医療記事一覧

医療情報

2006年5月号掲載記事

冠動脈疾患を予防しましょう

軽度・中等度の高脂血症を治療することで、将来の心臓突然死を減らすことができます

冠動脈疾患とは?

冠動脈疾患とは、動脈硬化症が原因で血管の内側が狭窄して心臓の筋肉への血液の供給が減少したり、血液が途絶えることによって心臓が酸素不足に陥り胸痛発作が起こる病気です。本来、動脈硬化は加齢と共に進行し発症するため「成人病」と呼ばれていました。しかし、食事の欧米化など生活習慣の変化によって冠動脈危険因子を持つ患者さんの若年化により、現在では生活習慣病と呼ばれています。

冠動脈疾患は、虚血性心疾患とも呼ばれ「狭心症」と「心筋梗塞」の2つの病態があります。

冠動脈疾患によって生命に危険を生じる重篤な合併症を引き起こします。

冠動脈疾患の危険因子

高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満、家族歴、喫煙、加齢等が冠動脈疾患の大きな危険因子と考えられています。

高脂血症 〜冠動脈疾患リスクを軽減するために〜

冠動脈疾患を予防するためには、冠動脈疾患の危険因子を少しでも減らす必要があります。つまり、高脂血症、高血圧、糖尿病といった疾病の治療や予防、肥満の改善、禁煙といった活動が必要になります。

冠動脈疾患の危険因子の一つである「高脂血症」を取り上げると、総コレステロール、LDLコレステロールなどのコレステロールをコントロールすることの最終目的は「狭心症」や「心筋梗塞」といった冠動脈疾患を予防することです。

このたび、わが国の代表的な高脂血症治療剤である「メバロチン」の日本人を対象とした大規模臨床試験の結果が発表されました。8000人の患者さんを対象に10年間の調査が行われ、グラフのように、総コレステロール値は220(mg/dL)〜270(mg/dL)の軽症・中等症の高脂血症患者さんのうち、メバロチンで高脂血症を治療したグループの患者さんは、服用しないグループよりも、冠動脈疾患が33%、総死亡が28%低下しました。

これは莫大なデータから求められた信頼できる結果であるということで、国内外から高い評価を得ています。

軽症・中等症の高脂血症の患者さんは、特に自覚症状もないのでそのまま経過を見てしまうことが多いのですが、治療で冠動脈疾患の危険性を大きく軽減できることが実証されたことから、今後は当院でも積極的に治療する方針をとることにいたしました。 AED(自動体外式除細動器)を稼動させないためにも。