ひもんや俳壇

ひもんや俳壇 2010

1月号

一般投句

  • 本州を台風一過富士も見ゆ
    川喜田秀雄
  • 花咲きてこの生垣も金木犀
    富所 敬子
  • 地下街を出て驚きぬ日短
    半澤 篤
  • 芦ノ湖の秋引き寄せて竿を振り
    栗原 敏雄

向原喜楽会・不動会

  • 友禅の着物さながら紅葉山
    安藤 虎雄
  • 小鳥鳴くエプロン結びつゝ庭へ
    東  孝
  • ひきたての朝のコーヒー小鳥来る
    半澤ハツ子
  • 鳥渡るディズニーランドてふ国へ
    森 譜稀子
  • 身構へて小鳥そこまで来てをりぬ
    柴崎 英子
  • すゝき原銀の波間におぼれたり
    武井 康子
  • 供花のなき外人墓地に小鳥来る
    笹島美和子
  • 月照らす京に金閣銀閣寺
    廣門登喜子
  • ぷつぷつとどんぐりを踏む朝の径
    森崎 富貴
  • ほの暗き菓舗に一鉢菊明り
    吉田 新子
  • 一輪の菊に備前の壺適ふ
    野口 永子
  • 秋草の知るも知らぬも好ましく
    川部 義明
  • 寄り道をしよかしまひか秋の雨
    佐々木 弘
  • 一群の小鳥一樹に納まりぬ
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 生けるものしばし休めと黄落す
    苅野 玲子
  • 色変えぬ松美しく毛越寺
    渡辺 幸江
  • 色変へぬ松我が同人我が母校
    千葉百合子
  • 黄落を踏みしめ孫の文化祭
    安達久美子
  • 木枯や夜更けの辻の街路灯
    苅野 節子

わかみどり会

  • 手術後の今日の献立秋づくし
    浅田 智子
  • 旧館の外壁覆ふ蔦紅葉
    清水 悠子
  • 子の齢またも尋ねる夜長かな
    畑山 則子

ミモザ会

  • 賛美歌のひときわ高くクリスマス
    佐々木巴里
  • 奉納の菊ともなれば身じろがず
    三国 紀子
  • みごもりの眉うすうすと毛糸編む
    石橋万喜子

2月号

一般投句

  • 侘助や孤高に生きて八十年
    浅田 貞行
  • 昔我が剪定せし垣椿咲く
    川喜田秀雄
  • 満開の椿支へて幹堅し
    川喜田秀雄

向原喜楽会・不動会

  • 年用意俄か隠居となりにけり
    安藤 虎雄
  • 今年また心じたばた年用意
    小澤たん子
  • 冬帽子欠かせぬものとなりにけり
    半澤ハツ子
  • おでん酒苦労話を楽し気に
    森 譜稀子
  • 徒労なる一日もありて年の暮
    柴崎 英子
  • 雪吊の縄百本の技巧かな
    武井 康子
  • ロビーには螺旋階段ポインセチア
    笹島美和子
  • ガラス窓磨ける景も年の暮
    廣門登喜子
  • 帰る人見送る人に冬の月
    森崎 富貴
  • 風邪気味に何よりジンジャーティ貰ふ
    吉田 新子
  • 黄落の林に子等の声高く
    川部 義明
  • 毎日が日曜日なり日向ぼこ     
    佐々木 弘
  • 常連としての氣易さおでん酒
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 七草や日々の暮しに戻りけり
    苅野 玲子
  • 箸袋一つふえたる節料理
    渡辺 幸江
  • 年ごとに束厚くなる年賀状
    千葉百合子
  • 境内の湯気に並んで薺粥
    安達久美子
  • 今年こそ逢ひたしと書く年賀状
    苅野 節子

わかみどり会

  • 資格得しこと添へ孫の御慶かな
    浅田 智子
  • 着飾りてちょっとおすまし初句会
    清水 悠子
  • 軒下の日差しおだやか初雀
    畑山 則子

ミモザ会

  • 松過ぎや衣桁の物を袖だたみ
    佐々木巴里
  • 弾けんとする漲りの梅蕾
    三国 紀子
  • 継当ての知恵のゆかしき縫始
    石橋万喜子

3月号

一般投句

  • 鼻先を吹き抜ける風余寒かな
    浅田 貞行
  • 雀等に鶯一羽交りゐて
    川喜田秀雄
  • 初富士を双眼鏡でまた仰ぐ
    富所 敬子

向原喜楽会・不動会

  • 天寿うけ七たび干支の年始
    安藤 虎雄
  • 初みくじ大吉と出て懐に
    小澤たん子
  • 真っ新な未来を開く初暦
    半澤ハツ子
  • 旅籠跡廓の跡も恵方道
    森 譜稀子
  • 折鶴の尾羽つんと立て千代の春
    柴崎 英子
  • 銀色の風吹きぬくる樹氷林
    武井 康子
  • 襟元を合はせ直して初電話
    笹島美和子
  • 大きくは望まぬ願ひ初詣
    廣門登喜子
  • 初日の出地には吾が影鳥の影
    森崎 富貴
  • 初句会アンチエージの勢揃ひ
    吉田 新子
  • 紅色の器華やぎ新年会
    野口 永子
  • 蝋梅のほのかに匂ふ石畳
    川部 義明
  • 落葉踏む見えざる段差に気を使ひ
    佐々木 弘
  • 初春に友が来りて酒すすむ
    西嶋 邦夫
  • さまざまの願ひ行き交ふ初詣
    山形 定房
  • 朝風呂にして初風呂でありにけり
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 梅の香に誘われ少し遠回り
    苅野 玲子
  • クロッカス音符のごとく咲き始め
    渡辺 幸江
  • 日差し浴び小さき微笑みクロッカス
    千葉百合子
  • うぐいすの姿みつけてラジオ・オフ
    安達久美子
  • ガラス戸に冬の光のやわらかく
    苅野 節子

わかみどり会

  • 初春の御来光拝し成田山
    浅田 智子
  • 注連飾り老人ホームもあらたまる
    清水 悠子
  • 雪の嵩尺で言ひ合ふ齢かな
    畑山 則子

ミモザ会

  • 時刻む如きかがやき寒の星
    佐々木巴里
  • 品書きのその華やぎも新年会
    三国 紀子
  • 下萌や光を跳ねて筑豊線
    石橋万喜子

4月号

一般投句

  • 来世へのツアー夢見る彼岸かな
    浅田 貞行
  • 退院後の我が初富士の穏やかに
    川喜田秀雄
  • 春宵の月を拾ひし五階かな
    川喜田秀雄
  • 垣根越し見ゆる紅梅眩しめる
    富所 敬子
  • 今朝咲きしばかりの白き寒椿
    富所 敬子
  • 日の彩の口紅選び初詣
    半澤 篤
  • 毎日が新しき風草萌ゆる
    半澤 篤

向原喜楽会・不動会

  • あちこちとモデルの忙し梅見会
    安藤 虎雄
  • 下萌えて万物動き初めけり
    小澤たん子
  • 底ぬけの空の明るさ春立てり
    半澤ハツ子
  • 豆撒きの由来を裏に鬼の面
    森 譜稀子
  • 北国の暦動かし草青む
    柴崎 英子
  • 塔かすみ鐘の余韻も霞みけり
    武井 康子
  • 富士見えぬ詫びをしきりに梅見茶屋
    笹島美和子
  • 年の豆わが歳月を手のひらに
    廣門登喜子
  • 埃にもまみれず白き梅ふふむ
    森崎 富貴
  • 留守の戸に挿み文あり春浅し
    吉田 新子
  • 紅梅も見ず若者の走り去る
    川部 義明
  • 剪定を逃れし梅の驕りかな
    佐々木 弘
  • 都心にも古墳ありけり下萌ゆる
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 春泥に遊びし犬の足洗ふ
    苅野 玲子
  • 雛あられひとつこぼれ落つ青畳
    渡辺 幸江
  • 初恋の男子誘ひし雛まつり
    千葉百合子
  • 背伸びして母と飾りし内裏雛
    安達久美子
  • 雛あられ調度の椀でおもてなし
    苅野 節子

わかみどり会

  • 侘助の只一輪に今朝の雨
    浅田 智子
  • 春塵や工事トラック行き来して
    清水 悠子
  • 頂きし草餠先づは仏壇に
    畑山 則子

ミモザ会

  • 花の雲五重塔の先抜けて
    佐々木巴里
  • 総立ちとなり日差し恋ふ辛夷の芽
    三国 紀子
  • 綾取りの橋手渡せば風光る
    石橋万喜子

5月号

一般投句

  • 芽吹く時炎となりぬ紅かなめ
    浅田 貞行
  • 三月十日明けて真白の富士残る
    川喜田秀雄
  • 富士白し取り巻く八ッ嶺はだらなる
    川喜田秀雄
  • 路地を折れ曲がればそこにミモザかな
    富所 敬子
  • 高枝に揺れる木蓮空青し
    富所 敬子
  • ほろ苦き母の小言や蕗のたう
    半澤 篤

向原喜楽会・不動会

  • 夕映えの流れに雛の遠ざかる
    安藤 虎雄
  • 春の雪とはためらいながら降る
    小澤たん子
  • 病棟に開花の話聞こえくる
    半澤ハツ子
  • 新しき命を宿し雛の客
    森 譜稀子
  • 春めくや行列ながき水族館
    柴崎 英子
  • 湯の宿の静かな帳春の雪
    武井 康子
  • 春の雪幌に客待つ人力車
    笹島美和子
  • 何の木か解らぬままに芽吹きをり
    廣門登喜子
  • 卒業の孫と並びて背くらべ
    森崎 富貴
  • 川沿ひの花のぼんぼり灯り初む
    吉田 新子
  • 森ありて初音待たるゝ窓の外
    川部 義明
  • 傘さそかささぬか迷ふ春の雨
    佐々木 弘
  • 田楽の崩れも家庭料理かな
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 櫻東風風鐸の音に立ちつくす
    苅野 玲子
  • 花冷といふ言葉好き刻も好き
    渡辺 幸江
  • 風鐸を揺らす風あり竹の秋
    千葉百合子
  • 円融寺御仏の庭花の庭
    安達久美子
  • 青空を壁紙として辛夷咲く
    苅野 節子

わかみどり会

  • 手作りのあられに雛も目を細め
    浅田 智子
  • ランドセル背よりはみ出一年生
    清水 悠子
  • 散髪で男前上げ卒業す
    畑山 則子

ミモザ会

  • 草餠の香り褒め合ふ茶席かな
    佐々木巴里
  • 耕に鴉離れず近寄らず   
    三国 紀子
  • 手庇に富士引き寄せて茶摘かな
    石橋万喜子

6月号

一般投句

  • 花散りて漆黒の川面み廻りぬ
    川喜田秀雄
  • 九階の窓広々と春の雲
  • この辺り吾子と遊びし桜山
    富所 敬子
  • 花見酒見てるこちらも浮かれ顔
  • 流されて押し戻されて花の屑
    半澤 篤

向原喜楽会・不動会

  • 花見より先づ陣取りの一仕事
    安藤 虎雄
  • 見下ろして都心の桜こんなにも
    小澤たん子
  • はらはらとひらひらと散る桜かな
    半澤ハツ子
  • 夕ざくら虚子も見あげし鐘ここに
    森 譜稀子
  • ふわふわの綿菓子みたい春の雲
    柴崎 英子
  • 花筏分けて進める手漕舟
    武井 康子
  • うらヽかや釣れし合図の手を上げて
    笹島美和子
  • 己が影ゆっくり踏んで春惜しむ
    廣門登喜子
  • 春泥をまたぎつヽ行く御苑道
    森崎 富貴
  • 花冷や出そびれて何するでなく
    吉田 新子
  • 鶯の一直線に飛び去りぬ
    川部 義明
  • 鼻先に春の蠅とぶ日和かな
    佐々木 弘
  • うらヽかや利根は光の帯となる
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 忘れ霜明日は別の風となる
    苅野 玲子
  • 栗駒の橋のたもとの別れ霜
    渡辺 幸江
  • 髪結ひて下駄をならして宵祭り
    千葉百合子
  • はじめての祭装束肩車
    安達久美子
  • シャボン玉もろ手を上げて待つ子かな
    苅野 節子

わかみどり会

  • あたヽかや安否問ひ来る孫のゐて
    浅田 智子
  • 欄干にふれては散りぬ川桜
    清水 悠子
  • お返事をきちんと言へて入園す
    畑山 則子

ミモザ会

  • 廃校の広きグランド麦の秋
    佐々木巴里
  • 風光る更に光りて蝶過ぎる
    三国 紀子
  • 田水張り終へたる村に星揃ふ
    石橋万喜子

7月号

一般投句

  • 更衣帽子も白に取替へて
    浅田 貞行
  • 花過ぎの花水木また清々し
    川喜田秀雄
  • 花椎や或る年下枝伐り払ひ
  • 藤の花人出をよそにまだ三分
    富所 敬子
  • 新緑の池面にひしめく緋鯉かな

向原喜楽会・不動会

  • 新聞の兜かぶる子菖蒲の日
    安藤 虎雄
  • 年三度咲かせ自慢のクレマチス
    小澤たん子
  • 校庭に高鳴るチャイム風五月
    半澤ハツ子
  • 花は葉に史跡めぐりを重ね来て
    森 譜稀子
  • 葉桜や上野の森は蔭深き
    柴崎 英子
  • 目に青葉舟唄ひびく岩だたみ
    武井 康子
  • 五月はや硯の海の乾き易
    笹島美和子
  • 住吉祭松に響ける笏拍子
    廣門登喜子
  • 血の騒ぐ三社祭と聞くだけで
    森崎 富貴
  • 穴子丼売切れランチタイムかな
    吉田 新子
  • 若頭祭提灯高々と
    川部 義明
  • 海の闇引き抜くやうに穴子釣る
    佐々木 弘
  • 鉄線花茶道教授と小さく札
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 身をかがめすずらんの香を確かめる
    苅野 玲子
  • 親竹を追ひ越さむとて今年竹
    渡辺 幸江
  • すずらんの花をつなげてテアラとす
    千葉百合子
  • すずらんの揺れて調べを奏でさう
    安達久美子
  • とび色の皮脱ぎ捨てて今年竹
    苅野 節子

わかみどり会

  • 通院も花のトンネル花の街
    浅田 智子
  • 古民家に機織る音の目借時
    清水 悠子
  • 建築の足場の高さ桜咲く
    畑山 則子

ミモザ会

  • 河川敷野球場まで梅雨出水
    佐々木巴里
  • 夏霧や白砂青松影もなし
    三国 紀子
  • 集落の出水の上をヘリコプター
    石橋万喜子

8月号

一般投句

  • ものの芽や椎の実生をたのもしと
    川喜田秀雄
  • 大楠の青葉剪定ひねもす見つ
  • 梅雨空に橡の葉揺れる登り坂
    富所 敬子
  • 六月の新刊匂ふ地下書房
    半澤 篤

向原喜楽会・不動会

  • 大南風庭をゆるがし過ぎゆけり
    安藤 虎雄
  • 行儀良く箱に納まるさくらんぼ
    小澤たん子
  • 梅雨入り告ぐ女性予報士傘さして
    半澤ハツ子
  • マングローブ分け入る船に南風強し
    森 譜稀子
  • 梅雨寒や省略したき厨ごと
    柴崎 英子
  • さくらんぼ種子飛ばしっこしてはしゃぐ
    武井 康子
  • 裏口にまはりても留守柿の花
    笹島美和子
  • さくらんぼつまめる爪も赤くして
    廣門登喜子
  • 梅雨空や胸に棲みつくふさぎ虫
    森崎 富貴
  • 父の日と雖も母を中心に
    吉田 新子
  • 孫娘惜しみつゝ呉れさくらんぼ
    川部 義明
  • 書きかけの手紙そのまゝ梅雨に入る
    佐々木 弘
  • 手秤りに三つ四つおまけさくらんぼ
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 雨止みて春せみの声はじまりぬ
    苅野 玲子
  • 木苺や夕刊の無き村暮らし
    渡辺 幸江
  • 見あぐれば今年も豊か柿の花
    千葉百合子
  • 梅雨明けを待つ公園のすべり台
    安達久美子
  • 塾に行く大きなカバン夏休み
    苅野 節子

わかみどり会

  • 念入りに厨掃除や梅雨晴間
    浅田 智子
  • ビルに囲まれて薄暑の浜離宮
    清水 悠子
  • ぜんまいののの字ほどきて母のこと
    畑山 則子

ミモザ会

  • 定置網の白き浮玉つばくらめ
    佐々木巴里
  • 植田はや水に棲むもの賑々し
    三国 紀子
  • 岩に置く遊びつかれし夏帽子
    石橋万喜子

9月号

一般投句

  • 尖塔や家並のひまの梅雨空に
    川喜田秀雄
  • 梅雨明けて富士逆光に立ちにけり
  • はまゆうの花咲きし今朝晴れ上がり
    富所 敬子
  • パラソルの白をかしげて道問はれ
    半澤 篤

向原喜楽会・不動会

  • 朝顔や子の丹精の大輪に
    安藤 虎雄
  • サングラスかけて泣かれてしまひけり
    小澤たん子
  • 流行とは無縁でありしサングラス
    半澤ハツ子
  • サングラス外せば美男美男なりし
    森 譜稀子
  • 朝顔を咲かせレトロな美容室
    柴崎 英子
  • サングラス帽子目深にあなた誰
    武井 康子
  • 出迎へに外す帰国のサングラス
    笹島美和子
  • 試食して買ふ気なかりし西瓜買ふ
    廣門登喜子
  • 角曲がりくればのうぜん花ざかり
    森崎 富貴
  • 旅終へて普段着が好き冷奴
    吉田 新子
  • にこやかに選挙ポスター梅雨深し
    川部 義明
  • 口数の少なくなりし酷暑かな
    佐々木 弘
  • お土産の西瓜が先に着きにけり
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 息止めて手花火の先見つめけり
    苅野 玲子
  • 応援歌声をかぎりの極暑かな
    渡辺 幸江
  • 白鷺の足を映して水青し
    千葉百合子
  • スカートの裾ふれただけ鳳仙花
    安達久美子
  • 赤き玉落ちて手花火お開きに
    苅野 節子

わかみどり会

  • 朝顔の色とりどりの花屏風
    浅田 智子
  • 幾つもの橋をくぐりて船遊び
    清水 悠子
  • 木の間より誘ふごとく滝の音
    畑山 則子

ミモザ会

  • 板の間に薬味盛り上げ泥鰌鍋
    佐々木巴里
  • 神鶏も免れがたき抜羽かな
    三国 紀子
  • 夜店の灯映る金魚を掬ひけり
    石橋万喜子

10月号

一般投句

  • 駿河今し夏曙の富士碧く
    川喜田秀雄
  • どう見ても口開く鰐ぞ秋の雲
  • 花揺らぐ白さるすべり清々し
    富所 敬子
  • 梨一つもぎ取る孫の得意顔

向原喜楽会・不動会

  • 終戦日過去を語れる平和な日
    安藤 虎雄
  • 自転車のバックミラーに稲光
    小澤たん子
  • 終戦日昭和の時計正午打つ
    半澤ハツ子
  • 今一度読みたき童話秋立ちぬ
    森 譜稀子
  • 信濃路の山より昏れて夜の秋
    柴崎 英子
  • 盆土産迷ひまよひてまた同じ
    武井 康子
  • 山荘のこれも手作り蠅叩
    笹島美和子
  • いい風に会へて汗引く句会かな
    廣門登喜子
  • サボテンの白い花咲く終戦日
    森崎 富貴
  • すこやかに笑顔揃へて秋日傘
    吉田 新子
  • 翡翠や林試の森に人垣を
    川部 義明
  • 暑気払ひくらしの疲れ癒しけり
    佐々木 弘
  • 終戦の日の青空を忘れまじ
    山形 定房
  • 烏瓜咲けるほったらかしの庭
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 田に畑に働く人や天高し
    苅野 玲子
  • 秋扇はたと止みたる艶話
    渡辺 幸江
  • 定年を迎へし夫の秋団扇
    千葉百合子
  • もろこしの粒の整然目を見張る
    安達久美子
  • 線路沿ひ土手埋め尽くす葛の花
    苅野 節子

わかみどり会

  • 一匹は偵察蟻か我庭に
    浅田 智子
  • 格子戸をくぐり句会の夏館
    清水 悠子
  • たよたよと墓を巡りて秋の蝶
    畑山 則子

ミモザ会

  • 土手に足のばして仰ぐ揚花火
    佐々木巴里
  • 秋蝉の高ぶり和してもつれなし
    三国 紀子
  • とりきれぬ草の実つけて塾へゆく
    石橋万喜子

11月号

一般投句

  • 物言はぬ石にもの云ふ墓参かな
    浅田 貞行
  • 仰ぎたるまなざしの先今日の月
    川喜田秀雄
  • 虫除けのスプレーをしてぶどう狩り
    富所 敬子
  • 母とゐて尾花の風となりにけり
    半澤 篤

向原喜楽会・不動会

  • 蟷螂の獲物に挑む身の構へ
    安藤 虎雄
  • 梨たわわなるゆきあひの空の下
    小澤たん子
  • 嫋々の風昏れを呼ぶ花芒
    半澤ハツ子
  • まだ少し力んでをりし芒かな
    森 譜稀子
  • うさぎらし動く気配に尾花ゆれ
    柴崎 英子
  • 雲流るふるさとなりし芋煮会
    武井 康子
  • 下校児の絶えて蜻蛉の道となる
    笹島美和子
  • コスモスに見え隠れせる道祖神
    廣門登喜子
  • 歩道橋より遠く見る鰯雲
    森崎 富貴
  • 世のことはよそに初冠雪の富士
    吉田 新子
  • 旅日誌成りしを供へ盆に入る
    川部 義明
  • 読みさしの書をまた開く秋灯
    佐々木 弘
  • ゲレンデとなる日も近し芒刈る
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 主なき家にむらさきしきぶの実
    苅野 玲子
  • テラスにてパリの紅茶を小鳥来る
    渡辺 幸江
  • 釣り糸を桜紅葉の中に垂れ
    千葉百合子
  • 歳時記を繰りて灯火に親しめり
    安達久美子
  • 黄ばむ葉の蔭にたわわの実むらさき
    苅野 節子

わかみどり会

  • 病棟の窓よりの富士さやけしや
    浅田 智子
  • 川風にちょうちん揺れて花火待つ
    清水 悠子
  • 砂動き足裏くすぐる秋の浜
    畑山 則子

ミモザ会

  • 秋しぐれ富士の真上に笠の雲
    佐々木巴里
  • 海苔ひびの杭につまづく秋の潮
    三国 紀子
  • 木犀や手ばなせし家避け通る
    石橋万喜子

12月号

一般投句

  • まらうどを持て成す今朝の金木犀
    川喜田秀雄
  • 山茱萸の実いつ宝玉に化したるや
  • 彼岸花辻の地蔵を囲みをり
    富所 敬子
  • 秋雨や運動会は三たび延び
  • 美しく歩かう街の秋日和
    半澤 篤

向原喜楽会・不動会

  • 江の電の軒の間に間に秋の海
    安藤 虎雄
  • ブータンの松茸土瓶蒸となる
    小澤たん子
  • 雲のさまがらりと変はり今朝の秋
    半澤ハツ子
  • 一喝の座禅の竹刀秋思断つ
    森 譜稀子
  • 置き去りの砂場の玩具秋時雨
    柴崎 英子
  • その中に酢橘も一つ阿波みやげ
    武井 康子
  • 灯火親し辞書に無き字にこだはりて
    笹島美和子
  • ゆれ揃ふ事なく揺るゝ秋桜
    廣門登喜子
  • 落ちさうにころがりさうに露の玉
    森崎 富貴
  • 息災にしみじみ秋と思ひけり
    吉田 新子
  • 落蝉の残る力に飛び去りぬ
    川部 義明
  • 鰯雲徹夜の肩の重かりし
    佐々木 弘
  • 賽す音のみ秋冷の大伽藍
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 飼犬をいだき寄せたる夜寒かな
    苅野 玲子
  • 打掛けの花の総柄秋日和
    渡辺 幸江
  • 部屋奥に積まれし本にまで冬日
    千葉百合子
  • 落葉掃く昨日も今日も落葉掃く
    安達久美子
  • 内海の空に鳶舞ふ冬日和
    苅野 節子

わかみどり会

  • 秋彼岸一足飛びの寒さかな
    浅田 智子
  • 大花火色とりどりの星となる
    清水 悠子
  • 掃除機に吸はれてゆきし山の蟻
    畑山 則子

ミモザ会

  • 花の鉢置きかへて見る小春かな
    佐々木巴里
  • 白雲に乗り給ふかや神の旅
    三国 紀子
  • 色づいて重さ加へて富有柿
    石橋万喜子