ひもんや俳壇
ひもんや俳壇 2010
1月号
一般投句
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本州を台風一過富士も見ゆ
川喜田秀雄
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花咲きてこの生垣も金木犀
富所 敬子
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地下街を出て驚きぬ日短
半澤 篤
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芦ノ湖の秋引き寄せて竿を振り
栗原 敏雄
向原喜楽会・不動会
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友禅の着物さながら紅葉山
安藤 虎雄
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小鳥鳴くエプロン結びつゝ庭へ
東 孝
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ひきたての朝のコーヒー小鳥来る
半澤ハツ子
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鳥渡るディズニーランドてふ国へ
森 譜稀子
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身構へて小鳥そこまで来てをりぬ
柴崎 英子
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すゝき原銀の波間におぼれたり
武井 康子
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供花のなき外人墓地に小鳥来る
笹島美和子
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月照らす京に金閣銀閣寺
廣門登喜子
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ぷつぷつとどんぐりを踏む朝の径
森崎 富貴
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ほの暗き菓舗に一鉢菊明り
吉田 新子
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一輪の菊に備前の壺適ふ
野口 永子
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秋草の知るも知らぬも好ましく
川部 義明
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寄り道をしよかしまひか秋の雨
佐々木 弘
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一群の小鳥一樹に納まりぬ
黒澤三主寿
竹の子会
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生けるものしばし休めと黄落す
苅野 玲子
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色変えぬ松美しく毛越寺
渡辺 幸江
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色変へぬ松我が同人我が母校
千葉百合子
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黄落を踏みしめ孫の文化祭
安達久美子
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木枯や夜更けの辻の街路灯
苅野 節子
わかみどり会
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手術後の今日の献立秋づくし
浅田 智子
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旧館の外壁覆ふ蔦紅葉
清水 悠子
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子の齢またも尋ねる夜長かな
畑山 則子
ミモザ会
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賛美歌のひときわ高くクリスマス
佐々木巴里
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奉納の菊ともなれば身じろがず
三国 紀子
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みごもりの眉うすうすと毛糸編む
石橋万喜子
2月号
一般投句
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侘助や孤高に生きて八十年
浅田 貞行
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昔我が剪定せし垣椿咲く
川喜田秀雄
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満開の椿支へて幹堅し
川喜田秀雄
向原喜楽会・不動会
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年用意俄か隠居となりにけり
安藤 虎雄
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今年また心じたばた年用意
小澤たん子
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冬帽子欠かせぬものとなりにけり
半澤ハツ子
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おでん酒苦労話を楽し気に
森 譜稀子
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徒労なる一日もありて年の暮
柴崎 英子
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雪吊の縄百本の技巧かな
武井 康子
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ロビーには螺旋階段ポインセチア
笹島美和子
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ガラス窓磨ける景も年の暮
廣門登喜子
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帰る人見送る人に冬の月
森崎 富貴
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風邪気味に何よりジンジャーティ貰ふ
吉田 新子
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黄落の林に子等の声高く
川部 義明
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毎日が日曜日なり日向ぼこ
佐々木 弘
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常連としての氣易さおでん酒
黒澤三主寿
竹の子会
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七草や日々の暮しに戻りけり
苅野 玲子
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箸袋一つふえたる節料理
渡辺 幸江
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年ごとに束厚くなる年賀状
千葉百合子
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境内の湯気に並んで薺粥
安達久美子
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今年こそ逢ひたしと書く年賀状
苅野 節子
わかみどり会
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資格得しこと添へ孫の御慶かな
浅田 智子
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着飾りてちょっとおすまし初句会
清水 悠子
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軒下の日差しおだやか初雀
畑山 則子
ミモザ会
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松過ぎや衣桁の物を袖だたみ
佐々木巴里
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弾けんとする漲りの梅蕾
三国 紀子
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継当ての知恵のゆかしき縫始
石橋万喜子
3月号
一般投句
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鼻先を吹き抜ける風余寒かな
浅田 貞行
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雀等に鶯一羽交りゐて
川喜田秀雄
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初富士を双眼鏡でまた仰ぐ
富所 敬子
向原喜楽会・不動会
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天寿うけ七たび干支の年始
安藤 虎雄
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初みくじ大吉と出て懐に
小澤たん子
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真っ新な未来を開く初暦
半澤ハツ子
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旅籠跡廓の跡も恵方道
森 譜稀子
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折鶴の尾羽つんと立て千代の春
柴崎 英子
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銀色の風吹きぬくる樹氷林
武井 康子
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襟元を合はせ直して初電話
笹島美和子
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大きくは望まぬ願ひ初詣
廣門登喜子
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初日の出地には吾が影鳥の影
森崎 富貴
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初句会アンチエージの勢揃ひ
吉田 新子
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紅色の器華やぎ新年会
野口 永子
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蝋梅のほのかに匂ふ石畳
川部 義明
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落葉踏む見えざる段差に気を使ひ
佐々木 弘
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初春に友が来りて酒すすむ
西嶋 邦夫
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さまざまの願ひ行き交ふ初詣
山形 定房
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朝風呂にして初風呂でありにけり
黒澤三主寿
竹の子会
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梅の香に誘われ少し遠回り
苅野 玲子
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クロッカス音符のごとく咲き始め
渡辺 幸江
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日差し浴び小さき微笑みクロッカス
千葉百合子
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うぐいすの姿みつけてラジオ・オフ
安達久美子
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ガラス戸に冬の光のやわらかく
苅野 節子
わかみどり会
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初春の御来光拝し成田山
浅田 智子
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注連飾り老人ホームもあらたまる
清水 悠子
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雪の嵩尺で言ひ合ふ齢かな
畑山 則子
ミモザ会
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時刻む如きかがやき寒の星
佐々木巴里
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品書きのその華やぎも新年会
三国 紀子
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下萌や光を跳ねて筑豊線
石橋万喜子
4月号
一般投句
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来世へのツアー夢見る彼岸かな
浅田 貞行
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退院後の我が初富士の穏やかに
川喜田秀雄
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春宵の月を拾ひし五階かな
川喜田秀雄
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垣根越し見ゆる紅梅眩しめる
富所 敬子
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今朝咲きしばかりの白き寒椿
富所 敬子
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日の彩の口紅選び初詣
半澤 篤
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毎日が新しき風草萌ゆる
半澤 篤
向原喜楽会・不動会
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あちこちとモデルの忙し梅見会
安藤 虎雄
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下萌えて万物動き初めけり
小澤たん子
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底ぬけの空の明るさ春立てり
半澤ハツ子
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豆撒きの由来を裏に鬼の面
森 譜稀子
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北国の暦動かし草青む
柴崎 英子
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塔かすみ鐘の余韻も霞みけり
武井 康子
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富士見えぬ詫びをしきりに梅見茶屋
笹島美和子
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年の豆わが歳月を手のひらに
廣門登喜子
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埃にもまみれず白き梅ふふむ
森崎 富貴
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留守の戸に挿み文あり春浅し
吉田 新子
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紅梅も見ず若者の走り去る
川部 義明
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剪定を逃れし梅の驕りかな
佐々木 弘
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都心にも古墳ありけり下萌ゆる
黒澤三主寿
竹の子会
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春泥に遊びし犬の足洗ふ
苅野 玲子
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雛あられひとつこぼれ落つ青畳
渡辺 幸江
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初恋の男子誘ひし雛まつり
千葉百合子
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背伸びして母と飾りし内裏雛
安達久美子
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雛あられ調度の椀でおもてなし
苅野 節子
わかみどり会
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侘助の只一輪に今朝の雨
浅田 智子
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春塵や工事トラック行き来して
清水 悠子
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頂きし草餠先づは仏壇に
畑山 則子
ミモザ会
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花の雲五重塔の先抜けて
佐々木巴里
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総立ちとなり日差し恋ふ辛夷の芽
三国 紀子
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綾取りの橋手渡せば風光る
石橋万喜子
5月号
一般投句
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芽吹く時炎となりぬ紅かなめ
浅田 貞行
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三月十日明けて真白の富士残る
川喜田秀雄
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富士白し取り巻く八ッ嶺はだらなる
川喜田秀雄
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路地を折れ曲がればそこにミモザかな
富所 敬子
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高枝に揺れる木蓮空青し
富所 敬子
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ほろ苦き母の小言や蕗のたう
半澤 篤
向原喜楽会・不動会
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夕映えの流れに雛の遠ざかる
安藤 虎雄
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春の雪とはためらいながら降る
小澤たん子
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病棟に開花の話聞こえくる
半澤ハツ子
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新しき命を宿し雛の客
森 譜稀子
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春めくや行列ながき水族館
柴崎 英子
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湯の宿の静かな帳春の雪
武井 康子
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春の雪幌に客待つ人力車
笹島美和子
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何の木か解らぬままに芽吹きをり
廣門登喜子
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卒業の孫と並びて背くらべ
森崎 富貴
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川沿ひの花のぼんぼり灯り初む
吉田 新子
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森ありて初音待たるゝ窓の外
川部 義明
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傘さそかささぬか迷ふ春の雨
佐々木 弘
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田楽の崩れも家庭料理かな
黒澤三主寿
竹の子会
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櫻東風風鐸の音に立ちつくす
苅野 玲子
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花冷といふ言葉好き刻も好き
渡辺 幸江
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風鐸を揺らす風あり竹の秋
千葉百合子
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円融寺御仏の庭花の庭
安達久美子
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青空を壁紙として辛夷咲く
苅野 節子
わかみどり会
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手作りのあられに雛も目を細め
浅田 智子
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ランドセル背よりはみ出一年生
清水 悠子
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散髪で男前上げ卒業す
畑山 則子
ミモザ会
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草餠の香り褒め合ふ茶席かな
佐々木巴里
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耕に鴉離れず近寄らず
三国 紀子
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手庇に富士引き寄せて茶摘かな
石橋万喜子
6月号
一般投句
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花散りて漆黒の川面み廻りぬ
川喜田秀雄
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九階の窓広々と春の雲
同
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この辺り吾子と遊びし桜山
富所 敬子
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花見酒見てるこちらも浮かれ顔
同
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流されて押し戻されて花の屑
半澤 篤
向原喜楽会・不動会
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花見より先づ陣取りの一仕事
安藤 虎雄
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見下ろして都心の桜こんなにも
小澤たん子
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はらはらとひらひらと散る桜かな
半澤ハツ子
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夕ざくら虚子も見あげし鐘ここに
森 譜稀子
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ふわふわの綿菓子みたい春の雲
柴崎 英子
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花筏分けて進める手漕舟
武井 康子
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うらヽかや釣れし合図の手を上げて
笹島美和子
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己が影ゆっくり踏んで春惜しむ
廣門登喜子
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春泥をまたぎつヽ行く御苑道
森崎 富貴
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花冷や出そびれて何するでなく
吉田 新子
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鶯の一直線に飛び去りぬ
川部 義明
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鼻先に春の蠅とぶ日和かな
佐々木 弘
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うらヽかや利根は光の帯となる
黒澤三主寿
竹の子会
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忘れ霜明日は別の風となる
苅野 玲子
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栗駒の橋のたもとの別れ霜
渡辺 幸江
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髪結ひて下駄をならして宵祭り
千葉百合子
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はじめての祭装束肩車
安達久美子
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シャボン玉もろ手を上げて待つ子かな
苅野 節子
わかみどり会
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あたヽかや安否問ひ来る孫のゐて
浅田 智子
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欄干にふれては散りぬ川桜
清水 悠子
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お返事をきちんと言へて入園す
畑山 則子
ミモザ会
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廃校の広きグランド麦の秋
佐々木巴里
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風光る更に光りて蝶過ぎる
三国 紀子
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田水張り終へたる村に星揃ふ
石橋万喜子
7月号
一般投句
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更衣帽子も白に取替へて
浅田 貞行
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花過ぎの花水木また清々し
川喜田秀雄
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花椎や或る年下枝伐り払ひ
同
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藤の花人出をよそにまだ三分
富所 敬子
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新緑の池面にひしめく緋鯉かな
同
向原喜楽会・不動会
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新聞の兜かぶる子菖蒲の日
安藤 虎雄
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年三度咲かせ自慢のクレマチス
小澤たん子
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校庭に高鳴るチャイム風五月
半澤ハツ子
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花は葉に史跡めぐりを重ね来て
森 譜稀子
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葉桜や上野の森は蔭深き
柴崎 英子
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目に青葉舟唄ひびく岩だたみ
武井 康子
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五月はや硯の海の乾き易
笹島美和子
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住吉祭松に響ける笏拍子
廣門登喜子
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血の騒ぐ三社祭と聞くだけで
森崎 富貴
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穴子丼売切れランチタイムかな
吉田 新子
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若頭祭提灯高々と
川部 義明
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海の闇引き抜くやうに穴子釣る
佐々木 弘
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鉄線花茶道教授と小さく札
黒澤三主寿
竹の子会
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身をかがめすずらんの香を確かめる
苅野 玲子
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親竹を追ひ越さむとて今年竹
渡辺 幸江
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すずらんの花をつなげてテアラとす
千葉百合子
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すずらんの揺れて調べを奏でさう
安達久美子
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とび色の皮脱ぎ捨てて今年竹
苅野 節子
わかみどり会
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通院も花のトンネル花の街
浅田 智子
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古民家に機織る音の目借時
清水 悠子
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建築の足場の高さ桜咲く
畑山 則子
ミモザ会
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河川敷野球場まで梅雨出水
佐々木巴里
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夏霧や白砂青松影もなし
三国 紀子
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集落の出水の上をヘリコプター
石橋万喜子
8月号
一般投句
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ものの芽や椎の実生をたのもしと
川喜田秀雄
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大楠の青葉剪定ひねもす見つ
同
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梅雨空に橡の葉揺れる登り坂
富所 敬子
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六月の新刊匂ふ地下書房
半澤 篤
向原喜楽会・不動会
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大南風庭をゆるがし過ぎゆけり
安藤 虎雄
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行儀良く箱に納まるさくらんぼ
小澤たん子
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梅雨入り告ぐ女性予報士傘さして
半澤ハツ子
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マングローブ分け入る船に南風強し
森 譜稀子
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梅雨寒や省略したき厨ごと
柴崎 英子
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さくらんぼ種子飛ばしっこしてはしゃぐ
武井 康子
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裏口にまはりても留守柿の花
笹島美和子
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さくらんぼつまめる爪も赤くして
廣門登喜子
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梅雨空や胸に棲みつくふさぎ虫
森崎 富貴
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父の日と雖も母を中心に
吉田 新子
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孫娘惜しみつゝ呉れさくらんぼ
川部 義明
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書きかけの手紙そのまゝ梅雨に入る
佐々木 弘
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手秤りに三つ四つおまけさくらんぼ
黒澤三主寿
竹の子会
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雨止みて春せみの声はじまりぬ
苅野 玲子
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木苺や夕刊の無き村暮らし
渡辺 幸江
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見あぐれば今年も豊か柿の花
千葉百合子
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梅雨明けを待つ公園のすべり台
安達久美子
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塾に行く大きなカバン夏休み
苅野 節子
わかみどり会
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念入りに厨掃除や梅雨晴間
浅田 智子
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ビルに囲まれて薄暑の浜離宮
清水 悠子
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ぜんまいののの字ほどきて母のこと
畑山 則子
ミモザ会
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定置網の白き浮玉つばくらめ
佐々木巴里
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植田はや水に棲むもの賑々し
三国 紀子
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岩に置く遊びつかれし夏帽子
石橋万喜子
9月号
一般投句
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尖塔や家並のひまの梅雨空に
川喜田秀雄
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梅雨明けて富士逆光に立ちにけり
同
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はまゆうの花咲きし今朝晴れ上がり
富所 敬子
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パラソルの白をかしげて道問はれ
半澤 篤
向原喜楽会・不動会
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朝顔や子の丹精の大輪に
安藤 虎雄
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サングラスかけて泣かれてしまひけり
小澤たん子
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流行とは無縁でありしサングラス
半澤ハツ子
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サングラス外せば美男美男なりし
森 譜稀子
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朝顔を咲かせレトロな美容室
柴崎 英子
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サングラス帽子目深にあなた誰
武井 康子
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出迎へに外す帰国のサングラス
笹島美和子
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試食して買ふ気なかりし西瓜買ふ
廣門登喜子
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角曲がりくればのうぜん花ざかり
森崎 富貴
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旅終へて普段着が好き冷奴
吉田 新子
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にこやかに選挙ポスター梅雨深し
川部 義明
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口数の少なくなりし酷暑かな
佐々木 弘
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お土産の西瓜が先に着きにけり
黒澤三主寿
竹の子会
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息止めて手花火の先見つめけり
苅野 玲子
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応援歌声をかぎりの極暑かな
渡辺 幸江
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白鷺の足を映して水青し
千葉百合子
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スカートの裾ふれただけ鳳仙花
安達久美子
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赤き玉落ちて手花火お開きに
苅野 節子
わかみどり会
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朝顔の色とりどりの花屏風
浅田 智子
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幾つもの橋をくぐりて船遊び
清水 悠子
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木の間より誘ふごとく滝の音
畑山 則子
ミモザ会
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板の間に薬味盛り上げ泥鰌鍋
佐々木巴里
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神鶏も免れがたき抜羽かな
三国 紀子
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夜店の灯映る金魚を掬ひけり
石橋万喜子
10月号
一般投句
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駿河今し夏曙の富士碧く
川喜田秀雄
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どう見ても口開く鰐ぞ秋の雲
同
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花揺らぐ白さるすべり清々し
富所 敬子
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梨一つもぎ取る孫の得意顔
同
向原喜楽会・不動会
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終戦日過去を語れる平和な日
安藤 虎雄
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自転車のバックミラーに稲光
小澤たん子
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終戦日昭和の時計正午打つ
半澤ハツ子
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今一度読みたき童話秋立ちぬ
森 譜稀子
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信濃路の山より昏れて夜の秋
柴崎 英子
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盆土産迷ひまよひてまた同じ
武井 康子
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山荘のこれも手作り蠅叩
笹島美和子
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いい風に会へて汗引く句会かな
廣門登喜子
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サボテンの白い花咲く終戦日
森崎 富貴
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すこやかに笑顔揃へて秋日傘
吉田 新子
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翡翠や林試の森に人垣を
川部 義明
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暑気払ひくらしの疲れ癒しけり
佐々木 弘
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終戦の日の青空を忘れまじ
山形 定房
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烏瓜咲けるほったらかしの庭
黒澤三主寿
竹の子会
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田に畑に働く人や天高し
苅野 玲子
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秋扇はたと止みたる艶話
渡辺 幸江
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定年を迎へし夫の秋団扇
千葉百合子
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もろこしの粒の整然目を見張る
安達久美子
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線路沿ひ土手埋め尽くす葛の花
苅野 節子
わかみどり会
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一匹は偵察蟻か我庭に
浅田 智子
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格子戸をくぐり句会の夏館
清水 悠子
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たよたよと墓を巡りて秋の蝶
畑山 則子
ミモザ会
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土手に足のばして仰ぐ揚花火
佐々木巴里
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秋蝉の高ぶり和してもつれなし
三国 紀子
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とりきれぬ草の実つけて塾へゆく
石橋万喜子
11月号
一般投句
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物言はぬ石にもの云ふ墓参かな
浅田 貞行
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仰ぎたるまなざしの先今日の月
川喜田秀雄
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虫除けのスプレーをしてぶどう狩り
富所 敬子
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母とゐて尾花の風となりにけり
半澤 篤
向原喜楽会・不動会
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蟷螂の獲物に挑む身の構へ
安藤 虎雄
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梨たわわなるゆきあひの空の下
小澤たん子
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嫋々の風昏れを呼ぶ花芒
半澤ハツ子
-
まだ少し力んでをりし芒かな
森 譜稀子
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うさぎらし動く気配に尾花ゆれ
柴崎 英子
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雲流るふるさとなりし芋煮会
武井 康子
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下校児の絶えて蜻蛉の道となる
笹島美和子
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コスモスに見え隠れせる道祖神
廣門登喜子
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歩道橋より遠く見る鰯雲
森崎 富貴
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世のことはよそに初冠雪の富士
吉田 新子
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旅日誌成りしを供へ盆に入る
川部 義明
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読みさしの書をまた開く秋灯
佐々木 弘
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ゲレンデとなる日も近し芒刈る
黒澤三主寿
竹の子会
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主なき家にむらさきしきぶの実
苅野 玲子
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テラスにてパリの紅茶を小鳥来る
渡辺 幸江
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釣り糸を桜紅葉の中に垂れ
千葉百合子
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歳時記を繰りて灯火に親しめり
安達久美子
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黄ばむ葉の蔭にたわわの実むらさき
苅野 節子
わかみどり会
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病棟の窓よりの富士さやけしや
浅田 智子
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川風にちょうちん揺れて花火待つ
清水 悠子
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砂動き足裏くすぐる秋の浜
畑山 則子
ミモザ会
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秋しぐれ富士の真上に笠の雲
佐々木巴里
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海苔ひびの杭につまづく秋の潮
三国 紀子
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木犀や手ばなせし家避け通る
石橋万喜子
12月号
一般投句
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まらうどを持て成す今朝の金木犀
川喜田秀雄
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山茱萸の実いつ宝玉に化したるや
同
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彼岸花辻の地蔵を囲みをり
富所 敬子
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秋雨や運動会は三たび延び
同
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美しく歩かう街の秋日和
半澤 篤
向原喜楽会・不動会
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江の電の軒の間に間に秋の海
安藤 虎雄
-
ブータンの松茸土瓶蒸となる
小澤たん子
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雲のさまがらりと変はり今朝の秋
半澤ハツ子
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一喝の座禅の竹刀秋思断つ
森 譜稀子
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置き去りの砂場の玩具秋時雨
柴崎 英子
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その中に酢橘も一つ阿波みやげ
武井 康子
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灯火親し辞書に無き字にこだはりて
笹島美和子
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ゆれ揃ふ事なく揺るゝ秋桜
廣門登喜子
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落ちさうにころがりさうに露の玉
森崎 富貴
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息災にしみじみ秋と思ひけり
吉田 新子
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落蝉の残る力に飛び去りぬ
川部 義明
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鰯雲徹夜の肩の重かりし
佐々木 弘
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賽す音のみ秋冷の大伽藍
黒澤三主寿
竹の子会
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飼犬をいだき寄せたる夜寒かな
苅野 玲子
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打掛けの花の総柄秋日和
渡辺 幸江
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部屋奥に積まれし本にまで冬日
千葉百合子
-
落葉掃く昨日も今日も落葉掃く
安達久美子
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内海の空に鳶舞ふ冬日和
苅野 節子
わかみどり会
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秋彼岸一足飛びの寒さかな
浅田 智子
-
大花火色とりどりの星となる
清水 悠子
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掃除機に吸はれてゆきし山の蟻
畑山 則子
ミモザ会
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花の鉢置きかへて見る小春かな
佐々木巴里
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白雲に乗り給ふかや神の旅
三国 紀子
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色づいて重さ加へて富有柿
石橋万喜子