ひもんや俳壇

ひもんや俳壇 2008

1月号

一般投句

  • 初空や隣近所に猫のゐず
    山路みゆき

向原喜楽会・不動会

  • お下がりととても思へぬ七五三
    安藤 虎雄
  • 賑やかに芸者衆来し酉の市
    長橋 昭孝
  • 山茶花の輝きながら風に舞ふ
    高尻由紀江
  • 御利益もそこそこありそ小熊手
    東 孝
  • 瓢湖暮れ白鳥五千羽石となる
    南川 文子
  • 胃カメラの検査上乗栗の飯
    半澤ハツ子
  • コーヒーの湯気際立ちて冬来る
    宮原まい子
  • 謂れ知らず灯に魅かれたる酉の市
    笹島 雅彦
  • 風一ト日立冬の空拡げたる
    廣門登貴子
  • 切干の歯ごたへのよし三杯酢
    加々路伸子
  • 飴色の大根に先ず箸伸ばす
    森崎 富貴
  • 疎開せし越後の炉火を恋ふてをり
    丹野 久子
  • 短日や今聞きしことはや忘れ
    吉田 新子
  • 晩学の歳時記を繰り冬籠
    花岡 天明
  • 今朝の冬いつものやうに走りけり
    川部義明
  • 起重機の天に動かず冬に入る
    佐々木 弘
  • 二の酉の灯に誘はれて途中下車
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 賑はひを夢見て山の眠りけり
    苅野 玲子
  • 新しき下駄揃へ置き除夜の鐘
    渡辺 幸江
  • 生垣に赤の一輪返り花
    千葉百合子
  • 山眠る風音を聞き山眠る
    安達久美子
  • 侘助の白輝きて師の点前
    苅野 節子

わかみどり会

  • 御祓いを済ませし安堵除夜の鐘
    浅田 智子
  • 古米撒くちゅんちゅんちゅんと初雀
    清水 悠子
  • 地に降りて日向を散らす寒雀
    畑山 則子

2月号

一般投句

  • 掃き捨てて凍蝶のあるさみしさよ
    山路みゆき
  • 木枯しの雲を落とせばオリオン座
    池田 重子

向原喜楽会・不動会

  • 落ち葉して空広々となりし森
    安藤 虎雄
  • 初舞台たぬき囃子のちゃんちゃんこ
    東 孝
  • 枯木立見上ぐる空の広きこと
    南川 文子
  • 悴める児の手やさしく揉みほぐす
    半澤ハツ子
  • 音信のなきにはあらず返り花
    笹島美和子
  • かうしてはをられぬ筈の年用意
    廣門登喜子
  • 考へて考へ抜いて年用意
    森崎 富貴
  • 小人数のおせちの料理少なめに
    加々路伸子
  • カレンダー一枚残す寒さかな
    花岡 天明
  • 烈風の吹き起こしたる寒さかな
    川辺 義明
  • 青竹の懸樋に替ふも年用意
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 寒牡丹そこに火種のあるごとく
    苅野 玲子
  • 見上ぐれば雲流れゆく冬木立
    渡辺 幸江
  • 見事なる円錐形の冬木立
    千葉 百合子
  • 過去となる雪の足跡つづきけり
    安達 久美子
  • 空も屋並も灰色に雪催ひ
    苅野 節子

わかみどり会

  • 夫の試歩一歩一歩に春近し
    浅田 智子
  • 黒豆の色のつややか年用意
    清水 悠子
  • 寒たまご紅白詰めて産婦訪ふ
    畑山 則子

ミモザ会

  • 男手のあてにはならず雪を掻く
    佐々木巴里
  • 松過の寺に戻りし作務の日々
    三国 紀子
  • 末っ子の名はひらがなでお年玉
    石橋万喜子

3月号

一般投句

  • 飲めずしてぐい呑集め桃の花
    山路みゆき

向原喜楽会・不動会

  • 初春の箱根駅伝見る人出
    安藤 虎雄
  • 初富士の五重連峰従へて
    東 孝
  • 残り柚子もいで浮かべて長湯かな
    南川 文子
  • 杜深く問答鳴きの初鴉
    半澤ハツ子
  • 書初の文房四宝神の水
    笹島美和子
  • 風邪に臥す背中合はせの彼と我
    宮原まい子
  • 喪心に賀状の返事ペン重く
    笹島 雅彦
  • 福笹の鈴の歩調も家路かな
    廣門登喜子
  • しんしんと迫る寒さに頬まっか
    森崎 富貴
  • つくづくと眺む八十路の初鏡
    加々路伸子
  • 介護日記新た二人の年迎ふ
    吉田 新子
  • 初夢のとぎれしことを惜しみけり
    花岡 天明
  • ちらちらと緋鯉の透ける初氷
    川辺 義明
  • 酔さまし姿勢正して初日記
    佐々木 弘
  • 七福を求め求めて詣でけり
    山形 定房
  • 歳時記を披くゆとりも三日かな
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 夕茜雲間に現れて雪の富士
    苅野 玲子
  • 水仙はつんとすまして風の中
    渡辺 幸江
  • 湾に落つ赤く大きく春夕日
    千葉 百合子
  • 獅子岩の遠吠え響く春の海
    安達 久美子
  • 海鳥の生簀に留る春の凪
    苅野 節子

わかみどり会

  • 豆を撒き足の痛みも追ひ出さむ
    浅田 智子
  • 猫柳供へて猫の忌日かな
    清水 悠子
  • 病む友に見せたや庭の福寿草
    畑山 則子

ミモザ会

  • 庭石のくぼみの水も春の水
    佐々木巴里
  • 膨らみて尖りて急や雪解川
    三国 紀子
  • 春待つや胸張り出して風見鶏
    石橋万喜子

4月号

一般投句

  • ものの芽や頬白藁をくはへ飛ぶ
    山路みゆき
  • 蒙古軍黄砂となりて又襲来
    浅田 貞行

向原喜楽会・不動会

  • 風に乗る匂ひほのかに梅の里
    安藤 虎雄
  • 富士も見え紅梅も見え誕生日
    東 孝
  • 草ぐいと押し上げて霜柱かな
    南川 文子
  • 今風の戸に柊を挿しまどふ
    半澤ハツ子
  • 梅の香の北鎌倉に降り立ちし
    笹島美和子
  • 十歳となりてはにかむ鬼やらひ
    宮原まい子
  • 学会を抜け飛び梅に手を合はす
    笹島 雅彦
  • 観梅や明るき言葉交し合ふ
    廣門登喜子
  • 浮かれ猫右往左往の路地の闇
    森崎 富貴
  • 行列の木遣り先立て追儺式
    加々路伸子
  • 日をはじき枝揺らしつゝ梅開く
    吉田 新子
  • 節分は雪一色の日となりぬ
    川辺 義明
  • 春めくや旅のプランを練り直す
    佐々木 弘
  • なんとなく小声となりて豆を撒く
    野口 永子
  • 梅の香の中に藩校ありにけり
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 自らの光を放つ猫柳
    苅野 玲子
  • 白魚に点のごとくの眼あり
    渡辺 幸江
  • 白魚の光もめでて祝い膳
    千葉 百合子
  • 野遊びのごちそう空と雲と風
    安達 久美子
  • 野遊びに使ひなじみし漆重
    苅野 節子

わかみどり会

  • 和服着る幸せ今日は針供養
    浅田 智子
  • 目を見張るほど溢れ咲く鉢菫
    清水 悠子
  • 我が影に散ばる雀雪の晴
    畑山 則子

ミモザ会

  • 春眠の障子まぶしき目覚めかな
    佐々木巴里
  • 捨て畑を覆ふ勢ひの蕗の薹
    三国 紀子
  • ねんごろにほぐす土くれ百千鳥
    石橋万喜子

5月号

一般投句

  • 郭公や山を越えれば尾瀬ヶ原
    山路みゆき
  • 葉隠れの武士道今も桜散る
    浅田 貞行

向原喜楽会・不動会

  • 春泥に足をとられしハイヒール
    安藤 虎雄
  • ニュートンの引力まさに落椿
    東 孝
  • 春泥に歩き上手な母想ふ
    南川 文子
  • 落椿日の当りゐてあたらしき
    半澤ハツ子
  • 春泥に筵を敷きてご縁日
    笹島美和子
  • 陽炎の中を都電の走りゆく
    廣門登喜子
  • 陽炎を追いつ追はれつ田舎道
    森崎 富貴
  • 木洩れ日も陽炎も揺れ森深し
    加々路伸子
  • 陽炎やゆるゆる降りるいろは坂
    吉田 新子
  • 草野球陽炎立てるネット裏
    川部 義明
  • 知らぬ間に上がってをりし春の雨
    佐々木 弘
  • 掃くべきか掃かざるべきか落椿
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 浮かれるも今日一日よ四月馬鹿
    苅野 玲子
  • 子規も越え芭蕉も越えたと四月馬鹿
    渡辺 幸江
  • 今年こそだましてやらむ四月馬鹿
    千葉 百合子
  • 担ごうとして担がるる四月馬鹿
    安達 久美子
  • もしかしてエープリルフールかと夫を見る
    苅野 節子

わかみどり会

  • 梅園を手を取り老いのペアルック
    浅田 智子
  • 水温む橋のたもとに車椅子
    清水 悠子
  • 対岸に灯のひと並びおぼろ月
    畑山 則子

ミモザ会

  • たひのたひまで桜いろ桜鯛
    佐々木巴里
  • 見はるかす照りも曇りもせず朧
    三国 紀子
  • 糸桜より簾ごし如意輪堂
    石橋万喜子

7月号

一般投句

  • 古伊万里の絵皿買ひけり今年竹
    山路みゆき
  • 夕明りぽっかり浮ぶ白牡丹
    浅田 貞行

向原喜楽会・不動会

  • 今年また万朶の花の目黒川
    安藤 虎雄
  • 山桜ほらほらあんな所にも
    東 孝
  • 遠き日のだましだまされ四月馬鹿
    南川 文子
  • 談笑にうぐゐす餅の粉散らす
    半澤ハツ子
  • たれかれの転勤話万愚節
    笹島美和子
  • 花吹雪一っ刻風の色となる
    廣門登喜子
  • 花屑を負うてバス来る停留所
    森崎 富貴
  • お社は花に埋まり在します
    加々路伸子
  • 山襞にちらほらと見え遅桜
    吉田 新子
  • ちらちらと夜桜越しの舟明り
    川部 義明
  • 町内の寺々めぐりたる花見
    佐々木 弘
  • 縄飛びもボール遊びも花の下
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 鳥たちも花の宴のさなかなり
    苅野 玲子
  • 桜愛で彩り愛でて京懐石
    渡辺 幸江
  • 今年又花のトンネルくぐりけり
    千葉 百合子
  • 吹かれても降られてもなほ散らぬ花
    安達 久美子
  • 散る花を飽かず眺める窓辺かな
    苅野 節子

わかみどり会

  • 子も孫も巣立ちし春の愁ひかな
    浅田 智子
  • 屋上に庭園のあり囀れり
    清水 悠子
  • 子の知恵のあふるる瞳下萌ゆる
    畑山 則子

ミモザ会

  • 庭手入れ済み薫風を通しけり
    佐々木巴里
  • 小振なる鯉幟には適ふ風
    三国 紀子
  • 緑蔭に少女の脱ぎし乗馬靴
    石橋万喜子

8月号

一般投句

  • 西伊豆の富士に会ひたる卯波かな
    山路みゆき
  • 大木の力みなぎる新樹道
    浅田 貞行
  • 夏萩の肩に零るる辻地蔵
    早坂 洋子

向原喜楽会・不動会

  • あ落ちてる豆粒ほどの桜の実
    安藤 虎雄
  • 更衣自然は脱皮するものを
    東  孝
  • 葉桜や静かな日々の戻りたり
    南川 文子
  • 余生にも折目をつけて更衣
    半澤ハツ子
  • 蕗の葉のこの大きさも蝦夷地なる
    笹島美和子
  • 追憶のひとつひとつの更衣
    廣門登喜子
  • こぼれつつなほ咲き残る柿の花
    森崎 富貴
  • 十薬の白さの目立つ草の中
    加々路伸子
  • 品定めして買はざりし夏帽子
    吉田 新子
  • そそり立つ崖の窪みに蕗の薹
    川部 義明
  • ポケットに去年の一円更衣
    佐々木 弘
  • 参道のあぢさゐ藍を極めたる
    丹野 久子
  • 雷鳴に梅雨あがるかとかこち顔
    山形 定房
  • 隠り沼へ道狭めたる歯朶若葉
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 山あひにニセアカシアの占領す
    苅野 玲子
  • 父の日や父の思ひを今さらに
    渡辺 幸江
  • 早起きは三文の得明易し
    千葉 百合子
  • アルバムにモボを気取ってパナマ帽
    安達 久美子
  • 短夜や窓打つ風に又目覚め
    苅野 節子

わかみどり会

  • 父在りし日の夢多し明易し
    浅田 智子
  • 紫陽花も構図に入れてキャンバスに
    清水 悠子
  • 茶筒抜く音ポンとさせ新茶汲む
    畑山 則子

ミモザ会

  • あぢさゐや母の遺愛の蛇の目傘
    佐々木巴里
  • 紫陽花に塞がれてゐる裏の木戸
    三国 紀子
  • 反古ひとつなき屑籠や青簾
    石橋万喜子

9月号

一般投句

  • 空港を望むホテルや夏料理
    山路みゆき
  • 雲の峰あの麓にはふるさとが
    浅田 貞行

向原喜楽会・不動会

  • もてなしは涼風抜ける座敷かな
    安藤 虎雄
  • 蓮咲けりこの世四日の命なる
    東 孝
  • あらし来て花に別れの日となりぬ
    南川 文子
  • 乱れたる影より生れし黒揚羽
    半澤ハツ子
  • 法の池狭しとばかり古代蓮
    笹島美和子
  • 七夕や癖ある文字の願ひごと
    廣門登喜子
  • 持ち歩く孫の見立の扇かな
    森崎 富貴
  • 七夕やてるてる坊主吊しあり
    加々路伸子
  • 七夕の引越しといふ別れあり
    吉田 新子
  • 七夕や妻への想ひ短冊に
    川部 義明
  • 向日葵や日輪いまだ高からず
    佐々木 弘
  • 刻まれし戒名なでて墓洗ふ
    丹野 久子
  • 気に入りし香水夫の気に入らず
    黒澤三主寿

竹の子会

  • かき氷はしゃぐ子供の赤い舌
    苅野 玲子
  • 月下美人まことその名のやうな人
    渡辺 幸江
  • 濡れ縁に下駄を揃へて釣忍
    千葉 百合
  • その香りどこに秘めしか月下美人
    安達 久美
  • はるか来し駅出迎への月見草
    苅野 節子

わかみどり会

  • 山若葉異国の人と道連れに
    浅田 智子
  • 亡き母の半襟のごとカラー咲く
    清水 悠子
  • 祖母をまね蕗の葉で飲む沢の水
    畑山 則子

ミモザ会

  • 水に足つけて釣り見る鮎の川
    佐々木巴里
  • 睡蓮のかくも真白き濁り池
    三国 紀子
  • ブローチの真珠の曇る瀧の前
    石橋万喜子

10月号

一般投句

  • 祖父の家の井戸まだ涸れず終戦日
    山路みゆき
  • 草の花紅く咲く花白き花
    浅田 貞行
  • ウクレレにビーチの踊り星月夜
    山本 三郎
  • 裏窓に西日の射せる舟溜
    早坂 洋子

向原喜楽会・不動会

  • 温暖化和らぐやうに水を打つ
    安藤 虎雄
  • この頃は小さき向日葵好まるる
    東  孝
  • 朝顔や蕾あまさず咲きにけり
    半澤ハツ子
  • 待ち人の七夕竹をくぐり来し
    笹島美和子
  • ねんごろな父の打水開院す
    笹島 雅彦
  • 夕凪や沖に裾曳く利尻富士
    廣門登喜子
  • 間を置いて音の届きし遠花火
    森崎 富貴
  • 満願の笑顔に似たり日輪草
    加々路伸子
  • ベランダに風船かづら仲間入り
    吉田 新子
  • 雨止みてまた湧き起る蝉時雨
    川部 義明
  • 蚊にさされながら夕刊庭で読む
    佐々木 弘
  • 他人事と思ひし寿齢木の葉髪
    丹野 久子
  • 門前のそばや競ひて水を打つ
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 喧騒の間遠となりて夏の果
    苅野 玲子
  • 被災地に残されし犬星月夜
    渡辺 幸江
  • 老木と思へぬ木肌百日紅
    千葉百合子
  • ガラス鉢薬味も変へて冷奴
    安達久美子
  • 姥子の湯目指す抜け道草いきれ
    苅野 節子

わかみどり会

  • 風鈴や夢のメロデー紡ぐごと
    浅田 智子
  • 夏雲にヘリコプターの見え隠れ
    清水 悠子
  • 向日葵や猫だけの知る風の道
    畑山 則子

ミモザ会

  • 遠花火下町育ちは落ち着かず
    佐々木巴里
  • 葛の花ちらりと見せて風過ぎる
    三国 紀子
  • 灯を置きてひとの影透く秋すだれ
    石橋万喜子

11月号

一般投句

  • 美少女の弓持つ桜紅葉かな
    山路みゆき 
  • 大空は大洋のごと鰯雲
    浅田 貞行 
  • 雲か雪か朝の光か富士渾沌
    川喜田秀雄

向原喜楽会・不動会

  • 高原の果ての果てまで花野かな
    安藤 虎雄
  • 大花野一歩ふわりと無重力
    東  孝  
  • 秋深むオリンピックの果てしより
    南川 文子
  • 秋刀魚焼く海の青さを裏返し
    半澤ハツ子 
  • 対岸の大煙突や霧晴るる
    笹島美和子
  • 秋雨や茶房の隅に聴くタンゴ
    廣門登喜子
  • 白き雲一つ残して八月尽
    森崎 富貴
  • 紅萩を手折りて母へ供へけり
    加々路伸子 
  • 駅弁の松茸飯や旅二人
    吉田 新子
  • 散歩道グランドに沿ひ萩に沿ひ
    川部 義明
  • 命惜し命惜しとて法師蝉
    佐々木 弘
  • 庭木戸を押せば応へて萩ゆるる
    野口 永子 
  • 秋簾窓の閉まってをりにけり
    黒澤三主寿

竹の子会

  • 曼珠沙華まこと不思議な花と見ゆ
    苅野 玲子
  • 社宅跡ここに埋めて猫じゃらし
    渡辺 幸江
  • 語ること何かありげに曼珠沙華
    千葉百合子
  • 売り地にはわがもの顔のえのころ草
    安達久美子
  • 猫じゃらし友と遊びし日も遠く
    苅野 節子

わかみどり会

  • 一泊でまた任地へと星月夜
    浅田 智子
  • 盆踊り振りは知らねど輪の中へ
    清水 悠子
  • 病人の食の進みし心太
    畑山 則子

ミモザ会

  • 秋の雲うつして尾瀬の水鏡
    佐々木巴里
  • 梳るごとく芒に風通ふ
    三国 紀子
  • 天上のさびしからんと柿残す
    石橋万喜子

12月号

一般投句

  • 立冬や坐して畳の香りけり
    山路みゆき
  • 落葉松の梢さわがす時雨かな
    浅田 貞行
  • かわたれの風に音なく紅葉散る
    早坂 洋子

向原喜楽会・不動会

  • 新蕎麦を更科藪と食べ歩く
    安藤 虎雄
  • 店先のバケツに稲の秋ありし
    東  孝 
  • そぞろ寒苦手な採血七回目
    南川 文子
  • 胃カメラの結果上乗栗の飯
    半澤ハツ子
  • 那須岳に頭垂れたる稲穂かな
    森 譜稀子
  • 膝掛けを夫に手渡す夜寒かな
    柴崎 英子
  • 長電話切りたる後の夜寒かな
    笹島美和子
  • 新米や一汁一菜あればよし
    廣門登喜子
  • 樹下染めし金木犀のこぼれ花
    森崎 富貴
  • 新米の売出しの旗空青し
    加々路伸子
  • パーティのワルツの外は秋時雨
    川部 義明
  • 鰯雲株価の底値また動く
    佐々木 弘
  • みちのくの二色なりし菊膾
    黒澤三主寿

竹の子会

  • そこだけがひとり我世の竹の春
    苅野 玲子
  • 降り立てば霧が迎へてパリの朝
    渡辺 幸江
  • フェンスのみ残して売地烏瓜
    千葉百合子
  • 朝霧をまとひし街を後にして
    安達久美子
  • 烏瓜かそけき白の花つけて
    苅野 節子

わかみどり会

  • 子の家の新築なりし秋高し
    浅田 智子
  • 花少し残り糸瓜のぶら下がる
    清水 悠子
  • いとけなく老いゆく母や秋深む
    畑山 則子

ミモザ会

  • お点前や竹籠に活け返り花
    佐々木巴里
  • 木犀の大樹噴き出す黄金色
    三国 紀子
  • 黄落やテーブルマットに巴里の地図
    石橋万喜子