワトリの卵が使われています。(Fig.1)

また、ワクチンは、国家検定という国が行う厳しい検定で有効性と安全性が認められなければ、世に出ることができません。

接種の時期について

インフルエンザワクチンは、接種してから効果が十分に発揮されるまでに2週間ほどかかります。インフルエンザが流行し始める前に接種することが重要です。

効果は約5ヶ月持続すると言われています。

接種を検討している方は、できるだけ12月中旬までに接種するよう計画しましょう。

インフルエンザワクチンQ&A

当院でよくあるご質問

接種回数はどうしたらいいの?

接種回数については定説がありません。

すでにほとんどの大人はインフルエンザの基礎免疫があるので、そのシーズンに1回実施で、翌年の春ごろまで十分に効果が持続します。特に昨年予防接種を受けた方、インフルエンザに罹ってしまった方は、1回で十分だとおもいます。欧米では1回実施がほとんどです。

小児、学童に関しては、2回実施したほうが効果的(学校の欠席者が少ない、学級閉鎖が少なかった)という国内のデータもあります。したがいまして接種回数は、13歳以上(中学生以上)の大人は1回、小学生は1回または2回、小学生未満は2回実施を原則とし、1回目接種の際に個別にご相談の上決めたいとおもいます。2回目の接種は1回目から4週間後が理想です。

去年は接種したのにインフルエンザにかかってしまった。予防接種は効かないのでは?

その年のインフルエンザにかかる率が20%、すなわち100人のうち20人だったとします。その100人に効果70%のワクチンを接種すれば、罹るはずの20人のうち7割、14人は罹らなくて済む、すなわち罹る人は6人になるのです。逆の見方をすれば、接種しても罹る人は100人中6人いるということです。1,000人接種すれば60人、10,000人接種すれば600人の「接種したのに罹る人」が出ます。接種率が上がれば上がるほど、接種したのに罹る人の数も増えてしまうのです。

また接種しなくても罹らなかった人と、接種したおかげで罹らなかった人の区別はできないので、罹らなかった人の「接種してよかった」、という満足度はあまり高くありません。反対に「接種したのにかかってしまった」という人の不満感は大きく、インフルエンザで受診されて待合室で患者さん同士がそんな話しをする機会もあることから、不満感が過剰に増幅されているのだとおもいます。