ひもんや俳壇

ひもんや俳壇 2009

1月号

一般投句

  • お手玉の手鞠模様や小正月
    山路みゆき
  • 冠雪や富士はやっぱり日本一
    浅田 貞行
  • 初富士や直ちにテレビも映しつつ
    川喜田秀雄
  • 湯の宿に集ふ姉妹や照る紅葉
    富所 敬子
  • 初詣神よ仏とはしごして
    木村 遊山

向原喜楽会・不動会

  • 雨戸あけ首すくめけり今朝の秋
    安藤 虎雄
  • 落葉舞ふ押し開きたる大手門
    東  孝
  • 冬めくや犬も主も小走りに
    南川 文子
  • 病窓に秀麗の空高くあり
    半澤ハツ子
  • 初時雨四条大橋蛇の目傘
    森 譜稀子
  • テレビから津軽三味線初時雨
    柴崎 英子
  • 叱りつつ子の手引きゆく日短
    笹島美和子
  • 渡月橋渡り返して紅葉濃し
    廣門登喜子
  • 散りてなほ桜紅葉の華やかに
    森崎 富貴
  • 予約せし旅に行けざる風邪の熱
    加々路伸子
  • 凩や放置自転車総倒れ
    吉田 新子
  • 凩や無停車駅の町眠る
    丹野 久子
  • 紅葉狩谷深く聞く水の音
    川部 義明
  • 凩や身を低くして生きんとす
    佐々木 弘
  • 路線バス落葉舞ひ立て来たりけり
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 日差しにも風にも秋を惜しみけり
    苅野 玲子
  • 亜麻色に染めてはみても木の葉髪
    渡辺 幸江
  • 吊り橋の真中に佇ちて秋惜しむ
    千葉百合子
  • 校庭の隅の稲刈り大はしゃぎ
    安達久美子
  • 稲刈りて幾何学模様田の面かな
    苅野 節子

わかみどり会

  • 毛糸編む玉少しづつ転がして
    浅田 智子
  • 日向ぼこいつもの場所に車椅子
    清水 悠子
  • 一人居の門を彩るななかまど
    畑山 則子

ミモザ会

  • 先達の顔のきびしき犬の橇
    佐々木巴里
  • 茶の花の蘂まろまろと笑まひゐる
    三国 紀子
  • たをやかに勝ち抜いてゆく歌留多とり
    石橋万喜子

2月号

一般投句

  • 風花の町に入りけり蔵灯
    山路みゆき 
  • 初夢や月の砂漠を丑の背で
    浅田 貞行  
  • 雪深々歳一番の東都富士
    川喜田秀雄
  • ペダル踏み缶コーヒーを頬にあて( 無季 )
    富所 敬子
  • 冠雪や誇らし顔に津軽富士
    木村 遊山
  • 街騒にかかわりもなく浮寝鳥
    半澤 篤
  • 年賀状思ひ出たぐる人となり
    池田 重子
  • 枯芒ほほなでゆきしうぐひ釣り
    栗原 敏雄

向原喜楽会・不動会

  • クリスマスケーキ抱へてパパ急ぐ
    安藤 虎雄
  • 浮寝鳥金波銀波に夢のせて
    東  孝  
  • 着ぶくれて気合入らず竹箒
    南川 文子
  • 水の面の輝くところ浮寝鳥
    半澤ハツ子
  • 水鳥の水尾にビル影崩れゆく
    森 譜稀子
  • ビロードの姉妹のドレスクリスマス
    柴崎 英子
  • 街は灯の塊となりクリスマス
    笹島美和子
  • キャンドルの灯る師走の予約席
    廣門登喜子
  • 目の動く顔一杯のマスクかな
    森崎 富貴
  • 冬空を引締めて行くヘリの音
    川部 義明
  • 門灯の早くも灯る冬の雨
    佐々木 弘
  • 天に星地に電燭のクリスマス
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 毛糸編む手のつい止まるドラマかな
    苅野 玲子
  • 毛糸編む恋のはじまりかも知れぬ
    渡辺 幸江
  • 初氷昨夜の月のしずくかも
    千葉百合子
  • 霜枯れし小さき盆栽いとほしや
    安達久美子
  • 霜枯れの畑に何やら転がれる
    苅野 節子

わかみどり会

  • あれこれとままならぬまま年の暮
    浅田 智子
  • 小流れに身をまかせたる散り紅葉
    清水 悠子
  • 冬日さす窓辺は猫の通り道
    畑山 則子

ミモザ会

  • 目玉焼黄身もり上がり寒の入り
    佐々木巴里
  • 雪吊の水に映りてゆるびあり
    三国 紀子
  • 立春や口笛吹いてペダル漕ぎ
    石橋万喜子

3月号

一般投句

  • 丑年だゆっくり行かうと賀状来る
    浅田 貞行
  • 病室の七草粥を分かち食ぶ
    川喜田秀雄
  • お雑煮や我が家は決まって具だくさん
    富所 敬子

向原喜楽会・不動会

  • 初夢や浄土の父と酌み交す
    安藤 虎雄
  • 初みくじ祈りながらに開きたる
    東  孝
  • 二日には子等と声かけ庭仕事
    南川 文子
  • 水仙や越の岬はいつも荒れ
    半澤ハツ子
  • 水仙や夕日傾く三方五湖
    森 譜稀子
  • 地球儀の海の碧さや水仙花
    柴崎 英子
  • まねごとの畑まねごとの鍬始
    笹島美和子
  • 早送りしてゐるやうな三ヶ日
    廣門登喜子
  • 熱燗の酒量気になる親ごころ
    森崎 富貴
  • 晴着の娘晴着の歩幅初詣
    加々路伸子
  • 鏡餅やっぱり日本がとても好き
    吉田 新子
  • 餅うまし競ひてぐいと伸ばしけり
    野口 永子
  • しんしんと境内冷ゆる初詣
    川部 義明
  • 風の日はガラス戸越しに日向ぼこ
    佐々木 弘
  • 遠富士を先づ染め上げし初明り
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 風花は舞ひてしずくとなる運命
    苅野 玲子
  • 初鏡男結びが決まらずに
    渡辺 幸江
  • 風花に光差し来る夏油の湯
    千葉百合子
  • 刈り込みし庭に一輪寒椿
    安達久美子
  • 空と海朱色に染めて初日の出
    苅野 節子

わかみどり会

  • お飾りの稲穂ついばむ初雀
    浅田 智子
  • 開発のクレーンの伸び冴返る
    清水 悠子
  • まっ先に春を並べて和菓子店
    畑山 則子

ミモザ会

  • 芽柳や蘇州の旅の舟の上
    佐々木巴里
  • 百蕾の耀き立てる辛夷かな
    三国 紀子
  • 一礼の影うつくしき春障子
    石橋万喜子

4月号

一般投句

  • 初空や雲存分に一の文字
    川喜田秀雄
  • 春浅き咲くを思案の沈丁花
    富所 敬子
  • 日を浴びて喜色満面福寿草
    半澤 篤
  • みちのくの桜待たれる頃となり
    木村 遊山

向原喜楽会・不動会

  • 庭隅の一坪畑草青む
    安藤 虎雄
  • 梅の香や髪かき上げしときにふと
    東  孝
  • 下萌に乳房重たく牛の伏す
    半澤ハツ子
  • 梅早し骨董市の招き猫
    森 譜稀子
  • 薄氷を白雲渡りゆきにけり
    柴崎 英子
  • 薄氷のひねもす溶けぬところかな
    笹島美和子
  • 囀りのいよゝ本気となってきし
    廣門登喜子
  • 鶯やむかし昔の婚約日
    森崎 富貴
  • 鶯や気のはればれと朝厨
    加々路伸子
  • 頼らるゝとも幸せ老いの春
    吉田 新子
  • 今年また鶯を待つ庭の日々
    川部 義明
  • 春めくや少女玻璃戸に髪直す
    佐々木 弘
  • 名園の摘んではならぬ蕗の薹
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 大地よりの使者かも知れずふきのたう
    苅野 玲子
  • 地震ありし地に見つけたる蕗の薹
    渡辺 幸江
  • 隣より声高々と「鬼は外」
    千葉百合子
  • バレンタイン八方美人となりにけり
    安達久美子
  • 春菊の束に小さき蕾あり
    苅野 節子

わかみどり会

  • 任地より子も戻りませ梅香る
    浅田 智子
  • 春塵や工事トラック行き来して
    清水 悠子
  • 春灯や明るき知らせ友の文
    畑山 則子

ミモザ会

  • 春眠の障子まぶしき目覚めかな
    佐々木巴里
  • 目白来て又来て散らす梅の花
    三国 紀子
  • 手籠より摘みし若菜の香りかな
    石橋万喜子

5月号

一般投句

  • 散りてなほ根本を飾る花椿
    浅田 貞行
  • 春立つや陽射しに赤きタピストリー
    川喜田秀雄
  • 遠霞富士の在処ぞ胸の内
  • タピスリを幔幕と思へば雛の間
  • 男の子しか持てぬ我が身に孫の雛
    富所 敬子
  • 天空を仰ぎ咲きをる白木蓮
  • 天網の綻び春の雪となる
    半澤 篤

向原喜楽会・不動会

  • 春となり孫それぞれの門出かな
    安藤 虎雄
  • 朝霞山一肌を脱ぎはじむ
    東  孝
  • 春愁や老眼鏡の指紋拭く
    半澤ハツ子
  • 剥落の阿吽の像に春の風
    森 譜稀子
  • 北に向かふ旅の終点雪の果
    柴崎 英子
  • 卒業す養護教師の拍手受け
    笹島美和子
  • すみれ濃し淡き光にかたまりて
    廣門登喜子
  • つぼすみれ斜面の風と小おどりす
    森崎 富貴
  • 庭隅の妻に見せたやすみれ草
    川部 義明
  • 遥拝す霞の中の奥の院
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 沈丁花風一陣の香りかな
    苅野 玲子
  • 佳きことを秘めて蛤さくら色
    渡辺 幸江
  • 公害のなき空めざしつばくらめ
    千葉百合子
  • 大切に手帳に栞るクローバー
    安達久美子
  • 蛤のつやの貫録旬の膳
    苅野 節子

わかみどり会

  • 朝日射す白き可憐な花ゆすら
    浅田 智子
  • 沈丁の香り何処から小糠雨
    清水 悠子
  • あたたかや夫と貼り合ふ湿布薬
    畑山 則子

ミモザ会

  • 一本にして庭中が花吹雪
    佐々木巴里
  • 春風にまだ尖りある水辺かな
    三国 紀子
  • 水中に風ある如く花藻ゆれ
    石橋万喜子

6月号

一般投句

  • 老いてなほ生きる気力の木の芽吹く
    浅田 貞行
  • 鵯雀折り合ふ雨の餌壺かな
    川喜田秀雄
  • 春あした寸刻見しや真白富士
  • お花見や人気スポットカメラ持ち
    富所 敬子
  • 母に手をひかれし記憶春夕焼
    半澤 篤

向原喜楽会・不動会

  • 花見より宴のほうが一番と
    安藤 虎雄
  • さくらさくらおしべめしべとみなみせて
    東  孝
  • 出して見せ舌は一枚四月馬鹿
    半澤ハツ子
  • 行春や知覧に兵の遺し文
    森 譜稀子
  • 行春や大事な鍵をなくしたる
    柴崎 英子
  • うららかや棚田の陰の労思ふ
    武井 康子
  • 初花にもう先着の来てゐたり
    笹島美和子
  • 春愁や独り暮しの重き日も
    廣門登喜子
  • 佳き話はずみて姉妹桜餠
    森崎 富貴
  • 雑事なく日々春眠をほしいまゝ
    加々路伸子
  • 葉を重ね塩加減よき桜もち
    吉田 新子
  • 車窓には過ぎゆく桜富士の山
    川部 義明
  • 池の面に触れんばかりの藤の花
    佐々木 弘
  • 一望の斜面つゝじの染めつくす
    野口 永子
  • 自転車を押し花人となってをり
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 土の香の爪にのこりし土筆摘み
    苅野 玲子
  • つんつんと背くらべしてつくしんぼ
    渡辺 幸江
  • 散歩道袋いっぱい土筆摘む
    千葉百合子
  • 見いつけたこれが合図の土筆摘み
    安達久美子
  • 群生地想ひて鉢の桜草
    苅野 節子

わかみどり会

  • なにもかも流れにのせて春の川
    浅田 智子
  • 花に酔ひ人にも酔ひて戻りけり
    清水 悠子
  • 引き潮の足裏くすぐる春の海
    畑山 則子

ミモザ会

  • 新緑や常念岳の白き峰
    佐々木巴里
  • 山吹の池の濁りに染まらぬ黄
    三国 紀子
  • たたずめば丈の身にそふ藤の房
    石橋万喜子

7月号

一般投句

  • 土下座してシャッターを切る著莪の花
    浅田 貞行
  • 春昼の雲が悪さよ富士崩す
    川喜田秀雄
  • 銀色の葉裏そよぎしオリーブの
    富所 敬子
  • コンサート終へて若葉の風に逢ふ
    半澤 篤

向原喜楽会・不動会

  • 母の日に照れつつ妻に花束を
    安藤 虎雄
  • 麦飯の見当たらずとも麦の秋
    東  孝 
  • 虹の足大東京を踏まへたる
    半澤ハツ子
  • 新緑やピザを囲みてカフェテラス
    森 譜稀子
  • 母の日や息子はパパに娘はママに
    柴崎 英子
  • 麦を刈る束の重さに恵みあり
    武井 康子
  • 戯れに夏炉を焚けば里心
    笹島美和子
  • 兄よりも妹はしゃぎ鯉幟
    廣門登喜子
  • 心まで軽くなりたる更衣
    森崎 富貴
  • 心地よく風をはらんで鯉幟
    加々路伸子
  • 菖蒲湯やそれぞれに子は自立して
    吉田 新子
  • 鯉幟広場の風を存分に
    川部 義明
  • 薔薇散りて静かな庭に戻りけり
    佐々木 弘
  • 胡瓜苗はや五つ六つ花つけて
    野口 永子
  • 新緑の山なみ低く日は高く
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 教えてよ迷ひ螢の帰り道
    苅野 玲子
  • 見あぐれば薄墨の雨梧桐に
    渡辺 幸江
  • バス待つも木蔭をえらぶ薄暑かな
    千葉百合子
  • 晴天の植田に映る浅間山
    安達久美子
  • そよ風にひらりと散りぬ芥子の花
    苅野 節子

わかみどり会

  • その中の山あぢさゐに魅せられて
    浅田 智子
  • 壁紙に雨染みのあり桜桃忌
    清水 悠子
  • 五月雨に傘ささずゆく高校生
    畑山 則子

ミモザ会

  • 屋上に狭庭もありて七変化
    佐々木巴里
  • 紫陽花の雨に浅黄を解く気配
    三国 紀子
  • 海霧晴れて海の際までせまるビル
    石橋万喜子

8月号

一般投句

  • 風鈴の音は風の音千の風
    浅田 貞行
  • 夏暁や月の行方に富士望む
    川喜田秀雄
  • 涼風へ垣を穿つや鳩入り来
  • 梅雨空にアガパンサスの花清き
    富所 敬子
  • 梅雨空や黄色きカンナ凛として
  • 紫陽花の次々と咲き蝶が舞ひ
    栗原 敏雄
  • 地下街も梅雨のさなかでありにけり
    半澤 篤

向原喜楽会・不動会

  • 紫陽花の雨を溜めたる重さかな
    安藤 虎雄
  • 島に残る円空秘仏梅雨晴るる
    東  孝
  • 甚平を着て病棟の主となる
    半澤ハツ子
  • 花菖蒲女船頭の竿さばき
    森 譜稀子
  • 回廊に人溢れをり花菖蒲
    柴崎 英子
  • せせらぎに螢とびかふ夕餉かな
    武井 康子
  • 何ひとつ置かぬもてなし夏座敷
    笹島美和子
  • 旅発ちにならんだお洒落夏帽子
    廣門登喜子
  • 散歩道夫婦揃ひの夏帽子
    森崎 富貴
  • 紫陽花の花より落ちる雨雫
    加々路伸子
  • 夏帽子からす除けともなりにけり
    川部 義明
  • 瞑想をくづせし蠅を追ひ払ふ
    佐々木 弘
  • 雨斜めまっすぐに花菖蒲かな
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 夾竹桃息苦しさを覚えけり
    苅野 玲子
  • 夾竹桃ふるさとつなぐ高速路
    渡辺 幸江
  • 高層のビルをまたいで虹二重
    千葉百合子
  • 雨粒に右往左往の蟻の列
    安達久美子
  • 夕焼を背にして富士のシルエット
    苅野 節子

わかみどり会

  • 父の忌や疎遠の人と夏座敷
    浅田 智子
  • 橋桁に水嵩の跡桜桃忌
    清水 悠子
  • 海峡の村夏霧の立ち籠めて
    畑山 則子

ミモザ会

  • 洗ひ髪あとは夜風のなすがまゝ
    佐々木巴里
  • 高々と武蔵野ぶりの夏木立
    三国 紀子
  • 打ち水の人に一礼して通る
    石橋万喜子

9月号

一般投句

  • 蝉しぐれ露座の大仏座禅中
    浅田 貞行
  • みんみんは何党の蝉総選挙
  • 虹立ちて天空縦に截りにけり
    川喜田秀雄
  • 虹消えてなほ夕映えの雲の色
  • 朱色ののうぜんかずら地にも映え
    富所 敬子
  • 夏に入る球児の声と応援歌
    半澤 篤

向原喜楽会・不動会

  • 茅葺の屋根守るとか百合の花
    安藤 虎雄
  • 夏痩せて並のサイズとなりしかな
    東  孝  
  • 遠雷やいつもどこかに戦あり
    半澤ハツ子
  • テファニーへ銀座夕立の雨宿り
    森 譜稀子
  • 老犬の夢を破りし大夕立
    柴崎 英子
  • 夕立に降りこめられてよりの縁
    武井 康子
  • 一つだけ残せし行李土用干
    笹島美和子
  • サングラス取りて公明正大に
    廣門登喜子
  • 浴衣着て大和撫子らしくなる
    森崎 富貴
  • サングラスかけて景色の変わりけり
    加々路伸子
  • サングラスちょっと気取った歩きぶり
    野口 永子
  • 迎火や追憶の日々甦り
    川部 義明
  • 雲の峰坂を下れば目の前に
    佐々木 弘
  • 夕立のなかりしごとく街混める
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 打水の一瞬縮めアスファルト
    苅野 玲子
  • 打水や格子戸くぐる風の道
    渡辺 幸江
  • 西瓜割り老人ホームに笑ひ声
    千葉百合子
  • 野牡丹の葉の縦縞も粋なこと
    安達久美子
  • 夏空をスペースシャトル帰り着く
    苅野 節子

わかみどり会

  • ふるさとの尽きぬ思い出夏の夜
    浅田 智子
  • 「おかえり」の母の一声帰省子に
    清水 悠子
  • 点々と牧草ロールの布置涼し
    畑山 則子

ミモザ会

  • おみやげのハワイドレスで日盛へ
    佐々木巴里
  • 風鈴に風の愛想のなき日なり
    三国 紀子
  • 写生画に父の加筆や夏休み
    石橋万喜子

10月号

一般投句

  • 百日紅虫遊ばせてなほ静か
    川喜田秀雄
  • 五階より高き松の木月並ぶ
    富所 敬子
  • 子持鮎群れなし上る五十鈴川
    栗原 敏雄
  • つり革の一律にゆれ夏の月
    半澤 篤

向原喜楽会・不動会

  • 明日は知らず今日を限りと蝉の声
    安藤 虎雄
  • 脱ぎ様の器用不器用蝉の殻
    東  孝
  • 古民家へつづく飛び石秋暑し
    半澤ハツ子
  • 我が苦楽知りたる道や蝉しぐれ
    森 譜稀子
  • 嬰児の寝返り出来し今朝の秋
    柴崎 英子
  • 自づから憂きこと忘れ竹の春
    武井 康子
  • 古民家の昼を灯せし涼しさよ
    笹島美和子
  • あの日より耳に棲みつく蝉の声
    廣門登喜子
  • 竹林に一歩踏み入れ蝉しぐれ
    森崎 富貴
  • 蝉の声ひきとめられて一句出来
    加々路伸子
  • 逝きし君何処に在す天の川
    野口 永子
  • 竹林に提灯揺れて盆踊り
    吉田 新子
  • 雨上がりひぐらし一つ鳴き出でし
    川部 義明
  • 目の先を嘲るやうに黒揚羽
    佐々木 弘
  • 心頭を滅却すれどこの残暑
    山形 定房
  • 百幹を駆け抜くる蝶竹の春
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 山萩に埋もるゝごとく住家あり
    苅野 玲子
  • 白萩に風が頬ずりしてゆきぬ
    渡辺 幸江
  • せり出たる枝をくゝれば萩こぼれ
    千葉百合子
  • 虫の声野外ライブの果てしとき
    安達久美子
  • ひぐらしの鳴いて季節の移りゆく
    苅野 節子

わかみどり会

  • 車窓には山々青田に鷺三羽
    浅田 智子
  • 黒南風や三角波の立つ川面
    清水 悠子
  • 青岬水平線に船の消え
    畑山 則子

ミモザ会

  • スケッチもかなはず見とれ花野ゆく
    佐々木巴里
  • 草の花かひがひしきはしじみ蝶
    三国 紀子
  • 新涼といふ書き出しの美しき
    石橋万喜子

11月号

一般投句

  • 朝しらふ昼ほろ酔ひの酔芙蓉
    浅田 貞行
  • 鰯雲綿雲今朝の大振舞ひ
    川喜田秀雄
  • 二才児のジャンプで届く石榴かな
    富所 敬子

向原喜楽会・不動会

  • 女郎花野原一面黄金色
    安藤 虎雄
  • 全身をサンマまつりの煙の中
    東  孝
  • のぼりつゝ崩るゝ雲の九月かな
    半澤ハツ子
  • 兄真似て回す指先赤とんぼ
    森 譜稀子
  • 牛乳を人肌にして今朝の秋
    柴崎 英子
  • 山荘のはや灯ともりて霧ふかし
    武井 康子
  • 二つ三つ早酩酊の芙蓉かな
    笹島美和子
  • お互ひの健康を祝ぎ敬老日
    廣門登喜子
  • 水引草紅の目立てる角度あり
    森崎 富貴
  • その中に紅一点の神輿ゆく
    吉田 新子
  • 蜩のちょっと網戸に鳴いて去る
    川部 義明
  • 唐黍や喰ひつく歯の衰へて
    佐々木 弘
  • 太平洋独り占めして根釣人
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 落花生その生り様は知らねども
    苅野 玲子
  • 新米や新政権の誕生す
    渡辺 幸江
  • 夫が選るくびれ美人の落花生
    千葉百合子
  • 案山子立つ田んぼのベストポジションに
    安達久美子
  • 朱の炎樹間に飾り実山梔子
    苅野 節子

わかみどり会

  • 秋めきし風色の中朝散歩
    浅田 智子
  • 夕暮の風に戯れ花芒
    清水 悠子
  • 騎手となりはしゃぐ夜店の肩車
    畑山 則子

ミモザ会

  • 疎開地の味なつかしき市田柿
    佐々木巴里
  • たよりなき色を寄せ合ひ藤袴
    三国 紀子
  • 椅子あれば座したき齢黄落期
    石橋万喜子

12月号

一般投句

  • 本州を台風一過富士も見ゆ
    川喜田秀雄
  • 花咲きてこの生垣も金木犀
    富所 敬子
  • 地下街を出て驚きぬ日短
    半澤 篤
  • 芦ノ湖の秋引き寄せて竿を振り
    栗原 敏雄

向原喜楽会・不動会

  • 友禅の着物さながら紅葉山
    安藤 虎雄
  • 小鳥鳴くエプロン結びつゝ庭へ
    東  孝
  • ひきたての朝のコーヒー小鳥来る
    半澤ハツ子
  • 鳥渡るディズニーランドてふ国へ
    森 譜稀子
  • 身構へて小鳥そこまで来てをりぬ
    柴崎 英子
  • すゝき原銀の波間におぼれたり
    武井 康子
  • 供花のなき外人墓地に小鳥来る
    笹島美和子
  • 月照らす京に金閣銀閣寺
    廣門登喜子
  • ぷつぷつとどんぐりを踏む朝の径
    森崎 富貴
  • ほの暗き菓舗に一鉢菊明り
    吉田 新子
  • 一輪の菊に備前の壺適ふ
    野口 永子
  • 秋草の知るも知らぬも好ましく
    川部 義明
  • 寄り道をしよかしまひか秋の雨
    佐々木 弘
  • 一群の小鳥一樹に納まりぬ
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 生けるものしばし休めと黄落す
    苅野 玲子
  • 色変えぬ松美しく毛越寺
    渡辺 幸江
  • 色変へぬ松我が同人我が母校
    千葉百合子
  • 黄落を踏みしめ孫の文化祭
    安達久美子
  • 木枯や夜更けの辻の街路灯
    苅野 節子

わかみどり会

  • 手術後の今日の献立秋づくし
    浅田 智子
  • 旧館の外壁覆ふ蔦紅葉
    清水 悠子
  • 子の齢またも尋ねる夜長かな
    畑山 則子

ミモザ会

  • 賛美歌のひときわ高くクリスマス
    佐々木巴里
  • 奉納の菊ともなれば身じろがず
    三国 紀子
  • みごもりの眉うすうすと毛糸編む
    石橋万喜子